竹一族の記憶

夕凪ヨウ

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14枚目のトランプカード 〜竹一族の記憶(二)〜

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「鋼さん。受け止めなくたって、声をかけてくれたら止まったのに」
「止まったことがないから止めたんだろう」
 烏天狗一族の若衆の1人、鋼さんは、ぼくらにとっては兄のような人だ。一族同士で交流があったからか、今でもぼくらのお目付役のような立ち回りをしている。迷惑をかけたことは、正直結構ある。
「まーた鋼かよ。なんでおめえばっかり、おいらたちに着いてくるんだ」
「長い反抗期だな、吉平。とにかく1度戻るぞ。次の行き来は送ってやるから、文句は無しだ」
 迷惑そうにする鋼さんだけど、何だかんだと、ぼくらの世話を焼いてくれる。もちろん指示を受けたという理由もあるだろうけど、彼が長兄で弟妹が多くいることを、ぼくらは知っていた。
「そうだ、鋼さんはどう思う? 今回の件。呪いだなんだって話」
「嘘くさいな。人間は理解できないことがあると、すぐに人ならざるものが働いていると喚き立てる。もちろんその場合もあるが、大抵は理由や理屈があるんだ」
「相変わらずだなあ。じゃあ、今回も同じだと思うの?」
「その方が、賢三様の負担にはならないからな」
 この言葉通り、鋼さんの賢三様に対する忠誠心は筋金入りだ。理由は聞いたことがないけれど、烏天狗一族は揃って同じらしい。聞いてみようかとも思ったけれど、どうせ子供には早いとか言って誤魔化されるだけだ。
 先ほどまで文句を言っていた吉平を見たけれど、彼はもう上空から見る景色に目を奪われていた。切り替えが早いとは思ったけれど、ぼくも同じ景色が好きなので、何も言わなかった。




 賢三様は自室で書き物をしていた。窓は敢えて開け放っていたらしく、鋼さんは難なく入室できた。
「休んでいる時に悪かったね、鋼」
「とんでもございません。ほら、2人とも報告」
 鋼さんに促されて、ぼくらは揃って姿勢を正した。筆を置いた賢三様も、膝を動かしてぼくらに向き直る。先に、吉平が声を上げた。
「臭いは、一先ず“客人”の別宅に続いていやした。客間らしき部屋にトランプは置かれていたみてえで、古いけど石が着いた箱にしまわれていたようです」
「臭いの道は家を通り過ぎ、恐らくは県境を超えて本宅に続いていると思われます。
 結論から言いますと、臭いの道は2つだけ。少なくとも、別宅に来ていた客人に臭いがついたことはないようです。やっぱり、所有者だけに付くのだろうと思います」
 ぼくらの言葉に鷹揚に頷いた後、賢三様は口を開いた。
「なるほど。
 僕も少し調べてみたけれど、過去の所有者たちが不審死を遂げたことは事実らしい。胸を押さえて亡くなったのに何も異常が見られなかったとか、突然川に飛び込んで溺死したとか、通りすがりの人に襲いかかったかと思ったら発狂して狂死したとか、とにかく不可思議な死に方をしている。ーーさらに、不審死を遂げたのはどうも、トランプカードを手放してから1年足らず」
 最後の一言に、ぼくらは顔を見合わせ、同時に突拍子もない声を上げた。吉平が慌てながら言う。
「“客人”の浅間さまは、すでに手放されていることになるんじゃないですかい? 最終的にどうするかはともかく、手元にはないわけでしょう?」
「問題はそこなんだよね。何をもって手放したとするか、が。浅間さんの場合、手元に返す可能性がある。ただ、過去の所有者たちは、本当に手元から無くした後に不審死を遂げているんだ。そう考えると今はまだ・・・・となるけれど、呪いが解明される前に要らないと言われれば、過去と同じになってしまう。
 だから、呪いにせよ何にせよ、事態が落ち着くまでは所有者でいてもらわないといけないんだ。さっきその旨を連絡したけれど、どこまで信じてくれるかどうか」
「相談しているのに信じないなんてあります?」
 思わずぼくが尋ねると、賢三様はそういうこともあるよ、と答えた。
「とにかく、県境を超えて臭いが伸びているのは事実だろう。過去の所有者の居場所も教えるから、そこに行って臭いの有無を確かめてほしい」
「「はい」」
「大変だけど頼むね。ーーそれと鋼、悪いんだけど2人に着いて一緒に臭いを辿ってくれない? 人間が2人を見えるかどうかはともかく、この辺りを離れるのは危険が伴う。自在に空を飛べる君がいた方が安全だ」
「かしこまりました。できる限り早く戻ります」
「そう焦ることはないよ。いざとなれば、浅間さんを説得すればいいんだから」
 言葉通りの意味と取るべきか考えている間に、1度里に戻って支度を整えるよう、鋼さんに促されて部屋を後にした。
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