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14枚目のトランプカード 〜竹一族の記憶(二)〜
三
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死神と悪魔。絵柄から受ける第一印象は、それ以外になかった。
「随分とわかりやすいな・・・・」
4枚のトランプカードを手に持ったが、特に体に不調を感じることはなかった。これの何が呪いなんだと思いつつ弄び、手品のトランプカードなのではと疑念を抱く。
「・・・・賢三様。どうもぼくには、普通のトランプにしか見えないのですが」
「そうだね、吉次郎。僕も同じだよ。でも、“客人”はそれで納得するような人じゃないだろうし・・・・」
すると、吉平がなぜか鼻をひくひくと動かしていた。不思議に思って尋ねようとすると、彼は「妙な臭いがしますぜ」とつぶやく。
「臭い?」
「トランプからでさあ。ちょっと貸してくだせえ」
吉平にトランプカードを渡すと、彼は鼻を近づけて4枚のトランプカードの臭いを嗅いでいた。やがて顔を離し、顔を顰める。
「血の臭いですぜ。吉次郎も嗅いでみろ」
鼻先にトランプカードを押し付けられた吉次郎は、その時点で臭いを嗅ぎ取ったのか、同じように顔を顰めた。念のためと吉平から受け取って臭いを嗅いでみたけれど、無臭だった。
「何の臭いもしないよ?」
「そうなんですか? かなり強いんですけど・・・・ぼくらの鼻がおかしいんでしょうか」
「いや、それはない。動物の鼻はーー特に君たちのような妖怪に類される者たちはーー人間よりも敏感のはず。間違っているとは思えない。
だけど、人間に嗅げないということは、恐らくこれまでの所有者たちも気がつかなかったはず。呪いの原因は、この臭いなのかもしれない」
「確かにそれはあり得るかもしれやせんね。でも、本当に血の臭いだけで、他の臭いはしませんぜ。この臭いを嗅いだからって、不審死に至るたあ、どうも・・・・」
そんなことを話し合っていると、廊下の向こうから兄さんの声が聞こえた。丁度いいと思って二つ返事で入ってもらい、事情を話してトランプカードを手渡した。
「・・・・何の臭いもしないな。人ならざる者だけが嗅げるって推測、間違ってないと思うぞ」
「ありがとう、兄さん。ところで、食事を運ぶ以外に何か用事があった? あるなら今聞いちゃうけど」
兄さんは少し考えていたが、僕の側に控える吉平と吉次郎を見ると、いや、と答えた。
「急ぎじゃないからいい。無理はするなよ」
「もちろんさ。仕事中に引き止めて悪かったね」
兄さんの足音が聞こえなくなると、僕は改めて2人に向き直った。
「一先ず、やってほしいことはわかる?」
「はい。臭いを辿るんですよね」
「うん。取り敢えずは“客人”ーー浅間さんの自宅か会社に行き着くだろう。その後も追えるなら追ってもらいたいし、途中で気になることがあれば報告してもらいたい。手助けはすでに出しているから」
2人は同時に手をつき、額が畳につきそうなほど頭を下げた。
「随分とわかりやすいな・・・・」
4枚のトランプカードを手に持ったが、特に体に不調を感じることはなかった。これの何が呪いなんだと思いつつ弄び、手品のトランプカードなのではと疑念を抱く。
「・・・・賢三様。どうもぼくには、普通のトランプにしか見えないのですが」
「そうだね、吉次郎。僕も同じだよ。でも、“客人”はそれで納得するような人じゃないだろうし・・・・」
すると、吉平がなぜか鼻をひくひくと動かしていた。不思議に思って尋ねようとすると、彼は「妙な臭いがしますぜ」とつぶやく。
「臭い?」
「トランプからでさあ。ちょっと貸してくだせえ」
吉平にトランプカードを渡すと、彼は鼻を近づけて4枚のトランプカードの臭いを嗅いでいた。やがて顔を離し、顔を顰める。
「血の臭いですぜ。吉次郎も嗅いでみろ」
鼻先にトランプカードを押し付けられた吉次郎は、その時点で臭いを嗅ぎ取ったのか、同じように顔を顰めた。念のためと吉平から受け取って臭いを嗅いでみたけれど、無臭だった。
「何の臭いもしないよ?」
「そうなんですか? かなり強いんですけど・・・・ぼくらの鼻がおかしいんでしょうか」
「いや、それはない。動物の鼻はーー特に君たちのような妖怪に類される者たちはーー人間よりも敏感のはず。間違っているとは思えない。
だけど、人間に嗅げないということは、恐らくこれまでの所有者たちも気がつかなかったはず。呪いの原因は、この臭いなのかもしれない」
「確かにそれはあり得るかもしれやせんね。でも、本当に血の臭いだけで、他の臭いはしませんぜ。この臭いを嗅いだからって、不審死に至るたあ、どうも・・・・」
そんなことを話し合っていると、廊下の向こうから兄さんの声が聞こえた。丁度いいと思って二つ返事で入ってもらい、事情を話してトランプカードを手渡した。
「・・・・何の臭いもしないな。人ならざる者だけが嗅げるって推測、間違ってないと思うぞ」
「ありがとう、兄さん。ところで、食事を運ぶ以外に何か用事があった? あるなら今聞いちゃうけど」
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「うん。取り敢えずは“客人”ーー浅間さんの自宅か会社に行き着くだろう。その後も追えるなら追ってもらいたいし、途中で気になることがあれば報告してもらいたい。手助けはすでに出しているから」
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