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溶け落ちた刑事は屈服色のおねだりを放つ

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「ほら、刑事さん……見てごらん? 昨夜も苛めてあげた可愛い乳首が、お薬の影響も受けていつもよりもはしたなーく膨らんでるよ?」
「んうぅ……むあうぅ」

必死で視線を逸らそうとする刑事の顎を左手で掴み無理矢理に姿見の方へと顔を向き直させながら、残忍に微笑んだ男が情けない変化を迎えた乳首の様子を意地の悪さを前面に押し出した声音で指摘する。
口を塞ぐ黒いギャグボールのせいで拒絶の言葉を紡ぐことさえ出来ない。裸体を厳重に縛める縄のせいで無様な己の姿と自分を拉致した悪の男を映している姿見の前から離れることも叶わない。そんな状態に追いやられた刑事が示す屈辱と羞恥に満ちた反応を独占し堪能しながら、非道な悪の男はギャグボールの穴からだらしなく溢れた唾液が刑事の顎に添えた左手を濡らす感触を愉しみつつ、右手の指で滑稽に体積を増した左右の乳首をからかうように緩く弄っていく。

「ほらほら、乳首気持ち良いでしょ? 昨夜も気持ち良かったけど、今日はお薬のおかげでもっと気持ち良いでしょ? こんな弱い刺激じゃ物足りないくらい、気持ち良くて堪らないでしょ?」
「うぶっ! ふみゅ、うぅんっ!」

もどかしさを覚えている心を覗いているかのような言葉を吐きつつ真っ赤に充血し小刻みに震えている乳首をカリカリと指先で引っ掻く悪の男の責めに悲鳴を漏らしながら、刑事が縄塗れの裸体をじたばたともがかせる。左右の腕を背中で伸ばしきった状態に固定させ、左右の足を数箇所に分けてきつく一つに括る縄は暴れた程度では緩みもしない。手首の部分と足首の部分にあてがわれた縄同士を繋ぐ追い打ちの縄は仮に指の使用を不可能にさせる目的で巻き付けられた黒色の粘着テープが無かったとしても自力では振り払えない。どう足掻いても膝立ちにさせた自分の裸体を己の身体に寄りかからせている背後の悪からは逃れられない。そんな絶望的な現実を知りながらも、刑事の男は悪が語る誘惑の言葉に堕ちそうになる誇りを引き留めたい一心で悦楽を嫌がり乳首への責めに拒絶を表わす身悶えをひたすらに繰り返していく。
しかし、幾ら抗おうとも悪の男は何も困りはしない。刑事が耐えれば耐える程、悪の男の愉悦は加速する一方だ。いつまで経っても終わらない。どんなに忍耐を維持しても意味は無い。結局最後には陥落させられる以上、連日の調教で暴かれ開発された弱点である乳首をいたぶる悪に、自分は今日も屈服させられるしか無い。

「うぁ、あおぉ……もごっ、ふむおぉ」

正面に置かれた姿見の中の自分が晒す淫ら極まりない痴態に気付く余裕すらも無くした刑事。切なげに歪んだ顔を唾液のみならず汗と涙でも汚し、縄に縛められ逃れられなくされた裸体をガクガクと痙攣させている限界の刑事。正常なそれからは遠くかけ離れた太さと長さを有する器官と化した乳首を悪の指の攻撃と自らの痙攣に合わせてぷるぷると跳ね回らせながら、絶頂を求める本能に任せて無自覚に腰を揺らめかせる疲弊しきった刑事。
そんな刑事を作り出した悪の男は、自らを焦らしに焦らし己を苦しめるだけの我慢を重ねに重ねた愉快な正義の悶絶を五感で独り占め出来る至福に浸りながら、理性が跡形も無く溶け落ちた刑事に改めて問いを浴びせた。

「刑事さん、もっと強く乳首を苛めて欲しい? こっちの手も使って、両方同時にこねこねして欲しい? 正直に言えたならそうしてあげるよ。両方を弄りながら、昨夜よりもたくさん乳首でイかせてあげる。さて……刑事さんはどうして欲しいのかな?」
「おぅ、おえあぁ……っ!」

思考も挟まぬ速度でギャグボール越しの言葉を発し始めた刑事に充足の笑みを零しながら、発された瞬間から伝わる哀願の意思に満足げな頷きを小さく行いながら、悪の男は姿見を通して刑事を見つめつつ顎に添えていた左手をゆっくりと左の乳首へと迫らせ、不明瞭なおねだりの熱量を抑えきれぬ期待を用いて引き上げさせていくのだった。
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