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25番は存在しない 〜竹一族の記憶(一)〜
十三
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そういうことか。
そんなつぶやきを口にしそうになり、かろうじて飲み込んだ。俺はありがとうございます、と言いながら頭を下げ、一連の事件を解決すると告げる。出された緑茶の残りを啜って辞すると、すぐさま瀬川家から見えない位置へ移動し、白璧の前に立った。
「縁が来るから、縁来神社。でも廃社になって以降、良縁が来ることはなかった。だからこそーー」
縁がやって来るのは、人じゃない。神社だ。そして、その縁は、人がやって来ることを指す。行方不明の生徒は、神社と縁ができてしまった。問題は、その理由なんだ。
俺は桐箱を開け、笛を持った。危険だとはわかっていたが、ここまで来た以上、試してみる価値はある。
いつも通りに構えた後、努めて柔らかな息を吹き入れた。
啜り泣く声が聞こえる。1人じゃない。複数だ。3・・・・いや、4人だろうか。
どうして、何で、どうしたら・・・・後悔の言葉ばかりだ。恐らくこれが、詐欺に遭って廃社にせざるを得ないという時の記憶なんだろう。でも、家族揃って明瞭な声が聴こえるってことは、全員すでに命を落としているということ。穏やかじゃないな。
「父さん、私たち・・・・これからどうなるの」
境内で死んだっていう娘か。彼女の声が、誰よりも明瞭だ。ってことは、やっぱりーー
オマエハダレダ?
え? 何だ、今の声。気のせいか? そもそも、一体どこから?
いや待て。おかしい。声が減っている。家族の啜り泣く声も、後悔の言葉も聞こえない。じゃあ今の声は、まさか。
ダレダトキイテイル。コタエロ。ソシテ、ワタシヲミロ。
やばい。やばい。これは、やばい。だって、記憶を介さずに声が聴こえるなんてこと、今までなかった。一体、どれほどの怨念があるんだ。
それに、答えることも視ることもしちゃならない。俺は兄さんたちとは違う。俺は、人が妖怪や怪異、幽霊と呼ぶものを、視ることができない。声を聴くことができるだけだ。それに逆らって視てしまえば、何が起こるかわからない。
だが、俺の不安を煽るように不気味な声は響いた。
コタエロコタエロコタエロコタエロコタエロコタエロコタエロコタエロコタエロコタエロ・・・・ミロミロミロミロミロミロミロミロミロミロ・・・・
聴くのをやめなきゃダメだ。これ以上聴いたらダメだ。笛を放さないと。普通の世界に戻らないと。早くしないと、手遅れになる。
俺は引き剥がすように笛から口を放した。全身の汗を感じながら、接着剤でも付いているかと思うほど強く瞑っていた両目を開ける。
ミィツケタァ。
青白い顔。充血して見開かれた両目。瞳と鼻口から流れ落ちる夥しい鮮血。釣り上げられた唇から覗く雪よりも白い歯。ぼさぼさになり、蝿が集り、腐臭の漂う闇よりも深く長い黒髪。
幽霊と呼ぶにはあまりに恐ろしく、妖怪というにはあまりに人間じみた化け物を眼前に認めた瞬間、世界から音が姿を消した。
そんなつぶやきを口にしそうになり、かろうじて飲み込んだ。俺はありがとうございます、と言いながら頭を下げ、一連の事件を解決すると告げる。出された緑茶の残りを啜って辞すると、すぐさま瀬川家から見えない位置へ移動し、白璧の前に立った。
「縁が来るから、縁来神社。でも廃社になって以降、良縁が来ることはなかった。だからこそーー」
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俺は桐箱を開け、笛を持った。危険だとはわかっていたが、ここまで来た以上、試してみる価値はある。
いつも通りに構えた後、努めて柔らかな息を吹き入れた。
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どうして、何で、どうしたら・・・・後悔の言葉ばかりだ。恐らくこれが、詐欺に遭って廃社にせざるを得ないという時の記憶なんだろう。でも、家族揃って明瞭な声が聴こえるってことは、全員すでに命を落としているということ。穏やかじゃないな。
「父さん、私たち・・・・これからどうなるの」
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オマエハダレダ?
え? 何だ、今の声。気のせいか? そもそも、一体どこから?
いや待て。おかしい。声が減っている。家族の啜り泣く声も、後悔の言葉も聞こえない。じゃあ今の声は、まさか。
ダレダトキイテイル。コタエロ。ソシテ、ワタシヲミロ。
やばい。やばい。これは、やばい。だって、記憶を介さずに声が聴こえるなんてこと、今までなかった。一体、どれほどの怨念があるんだ。
それに、答えることも視ることもしちゃならない。俺は兄さんたちとは違う。俺は、人が妖怪や怪異、幽霊と呼ぶものを、視ることができない。声を聴くことができるだけだ。それに逆らって視てしまえば、何が起こるかわからない。
だが、俺の不安を煽るように不気味な声は響いた。
コタエロコタエロコタエロコタエロコタエロコタエロコタエロコタエロコタエロコタエロ・・・・ミロミロミロミロミロミロミロミロミロミロ・・・・
聴くのをやめなきゃダメだ。これ以上聴いたらダメだ。笛を放さないと。普通の世界に戻らないと。早くしないと、手遅れになる。
俺は引き剥がすように笛から口を放した。全身の汗を感じながら、接着剤でも付いているかと思うほど強く瞑っていた両目を開ける。
ミィツケタァ。
青白い顔。充血して見開かれた両目。瞳と鼻口から流れ落ちる夥しい鮮血。釣り上げられた唇から覗く雪よりも白い歯。ぼさぼさになり、蝿が集り、腐臭の漂う闇よりも深く長い黒髪。
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