17 / 23
16】思い出したら熱かった
しおりを挟む
16】思い出したら熱かった
「最近、雨降らなくなったね」
「本当~。傘ってちょっと荷物になっちゃうからからね」
そんな会話をクラスの女子たちがしているのが、耳に入った。
確かに。最近は雨が降らない。あの名前を知らない女子に折りたたみ傘をあげたから、俺の荷物に折りたたみ傘は無い。買い直すかと思いつつも、この通り。最近は天気が良い日が続いていて、傘の出番はない。
(確かに。最近天気は安定してるなぁ)
「よし、じゃあ帰ろうか」
「帰りにちょっと本屋に寄りたいなぁ」
「いいよ! 私も何か雑誌見たいな」
会話をしていた女子が二人。楽しそうに鞄とリュックを背負って、俺の前を通り過ぎていく。それもそうだ。もう放課後なのだから。俺が席についたままだから、ふと足を止めて声をかけられた。
「あれ、葵君。帰らないの?」
「俺も、帰りたいんだけどね」
「ああ……! 察し」
「また春樹君が、一緒に帰りたいから待っててって言われたんでしょ」
理由は言わずとも、不在の春樹に察した女子。
「正解。先に帰ったら春樹が煩そうだから、待っとくよ。有難う」
「ははっ。春樹君、葵君のこと大好きだもんね。じゃあ、またね」
「また明日」
「うん、また明日」
二人を見送り、教室には俺と春樹の荷物だけ。しん……と静かになった教室で、不意に後ろの席を見た。春樹の席。よく俺の方を見て笑う、春樹の顔を思い出した。
(いつもは、あんな風なのに)
釣られるように思い出すのは、つい先日のこと。咄嗟に引き寄せられた肩に籠った力が、知ってはいるが、思いの外強く。
『葵。あんま離れたら濡れるだろ』
引き寄せられ、密着した身体。耳に響く声と、表情を見れば良い顔がまっすぐに俺を見ていたこと。それから…………──。
『でもさ。俺だったら、あの行動一つで葵のこと好きになっちゃうね。そういえば、葵は好きな人と進展あった?』
(好きになってくれるのかよ)
好きになってくれるのなら、購買に傘を買いに行くのを止めていれば。俺の折りたたみ傘に入って帰っていたら、春樹。俺のこと好きになってくれたのか?
「…………何考えてるんだろ、俺」
今度こそ、告白をOKしてきたらと不安になったからかもしれない。前を振りむき直し、そっと春樹に掴まれた肩に触れる。肌寒かった雨の中、密着した身体が熱かったことを思い出した。
「あつっ……」
そのまま、ふて寝をするように前に置いている荷物を枕代わりに顔を伏せる。もうこのまま春樹が戻ってくるまで寝てしまおう。告白から、いつ戻るんだろうと思いつつ。
(俺だって、ずっと前から春樹が好きだよ)
心の中でしか、出来ない告白をした。
*******
「最近、雨降らなくなったね」
「本当~。傘ってちょっと荷物になっちゃうからからね」
そんな会話をクラスの女子たちがしているのが、耳に入った。
確かに。最近は雨が降らない。あの名前を知らない女子に折りたたみ傘をあげたから、俺の荷物に折りたたみ傘は無い。買い直すかと思いつつも、この通り。最近は天気が良い日が続いていて、傘の出番はない。
(確かに。最近天気は安定してるなぁ)
「よし、じゃあ帰ろうか」
「帰りにちょっと本屋に寄りたいなぁ」
「いいよ! 私も何か雑誌見たいな」
会話をしていた女子が二人。楽しそうに鞄とリュックを背負って、俺の前を通り過ぎていく。それもそうだ。もう放課後なのだから。俺が席についたままだから、ふと足を止めて声をかけられた。
「あれ、葵君。帰らないの?」
「俺も、帰りたいんだけどね」
「ああ……! 察し」
「また春樹君が、一緒に帰りたいから待っててって言われたんでしょ」
理由は言わずとも、不在の春樹に察した女子。
「正解。先に帰ったら春樹が煩そうだから、待っとくよ。有難う」
「ははっ。春樹君、葵君のこと大好きだもんね。じゃあ、またね」
「また明日」
「うん、また明日」
二人を見送り、教室には俺と春樹の荷物だけ。しん……と静かになった教室で、不意に後ろの席を見た。春樹の席。よく俺の方を見て笑う、春樹の顔を思い出した。
(いつもは、あんな風なのに)
釣られるように思い出すのは、つい先日のこと。咄嗟に引き寄せられた肩に籠った力が、知ってはいるが、思いの外強く。
『葵。あんま離れたら濡れるだろ』
引き寄せられ、密着した身体。耳に響く声と、表情を見れば良い顔がまっすぐに俺を見ていたこと。それから…………──。
『でもさ。俺だったら、あの行動一つで葵のこと好きになっちゃうね。そういえば、葵は好きな人と進展あった?』
(好きになってくれるのかよ)
好きになってくれるのなら、購買に傘を買いに行くのを止めていれば。俺の折りたたみ傘に入って帰っていたら、春樹。俺のこと好きになってくれたのか?
「…………何考えてるんだろ、俺」
今度こそ、告白をOKしてきたらと不安になったからかもしれない。前を振りむき直し、そっと春樹に掴まれた肩に触れる。肌寒かった雨の中、密着した身体が熱かったことを思い出した。
「あつっ……」
そのまま、ふて寝をするように前に置いている荷物を枕代わりに顔を伏せる。もうこのまま春樹が戻ってくるまで寝てしまおう。告白から、いつ戻るんだろうと思いつつ。
(俺だって、ずっと前から春樹が好きだよ)
心の中でしか、出来ない告白をした。
*******
53
あなたにおすすめの小説
ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために
ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話
※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。
【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について
kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって……
※ムーンライトノベルズでも投稿しています
諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】
カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。
逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。
幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。
友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。
まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。
恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。
ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。
だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。
煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。
レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生
両片思いBL
《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作
※商業化予定なし(出版権は作者に帰属)
この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。
https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24
小石の恋
キザキ ケイ
BL
やや無口で平凡な男子高校生の律紀は、ひょんなことから学校一の有名人、天道 至先輩と知り合う。
助けてもらったお礼を言って、それで終わりのはずだったのに。
なぜか先輩は律紀にしつこく絡んできて、連れ回されて、平凡な日常がどんどん侵食されていく。
果たして律紀は逃げ切ることができるのか。
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
泣き虫で小柄だった幼馴染が、メンタルつよめの大型犬になっていた話。
雪 いつき
BL
凰太朗と理央は、家が隣同士の幼馴染だった。
二つ年下で小柄で泣き虫だった理央を、凰太朗は、本当の弟のように可愛がっていた。だが凰太朗が中学に上がった頃、理央は親の都合で引っ越してしまう。
それから五年が経った頃、理央から同じ高校に入学するという連絡を受ける。変わらず可愛い姿を想像していたものの、再会した理央は、モデルのように背の高いイケメンに成長していた。
「凰ちゃんのこと大好きな俺も、他の奴らはどうでもいい俺も、どっちも本当の俺だから」
人前でそんな発言をして爽やかに笑う。
発言はともかく、今も変わらず懐いてくれて嬉しい。そのはずなのに、昔とは違う成長した理央に、だんだんとドキドキし始めて……。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
失恋したのに離してくれないから友達卒業式をすることになった人たちの話
雷尾
BL
攻のトラウマ描写あります。高校生たちのお話。
主人公(受)
園山 翔(そのやまかける)
攻
城島 涼(きじまりょう)
攻の恋人
高梨 詩(たかなしうた)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる