男は無意味に抗う青年に冷酷な言葉を発し続ける

五月雨時雨

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男は無意味に抗う青年に冷酷な言葉を発し続ける

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万歳をするように持ち上げさせられた青年の腕は、手首に巻き付けられた黒革の枷と背にした壁の高い位置に打ち付けられた丸い金具を鎖で結合されたことによって、下ろしたくても下ろせないよう動きを封じられてしまった。左右の足首に巻き付けられた手の物と同じ枷を壁の低い位置に取り付けられた二つの丸い金具へと鎖で結び付けられた青年の足は、肩幅に開いたまま閉じられないよう行動を制限されてしまった。
両手両足に施された枷と鎖のせいで、青年は逃走と抵抗を禁じられた。身に着けていた物を全て剥ぎ取られた裸体を覆い隠すことも許されず、視界と言葉を奪う機能を備えた黒色の全頭マスクを振り払うことも叶わず、頭部をすっぽりと覆うマスクと一体化している丸い金属を噛まされたことで開きっぱなしの状態を強要された口に接続された透明なチューブを通して流し込まれる残酷な責め苦を拒むことも出来ない。そんな哀れな青年を作り出した男は、惨めに苦しむ青年の前に置いたソファーに腰掛け、立ったままの姿で情けなくくねくねと踊る様子を至近距離で思う存分観察しながら、無様な青年を嘲笑う言葉を休み無く嬉々として放ち続けていた。

「どうした、スパイ君? さっきからまた腰が揺れて、はしたなく膨らんだおチ○チンが震えているぞ? どんな責めにも屈しないと言っていたのは、やはり嘘だったんだな?」
「あぉっ、えおぉ……っ!」

男の愉しげな指摘で無意識に腰を振っていた自分に気付いた青年スパイは、羞恥と屈辱に歪んだ唸りを閉じられない口から漏らしつつ快楽を欲しがる本能を剥き出しにして腰を動かしていた自らの肉体に命令を飛ばし、無理矢理に腰の動きをやめさせた。
だが、男の言葉は途切れない。腰の揺れを律した青年スパイを確認した残忍な男は、苦しげにビクビクと跳ねる汗塗れの裸体を眺めて醜悪に微笑みながら、今度は快楽をねだる本能を刺激し淫猥な欲望を膨らませる言葉を浴びせ出す。

「ふふっ、そんなに辛そうに痙攣してるのに強情だねぇ。呼吸の度に媚薬を吸わされて、本当はもう限界なんだろう? スパイとしてのプライドも、人間としての尊厳も捨てて、私に快楽を恵んで欲しいんだろう? 正直になりなよ、スパイ君? みっともなく腰をガクガク振り乱しながら、私に向かって身体中で気持ち良くしてくださいっておねだりしなよ、スパイ君?」
「はぐっ、はぉ、おぉっ……!」

男の発言は、紛れもない事実だ。口に繋がれたチューブへと送り込まれる強力な媚薬混じりの空気でしか呼吸を行えないようにされた青年の心と身体は、限界をとっくに超えている。思考は快感が欲しいという思いに蝕まれ、発情しきった裸体は制したばかりの腰振りを無自覚に再開してしまうくらい淫欲に支配されきっている。
しかし、誇り高き青年は、その方が楽だと分かっていても陥落を選べない。スパイとして人間としての自尊心が非常に高い青年は、自分を罠に嵌めて捕らえた男の思い通りに屈服する自分を認められず、陥落を意味するおねだりを堪え続けている。すでに誰の目にも明らかな敗北を迎えた肉体は勃起した男根を跳ね回らせながら腰を前後に往復させ陥落色のおねだりを示しているというのに、まだ自分が負けてはいないと勘違いしている青年スパイは残りわずかな気力で反抗を繰り返し、無駄な足掻きを行い、苦悶に喘ぐ己の様で冷酷な男の目と耳を余計に悦ばせてしまっている。

「ほらほら、早くおねだりしなよ。苦しいでしょ? 辛いでしょ? 何もかもを全部忘れて気持ち良くなって……びゅーびゅー射精したいでしょ、スパイ君?」
「あぉっ、えぉぉぉっ!」

今本人が気付かぬまま行われているおねだりの腰つきをわざと指摘せずおねだりをしなさいと穏やかな声音で命令する男は、腰をくねらせ張り詰めた男根を上下左右に踊らせながらおねだりを否定する叫びを返す滑稽な青年スパイに目を細めつつ、青年からより愉快な痴態を引き出す為の言葉を悪魔のように吊り上げた口から次々に発し続けていた。
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