被検体は無様に見極められる

五月雨時雨

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被検体は無様に見極められる

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吸入した者に肉体の発情と弛緩をもたらし、同時に思考能力を大きく鈍らせる深酒をしたかのような酩酊を引き起こさせるガス。新たに作製されたその気体の効果は覿面で、全裸に剥かれた身体を縛める縄を軋ませながら焦りと怒りに満ちた叫びを発していた捜査員さんはほんの十分足らずで一切の足掻きを跡形も無く削ぎ落とされ、淫猥な火照りをこれ以上無く高められた間抜けな酔っ払いへと成り下がっていた。

「はっ、ひおぉ……あひっ、うあぁ……?」

二の腕を胴体に繋ぎ背中で左右の手首を一まとめにする縄を鳴らしながら拘束からの解放を要求していた捜査員さんはもう、何処にもいない。丸出しにさせられた男根と尻穴が惨めに揺れ動くことも構わずに暴れ、足首と太ももを短く括り左右の足に折り畳んだ状態を強要する縄をどうにかして振り払おうと試みていた捜査員さんはもはや、影も形も無い。
今俺の目の前にいるのは、上面にクッションが敷かれた台の側面に位置する金具達と裸体を縛る縄を後から付け足された縄で結合され裸体を仰向けの格好に固定された屈辱の事実を認識出来ず、みっともなく張り詰めた乳首と男根が無意識にヒクヒクと収縮する尻穴と共に俺の視界にさらけ出されている状況も把握出来ず、頭部を囲う形で装着された黒いガスマスク状の器具内にチューブを通して流し込まれる気体を吸ったら今以上の発情と弛緩と酩酊に襲われることも忘れて荒い呼吸を繰り返す最高に愉快な酔っ払い以外の何者でもない。
俺が所属する組織に捕らわれ新薬の実験体に選ばれた捜査員さんは、訳も分からぬまま際限の無い火照りと酔いに狂わされるだけの存在でしか無いのだ。

「んぉっ、はぉっ……おほっ、んうぅ」

自分の身体が今どうしてこんなに熱く高まっているのかを理解する思考など、捜査員さんには残されていない。けれど、火照りを解消したいと願う本能は優秀で、酩酊の中で困惑する捜査員さんを置き去りにした肉体は台に縫い付けられた仰向けの自身に腰をヘコヘコと上下に往復させ、パンパンに張り詰めた男根を揺らめかせることで熱の飛散を狙い始めた。
もちろん、その程度の動きで薬品が掻き立てさせた火照りが鎮まる訳も無い。むしろ捜査員さんは肉体が勝手に行い出した腰振りのせいで息を乱し、一層激しい勢いでマスク内に充満する薬品混じりの空気を体内に取り込み、腰を揺らし始める前よりも苛烈な火照りと酔いに苛まれていく。

「はひっ、んひぃ? おっ、あぉ、ほぉぉ……!」

何で苦しさが増幅したのか。それさえも分析不可能となった捜査員さんが無意味どころか望む物とは真逆の結果しか手繰り寄せられない腰振りを無自覚に行う様子を眺めながら、俺は愉悦に胸を躍らせつつ捜査員さんの肉体に繋がれた幾つもの器具が読み取った情報を映し出しているモニターを横目で確認し、新薬の実験を終了させるタイミングを、滑稽な実験体を明日の実験に向けた体力を考慮し今日の実験から解放するタイミングを、捜査員さんが限界ギリギリまで追い詰められ鳴き喚く様が見たいという衝動を抑えつつ見極めていた。
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