暗闇の中で攫われた裸体は火照りを加速させられる

五月雨時雨

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暗闇の中で攫われた裸体は火照りを加速させられる

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自らの身体の状態すら確認出来ない暗闇の中で、男は裸体を圧迫する縄を耳障りに軋ませながらの足掻きを休み無く積み重ねていた。二の腕を胴体に結び付け左右の手首を背中側で縛る縄のせいで腕は思うように動かせない。足首と太ももを短く括る縄によって左右の足は折り畳んだ状態から抜け出せないようにされている。そんな手足の縄と周囲に存在する何かを幾本もの別の縄で緩み無く結合された為に仰向けの格好から離れられなくされた肉体をじたばたともがかせながら、男は口を塞ぐ枷に歯を立てて悔しげに唸りつつの試行錯誤をひたすらに繰り返していた。

「んむっ、むぐうぅ! ふぶっ、んもぉっ!」

喉近くまでを貫く棒型の枷に言葉を奪われた口で救助を望むくぐもった叫びを放ちながら、男は闇の中で裸体をくねくねとよじらせる。
真下に敷かれた柔らかなクッションに密着させられた上半身を悶えさせ、限界まで開かされた足を暴れさせる度にみっともなく跳ね回る丸出しにさせられた自らの男根に羞恥と屈辱を覚えさせられながら、男は自身の声の反響から狭いことだけはどうにか分かる黒一色の空間の中で裸体を動かし縄との格闘を行い続ける。
けれど、男が望む変化はいつまで経っても訪れない。厳重に施された縄は男の努力を嘲笑うかのように鳴るのみで緩む気配すら見せず、なりふり構わぬ叫びに対する救いの反応も生まれはしない。
自分の声と縄の軋む音以外何も聞こえない空間で無駄に頑張る男。その無様極まりない男を待ち受けていた変化は、希望とは大きくかけ離れた絶望に染まった物で。突然に訪れた移動の揺れでここが車のトランクであると察した男は、自分が連れ攫われているという事実に戦慄を膨らませつつ、一層激しい無駄な頑張りを走行する車のトランクで開始し始めた。

「んぐっ、むあぅぅっ! ぶふっ、むぐぅぅっ!!」

自分を攫う存在など、一人の男しかいない。その男が頂点を務めている組織の手に堕ちたら、どんな非道が待ち構えているか分からない。
焦りと恐怖と戦慄を糧に危機と縄からの脱出を追い求める男は、車のエンジンが起動した瞬間すでに始まっていた非道に全く気付けぬままあらゆる音を吸収し遮断する防音材がしっかりと取り付けられたトランクの中で呼吸を乱しながら、狭い空間に注入され出した発情を促す薬品が混じった空気を間抜けにプスプスと音を立てる鼻で吸入し、自らを惨めに、淫らに、憎い組織を束ねる男の予定通りに、火照らされていくのだった。
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