か細い哀願を無視しつつ男はより濃い興奮を滾らせる

五月雨時雨

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か細い哀願を無視しつつ男はより濃い興奮を滾らせる

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漆黒のスーツに身を包み、目元を白い仮面で隠した男が、ステージを照らすスポットライトの中で深々と頭を下げる。
その礼の様子を無言で見届けた観客達に仮面の下で目を細め、仮面に遮られていない口を歪ませた男は、頭を元の高さまで上げつつ言葉を発し、醜悪なショーの開幕を宣言した。

「ご来場の皆々様! 無様な愉悦の始まりでございます!!」

穏やかに、しかし耳に心地良い鋭さを有する男の声が会場中に響き渡る。その反響が全ての観客の耳に染み渡るのと、男の右と左の斜め後ろに置かれた物体達を新たに降り注いだスポットライトの明かりが照らすのはほぼ同時だった。
見世物へと貶められた檻の中の正義達を、別々の檻に裸体を閉じ込められステージの主役の立場を一方的に担わされた捜査員の男達を照らし出すスポットライトをほんの少しだけ目線を寄せて確認した男は、悪である自分達を憎む怒りはおろか恥辱からの解放を願う誇りを捨てた哀願さえも放てない二人の捜査員が浮かべる絶望の表情を観察者の一人として観客と共に堪能しながら、裏に控えている部下達に檻に仕込んだ残忍な機構を作動させる指示を出す為に右手を高く掲げた。
その動きを認めた部下達は、右手を掲げた自身が属する組織の幹部と、観客席を埋め尽くしたお得意様である好事家の男達と、己を悦ばせる滑稽な悶絶を捜査員達から引き出す檻の仕掛けを何の躊躇いも無く指示通りに作動させた。無論、捜査員達にその非道を拒む術は無い。生身ではどうにもならない頑丈な檻に裸体で閉じ込められ、内部に閉じ込められた者から発声の自由を没収する檻の機構のせいで怒気を飛ばすことすらも不可能にされた捜査員達は、声を出すことを禁じる電波と共に流され始めた残忍な電波がもたらす淫獄に為す術無く悶え苦しむ姿を娯楽として提供させられるしか無い。
無から強烈な発情を強要し、絶頂を堪えることさえ許さない暴力的なまでの快楽を生み出す電波に逃げ場の無い裸体をまんべんなく打ちのめされ始めた捜査員達は、今宵のショーの内容を高らかに語る男の斜め後ろで絶叫を紡ぐことすら認められぬまま、仲良くイき狂わされるだけの存在でしか無いのだ。

「さぁ、情けなく快楽を極めるこの捜査員達。今は幾ら口を開いても鳴き声一つ聞こえませんが、その鳴き声は絶頂の回数を重ねる度に少しずつ解放される状態となっております。イけばイくほど愉快な鳴き声を晒していく捜査員達をどうぞ皆々様、時間の許す限りお愉しみくださいませ」

絶頂に至った分、淫らに乱れた声が解き放たれていく。
その事実に戦慄し、焦りながら快楽を堪えようとしても二人の捜査員の肉体は冷酷な電波に逆らえぬまま絶頂を極めていく。
檻の格子を掴んだまま裸体を痙攣させ、腰を前後に振りつつ絶頂を繰り返す捜査員達。座ることすらも認めず立ったままの姿勢を強要する縦長の檻の中で汗塗れの裸体を間抜けに跳ね回らせながら、張り詰めた男根から噴き出した精液で無慈悲な檻とステージの床を汚していく捜査員達。
そんな捜査員達の口から零れ出した蚊が鳴くような声で示される屈服色の哀願を聞き流しながら、ステージの進行を務める悪の幹部の男は観客達の興奮を越える興奮を自らの内に滾らせ、仮面越しでも分かるくらいに表情を黒い至福に染め上げていくのだった。
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