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あんなに自身の腹のナカを満たして欲しい。熱を注いで欲しい。そのくせ、好きな人は? と問われれば、良い年をしているくせに「分からない」なんて答える。ベッドの上で、裸のまま。今だって、恥を忍んで自身の部下に抱いて欲しいと頼んだくせに。脳裏にチラつき始めたアーサー様の存在が大きくなるばかり。俺に本当の子宮はなくとも、俺が本当に抱かれたいのは……────。
「レオン、すまない」
喉を出た声は、熱を冷ましたように落ち着いた声だった。
(ああ、俺は馬鹿だ)
(こんな時に、自身の気持ちを認めるなんて)
「ギルベルトさん?」
「すまない、レオン。俺は……っ」
「何だ。やっぱりいるんじゃないですか、好きな人」
俺の様子に、全てを悟った様子のレオン。
怒った表情ではなかったが、俺を安心させるように微笑んだ表情がどこか悲しそうだった。擦れていたペニスが離れ、レオンが俺の隣に倒れ込む。「あーあ」と言いながら、俺の髪を撫でてまた笑った。
「あーあ。せっかくギルベルトさんを抱けると思ったのに」
「悪い……」
「良いんですよ。俺も、嫌がるギルベルトさんを抱くような趣味は無いんで」
本当にどこまでも甘い男だ。そして俺は悪い男だ。
「でも、このくらいは許して下さいよ」
そう言って、またレオンが俺の頬に口づけた。柔らかな感触の後、耳元で小さく囁く。
「俺ね、ギルベルトさんのこと好きなんだよ」
「!?」
ハッとしてレオンを見れば、また笑っていた。
「まぁ、ギルベルトさんがアーサー様と何かあれば、すぐに攫うつもりですけど」
「俺は別にアーサー様は……」
突然出てきた名前に、誤魔化そうとしたが意味はない。
「だってギルベルトさんの好きな人、アーサー様でしょ?」
「……ぐっ。レオン……お前、俺が好きだなんて趣味が悪いぞ」
アーサー様の件は認めずに話を進めた。
こんなおっさん相手に。きっとレオンなら。いや、レオンだけじゃない。アーサー様だって素敵な女性がいるはずなのに。
「ギルベルトさん、今それ言います? それに、俺の趣味は最高なんですよ」
ね? と言って、ベッドから降りたレオンが俺の服を集め始める。
「ギルベルトさん、どうしますか? このまま泊っても俺としては嬉しいですけど」
「悪いが帰る」
「分かりました」
それから互いに身体を拭いたあと、衣服を身に着けた。その頃には酔いも完璧に醒めていて、互いに冷静だった。俺の方は、自身の気持ちに気づいたこともあり変にドキドキとしている。
着替え終われば、すぐに来た道を辿って入り口のドアへ。当然ながら、月明りだけが明るい夜空が広がっていた。
「世話になった」
「良いんですよ。あんなギルベルトさんの姿を見られるのは、俺だけなんで。ああ、でもギルベルトさん」
「何だ?」
「俺、本当に諦めてないんで。じゃあ、行ってらっしゃい」
「レオン、有難う」
そうして俺は、レオンの頬に口づけた。柄にもないことをしていると思ったが、顔を離せばレオンが照れくさそうに笑っていたので良かったんだろう。
レオンの見送りを背に、俺は城へと戻る。頬に感じた風が冷たく感じたが、それよりも今すぐ俺はアーサー様に会いたかった。
******
更新しました。お気に入りほか有難うございます!
もうすぐ終わります(多分)明日の分が真っ白ですorz
あんなに自身の腹のナカを満たして欲しい。熱を注いで欲しい。そのくせ、好きな人は? と問われれば、良い年をしているくせに「分からない」なんて答える。ベッドの上で、裸のまま。今だって、恥を忍んで自身の部下に抱いて欲しいと頼んだくせに。脳裏にチラつき始めたアーサー様の存在が大きくなるばかり。俺に本当の子宮はなくとも、俺が本当に抱かれたいのは……────。
「レオン、すまない」
喉を出た声は、熱を冷ましたように落ち着いた声だった。
(ああ、俺は馬鹿だ)
(こんな時に、自身の気持ちを認めるなんて)
「ギルベルトさん?」
「すまない、レオン。俺は……っ」
「何だ。やっぱりいるんじゃないですか、好きな人」
俺の様子に、全てを悟った様子のレオン。
怒った表情ではなかったが、俺を安心させるように微笑んだ表情がどこか悲しそうだった。擦れていたペニスが離れ、レオンが俺の隣に倒れ込む。「あーあ」と言いながら、俺の髪を撫でてまた笑った。
「あーあ。せっかくギルベルトさんを抱けると思ったのに」
「悪い……」
「良いんですよ。俺も、嫌がるギルベルトさんを抱くような趣味は無いんで」
本当にどこまでも甘い男だ。そして俺は悪い男だ。
「でも、このくらいは許して下さいよ」
そう言って、またレオンが俺の頬に口づけた。柔らかな感触の後、耳元で小さく囁く。
「俺ね、ギルベルトさんのこと好きなんだよ」
「!?」
ハッとしてレオンを見れば、また笑っていた。
「まぁ、ギルベルトさんがアーサー様と何かあれば、すぐに攫うつもりですけど」
「俺は別にアーサー様は……」
突然出てきた名前に、誤魔化そうとしたが意味はない。
「だってギルベルトさんの好きな人、アーサー様でしょ?」
「……ぐっ。レオン……お前、俺が好きだなんて趣味が悪いぞ」
アーサー様の件は認めずに話を進めた。
こんなおっさん相手に。きっとレオンなら。いや、レオンだけじゃない。アーサー様だって素敵な女性がいるはずなのに。
「ギルベルトさん、今それ言います? それに、俺の趣味は最高なんですよ」
ね? と言って、ベッドから降りたレオンが俺の服を集め始める。
「ギルベルトさん、どうしますか? このまま泊っても俺としては嬉しいですけど」
「悪いが帰る」
「分かりました」
それから互いに身体を拭いたあと、衣服を身に着けた。その頃には酔いも完璧に醒めていて、互いに冷静だった。俺の方は、自身の気持ちに気づいたこともあり変にドキドキとしている。
着替え終われば、すぐに来た道を辿って入り口のドアへ。当然ながら、月明りだけが明るい夜空が広がっていた。
「世話になった」
「良いんですよ。あんなギルベルトさんの姿を見られるのは、俺だけなんで。ああ、でもギルベルトさん」
「何だ?」
「俺、本当に諦めてないんで。じゃあ、行ってらっしゃい」
「レオン、有難う」
そうして俺は、レオンの頬に口づけた。柄にもないことをしていると思ったが、顔を離せばレオンが照れくさそうに笑っていたので良かったんだろう。
レオンの見送りを背に、俺は城へと戻る。頬に感じた風が冷たく感じたが、それよりも今すぐ俺はアーサー様に会いたかった。
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