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悪達は悶え苦しむ正義を愉しむ

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左右の二の腕から先をすっぽりと包み込む黒色のアームバインダーを装着され、背中で伸ばしたままの状態を強要された男の腕は指一本すら思い通りに動かせない状況へと追いやられた上に、アームバインダーの表面にある金具と背にした壁に打ち付けられた金具を幾本もの短い鎖と南京錠を用いて遊び無く繋がれたことで暴れさせることすらも出来ないよう完全に動きを封じられてしまった。
太ももから先を覆って締め付ける黒色の拘束具を与えられた男の足は左右を離すことさえも許されず、わずかに床から浮かせることすらも叶わないよう腕と同じ形で鎖と南京錠を厳重に施され、壁へと縫い付けられてしまった。
もはや男は、壁に固定された姿のまま何処へも逃げられない。視界を閉ざす黒革の目隠しと言葉を奪う黒い棒状の口枷を毟り取りたくても毟り取れない。何より、ありとあらゆる自由を没収された哀れな男は閉じ込められた部屋に絶え間無く流し込まれる残酷な気体を、強烈な発情を誘発する媚薬混じりの気体を拒むことさえも出来なくて、男は呼吸の度に嫌でも湧き上がる発情に為す術無く悶え苦しめられながら意に反して硬く張り詰めさせられた剥き出しの男根を肉体のくねりに合わせて情けなく無様に振り乱す痴態をさらけ出す状態へと陥ってしまっていた。

「んぅっ……ふぐっ、むうぅ……!」

くぐもった呻きを漏らしながら、男が壁に結合された肉体を苦しげによじらせる。こんな惨めな行動など取りたくないと発情に蝕まれた頭で思いながらも、淫欲を増幅させられた男の肉体は快楽を求める本能に屈してねだるように踊り、己の腹に触れそうなくらいに勃起した男根をひょこひょこと跳ねさせてしまっている。
悔しい。気持ち良くなりたい。堪えきれずに肉体が踊る度に、男の思考で屈辱と淫欲に溺れてしまいたいという破滅の願望が膨らむ。男は媚薬によって追い詰められ異常なまでに感度を高められた肉体を伝う汗にも快楽を感じ、男根から滲み出た透明な淫蜜が幹を伝う刺激に緩い悦びを感じながら射精への渇望を引き上げさせられていく。
だが、男はそれ程までに欲望を掻き立てられながらも理性を保ち、自分を捕らえ全ての選択肢を奪った姿で辱めている者達への反抗を抱き続けていた。決して悪には屈しない。その誇り高きヒーローとしての決意を胸に、男は希望を捨てること無く無慈悲な責め苦を一生懸命に耐え忍んでいた。
しかし、幾ら頑張って陥落を拒否してもそれは無駄な抵抗でしかなくて。数時間経っても崩壊に至っていないヒーローの男を強化ガラスの壁越しに眺めて残忍に微笑んだ悪の男達は、諦めの悪いヒーローを淫蕩な崩壊へと導く為にリモコンのボタンを押し込み、男を拘束した部屋に用意しておいた機構を作動させた。

「んぐっ!? むぅぅんっ!?」

自分が固定されている部分の両隣に位置する壁から、足元の床の方向から、正体不明の機械音が聞こえ始める。視界を遮られているが故にそれが何か全く分からない男は、怯えに染まった唸りを発しながらじたばたと身をもがかせていたがその効果は欠片も見られず、ヒーローの男は悪達が新たに作動させた機構によって射精欲を溜め込まされた男根を残酷にも捉えられ、部屋のあちこちに開いた扉から現れた先端に液体媚薬をたっぷりと含んだ筆達の容赦の無い動きで無防備な男根を甘く激しくまんべんなくいたぶられ始めてしまった。

「みゅぅぅぅぅっ!? むっ、ふむぅぅ! んもぉぉぉ-っ!!」

本能が待ち侘びていた淫らな至福を流し込まれている男根が、気持ち良い。半狂乱になって身を暴れさせ男根を動かしても逃げた先で待ち構えている筆達が送り込んでくる快楽が、気持ち良い。
その悦びを否定しながらも、男はじわじわと頭の中を淫猥な幸福に塗り潰されていく。快楽を遠ざける足掻きを行うことを諦めた肉体を無意識に快楽に溺れさせ、男はヒーローとしての自分をかなぐり捨ててようやく訪れる射精の瞬間を全身で汲み取ろうとし始める。
そんな淫欲に屈し出した無様なヒーローの男に醜悪な笑みを浮かべながら、悪の男達はもうすぐ発せられる悲痛な絶叫に、射精寸前で停止した筆達に驚愕して放たれる絶望色に歪んだ滑稽な鳴き声に期待を抱き、悶え苦しむ男を冷酷に細めた目でじっと眺め続けていた。
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