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9】人間の街にやって来たけれど③
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9】人間の街にやって来たけれど③
それは、言葉通り。悪魔の囁き。
甘いマスクで甘い言葉を囁くように、誰にも邪魔が入らないように女の子の手を引いた。
「ねぇ、あっちに何かあるかもしれないよ」
「え? そんな。あっちには何もないわよ」
「そうかもしれないね。でも、俺は君と二人きりになりたいのさ」
「それってどういう……」
「君の可愛い姿が見たいってこと」
俺を淫魔と知らない女の子は、驚いた表情を見せた後。頬の色を赤く染めた。
「え……ぁ……っ!」
(ここまで言って、振り払わないんだもん。食べて良いよね?)
俺は振り返り、女の子に背を向けて口角を上げて笑ってしまう。
その後は有言実行。予定通り、大通りから抜けた人気のない道。俺が街にやって来た場所へと辿り着いた。奥に行けば、行き止まり。お互いに黙ったまま、壁を見た後もう一度振り返れば、女の子も満更じゃない顔をしていた。つまりは、合意の上ってこと。
「抱きしめても良い?」
「は、はいっ……」
握っていた手を解いて、紳士的に尋ねる。顔を赤く染めたまま、女の子が首を縦に振ったことを確認し、俺は静かにその身体を抱きしめた。柔らかな感触に、チラリと横目に見える長い黒髪に指を絡める。
「綺麗な髪だね。俺、君の髪が好きなんだ」
絡めた指先の髪を掬い、ちゅっと口づけた。女の子は俺に期待をしているんだろうが、俺の心は一つも女の子に向いていない。酷い男だと思いながら、思い出すのはやはり魔王様のこと。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。
「ぁ、あ……っ」
細い首が悶える。それでも逃がさないと俺は髪に口づけを続けた。こんなの、昨日の自慰と変わらない。ただ魔王様に似た黒髪を使っての自慰。違うとすれば、口づけのたびに精気を吸って、元気になるくらい。
「あのっ……!」
俺の胸の中で大人しかった女の子が、グイッと胸を押した。どうやら髪ばかり可愛がっていたのがいけなかったらしい。
「髪ばかりじゃなくて、そのっ……」
「ああ、お口がお留守だったね?」
ごめんね? と甘い顔をして、絡めていた髪から指を離し。頬を撫でながら耳元で囁けば、小さく「んぁっ……っ♡」と甘い吐息が漏れた。ごくごく普通の淫魔なら、このまま美味しく女の子を頂いているだろう。勿論、俺も。そのつもりでやって来たのに、恋とは凄いもので。
「ちゅっ」と俺が口づけたのは、女の子の血色の良い唇ではなく。赤く染まった頬だった。
*******
久しぶりに更新しました! こちらも割とすぐシリーズ終わらせてしまうかもしれません><
【宣伝】別に投稿していた【BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!】を完結させました。
読んで頂けると嬉しいです
それは、言葉通り。悪魔の囁き。
甘いマスクで甘い言葉を囁くように、誰にも邪魔が入らないように女の子の手を引いた。
「ねぇ、あっちに何かあるかもしれないよ」
「え? そんな。あっちには何もないわよ」
「そうかもしれないね。でも、俺は君と二人きりになりたいのさ」
「それってどういう……」
「君の可愛い姿が見たいってこと」
俺を淫魔と知らない女の子は、驚いた表情を見せた後。頬の色を赤く染めた。
「え……ぁ……っ!」
(ここまで言って、振り払わないんだもん。食べて良いよね?)
俺は振り返り、女の子に背を向けて口角を上げて笑ってしまう。
その後は有言実行。予定通り、大通りから抜けた人気のない道。俺が街にやって来た場所へと辿り着いた。奥に行けば、行き止まり。お互いに黙ったまま、壁を見た後もう一度振り返れば、女の子も満更じゃない顔をしていた。つまりは、合意の上ってこと。
「抱きしめても良い?」
「は、はいっ……」
握っていた手を解いて、紳士的に尋ねる。顔を赤く染めたまま、女の子が首を縦に振ったことを確認し、俺は静かにその身体を抱きしめた。柔らかな感触に、チラリと横目に見える長い黒髪に指を絡める。
「綺麗な髪だね。俺、君の髪が好きなんだ」
絡めた指先の髪を掬い、ちゅっと口づけた。女の子は俺に期待をしているんだろうが、俺の心は一つも女の子に向いていない。酷い男だと思いながら、思い出すのはやはり魔王様のこと。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。
「ぁ、あ……っ」
細い首が悶える。それでも逃がさないと俺は髪に口づけを続けた。こんなの、昨日の自慰と変わらない。ただ魔王様に似た黒髪を使っての自慰。違うとすれば、口づけのたびに精気を吸って、元気になるくらい。
「あのっ……!」
俺の胸の中で大人しかった女の子が、グイッと胸を押した。どうやら髪ばかり可愛がっていたのがいけなかったらしい。
「髪ばかりじゃなくて、そのっ……」
「ああ、お口がお留守だったね?」
ごめんね? と甘い顔をして、絡めていた髪から指を離し。頬を撫でながら耳元で囁けば、小さく「んぁっ……っ♡」と甘い吐息が漏れた。ごくごく普通の淫魔なら、このまま美味しく女の子を頂いているだろう。勿論、俺も。そのつもりでやって来たのに、恋とは凄いもので。
「ちゅっ」と俺が口づけたのは、女の子の血色の良い唇ではなく。赤く染まった頬だった。
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