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第四章
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しおりを挟む「ちょっ、……ちょっとタンマ!」
ソファに押し倒されて首筋を舐められる。背筋がぞっとした。
遠慮なく追いかぶさってくる吉岡の肩を押しやるが俺よりも逞しいそれはぴくりとも動かねぇ。にくったらしい。邪魔だとばかりに両手を纏められ、頭上へと固定された。がらがらになった上半身は触り放題。
シャツの裾から手を入れ、わき腹を撫でられてくすぐったさに身を捩ろうとするが満足に動けなくてもどかしさが増す。そしてその手はするすると上まで這ってきて、吉岡の指の腹が尖りに触れた。
「あっ。おい! ばか! どこ触ってんだ!」
「佐野さん」
「……あっ、ちょ、あ、……やめろって!」
「ここ感じるんですね」
「あっ、ん、……ふっ……あっ」
「かわいい」
「んぅっ……んんっ」
ぬるりとしたものが唇から進入して俺の舌の付け根を擽る。舌を絡めてその先端を吸われれば熱っぽい息が漏れた。なんだこの声はと思うが不可抗力だ。
コリコリと胸の尖りを弄られ、しつこいキスをしてくるから息も絶え絶えだ。
甘い疼きが俺を犯していく中、今まで優しく愛撫されていた乳首をぎゅっと爪を立てて摘まれた。痛みに声を出すがそれもあっけなく吉岡に吸収されて終わり。
ゆっくりと吉岡の顔が離れていく。お互いの唇はいやらしく濡れている。
キスして溜まった2人の唾液も躊躇なく飲み込んでしまったが、それが嫌じゃなくて妙な驚きがある。雰囲気に流されているからだと思いたかった。
さっきまでのほほんと甘いケーキを食べて癒されていたというのに、なんでこんなことになってしまったのか。
能登さんが部屋から去り、吉岡の部屋に昼食をよばれに行った俺は食後のデザートを行儀悪くソファの上で胡坐をかきながら食べていた。俺とは違い気の利く吉岡は紅茶を入れてくれた。さっきの昼食は和食で、そのときはほうじ茶がでてきた。
「食欲が満たされるって大事ですね」
「分かるわー。とりあえず、簡単にストレス発散できるし」
「三大欲求のひとつですからね」
「まぁでも一番は睡眠かな」
「そうなんですか。俺は食欲ですね。睡眠は一番最後です、今のところ」
「えー寝ないと体もたないじゃん。やっぱり健康は寝てこそ作られると思うわ」
「そうだろうとは思いますが」
熱々の紅茶を一口含む。体の内側からぽかぽかする感じ。今日のシフォンケーキはトマト風味とのことだが、生地に少し色味が掛かっているくらいで味の違いなんてものは俺にはよく分からなかった。とりあえずおいしいからよしとしておく。
「俺は腹が満たされると、次は性欲なんですよ、クルの」
「ふーん」
淹れたての紅茶がおいしくて無心で飲んでいたから吉岡の話はすでにどうでもよくて。
ケーキをもう一口食べようとカップをテーブルに置いたときだった。待っていましたとばかりに吉岡にソファに倒されてしまったのだ。
「わ、おいっまだ食べてるんだけど」
「食べ終わっていたらいいんですか?」
「いやよくねーよ。お前はいつもなんなんだよ」
「食欲の次を満たされようかと」
「あ~? 何言ってんだオメーは」
こうやって本気か冗談か、吉岡は俺で遊ぶ。
きつく抱きしめられて耳の後ろの匂いを嗅がれた。くすぐったさに肩を竦めるがそこで首筋を舐められてしまい、始めの話に戻るのだ。
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