竹一族の記憶

夕凪ヨウ

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7つ館に罪禍は宿る 〜竹一族の記憶(四)〜

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 隣県の大学のテニスサークルだという宿泊者たちは、俺たちが館のロビーに姿を見せるなり一様に緊張した面持ちになった。まあ、大友さんが話を通しているとはいえ、除霊師が来るなんて言われて、はいそうですかと答えられる人間なんていない。
 どうしたものかと考えていると、宿泊者の中から1人の少女が進み出て口を開いた。
「初めまして、室生菫むろうすみれです。副サークル長を務めています。
 お2人から見て1番左端のソファーに座っているのがサークル長の高岡哲治たかおかてつじ。彼の右から順に一色聖也いっしきせいや久井翔太ひさいしょうた森山椿もりやまつばき那月橙子なつきとうこです。私と高岡、一色が3回生で、久井君と森山さんが2回生、那月さんが1回生。亡くなった尾上雅史おのがみまさし君は、那月さんと同じ1回生です。
 ご迷惑をおかけすることもあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします」
 随分としっかりした大学生だ。まあ、1人くらいこういう相手がいた方が助かる。実際、サークル長の高岡は、明らかに訝しげな視線でこちらを見ている。余計な話は振るべきじゃないな。
「ご丁寧にありがとうございます。私は竹一樹。こちらは弟の賢三です。
 早速ですが、亡くなった尾上君やこの館のことについてお尋ねしてもよろしいですか? 
 管理人の大友さんは、全ての棟の中心部分にある部屋に寝泊まりされていて、そのまま警察との応対も担っていると聞いています。館は7つの棟に別れているとのことですが、皆さんはどの棟に宿泊を?」
 質問すると、またもや室生が答えた。
「好きな色で割り振りました。赤色が亡くなった尾上君、橙色が夏山さん、黄色が久井君、緑色が森山さん、水色が私、青色が高岡、紫色が一色です。ちなみに、部屋の作りや広さは全て同じで、扉や屋根の宝石が違うだけです」
「なるほど。もしよろしければ、皆さんの部屋を案内していただけませんか? どこかの部屋に何かが、という可能性も捨てきれませんし、建物自体に何かしらの原因があるかもしれないので。
 もちろん、部屋の中を見られたくないとのことでしたら、無理弄りはしません。私たちは警察ではないので、法的権力は持ち得ませんし」
 兄さんは相変わらず口が上手い。いや、無自覚な人たらしというべきか。あの言い方や表情から、本当に無理弄りはしていないとわかり、そんな人なら見せてもいいかもしれない、と思考が移る。こんな大人数の場では、大いに使える性格だ。
「私は構いません。みんなは?」
 室生が基本的には取り仕切る役目を担っているのか。思った通り、全員が渋々という様子ながらも頷いている。意外とすんなり進みそうだな。
「兄さん。初めに尾上君の部屋を見せてもらったほうがいいよ。荷物は警察が回収しているだろうけど、彼は自室で亡くなっていた。“何か”あるなら、そこだ」
「そうだな。室生さん、案内していただけませんか? 皆さんは、しばしこちらでお待ちください」
 先立った室生に付いて歩き始めると、鋼が何かを賢三に耳打ちしているのが見えた。賢三はそれを聞いてわずかに眉を動かし、誰にも聞こえないような声で何かを返していた。
 ロビーを出る瞬間、賢三はなぜか那月の名前を呼んでいた。理由は後で聞こうと思いつつ、赤の棟へと足を運んだ。
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