【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華

文字の大きさ
22 / 35

20】先客がいなくなったあと、ふと。②

しおりを挟む
20】先客がいなくなったあと、ふと。②

 今日も訪れた海野食堂で、店長の海野さんと二人だけ。砕けた口調で、友達として話をしていると、ふと昼に会社で話していた話題を思い出した。

(海野さんに恋人って……)

どうして気になるんだろう? だとか。同時に思い出したチクリとした痛みが分からないまま。それから、多分いるよなと同じことを思う。
今の会話の流れなら聞けるかもと思っていると、俺の口はゆっくりと動いていた。

「あの」

「うん?」

「海野さんて、か……彼女さんとか……いるの……?」

ドキドキドキ。

(あれ、何だ? 何で俺、ドキドキしてんだ? ああそっか、聞くことに緊張してるのか)

突然襲った胸のドキドキを、冷静に分析する。そんな分析をする俺に対して、海野さんの答えは少し意地悪なものだった。

「水野さんは? 俺に彼女がいたら嬉しい?」

「え?」

何で逆に俺に聞くんだ?

「何で俺に聞くの!? 海野さんのことだよ!?」

ツッコミを入れるように驚いた勢いで返せば、海野さんがチェッと唇を尖らせた。案外と子供っぽいところもあるのかもしれない。

「俺も子供舌だけど、海野さんも子供っぽいとこある?」

「気のせいだよ」

いや、これは子供っぽい。

「で? ねぇ、水野さんは俺に彼女がいたらどう?」

「いや。イケメンだし、いるんだろうなって思ってるけど……」

いたら何だか嫌だなと思ったのは、口にしなかった。

「正解は……」

じっ……と海野さんが俺と視線を合わせた。心なしか、クイズ番組の正解を待つ緊張感を味わう。

(正解は、一体どっちなんだ!? いる!? いない!?)

「俺は彼女が……い」

「い?」

「いません」

「やった~!」

しまった。あんなに口に出すのを我慢したのに、正解が嬉しくて思わず「やった~!」とはしゃいでしまった。

「水野さん、俺に彼女がいないと嬉しいんだ?」

「あ、いや! そういうわえけじゃないんだけど。でも本当に意外だな」

「俺は答えたんだから、今度は水野さんの番だよ。水野さんは? 彼女さんとかいるの?」

ねぇ、と弁当をズラし。海野さんが、カウンターから前のめりになって聞いた。

「水野さん、教えてよ」

「ええ~……っ」

「最初に聞いたのは水野さんだよ」

「海野さんは、俺に彼女いるかどうか気になるの?」

「うん、気になるよ」

一瞬、その眼差しが違っていてゴクリと静かに生唾を飲んだ。

「俺も彼女はいないよ。何なら、今まで恋人いたことないし」

「そうなの? 水野さんこそモテそうなのに。でも同じだね」

「何が?」

「俺も誰かと付き合ったことないから」

「え!? 本当!?」

「本当だよ。告白は結構されたけど、好きってのがイマイチ分からなくて。中途半端に付き合うのも相手に失礼だよなって思って、付き合ったことないんだ」

「海野さんも? 俺もさ、好きってのが良く分からなくて。周囲に女性が多いんだけど、皆恋人が欲しいて話してて。今日もその話でさ……って、結構告白されてるんじゃん!」

「はは」

眼差しは元に戻り。チクショ~! とまた冗談交じりに言いながら、海野さんが俺と同じなところがあることに親近感が湧いた。

******
イイネほか有難うございます
一部修正しました
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

ギャルゲー主人公に狙われてます

一寸光陰
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。 自分の役割は主人公の親友ポジ ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、

初恋ミントラヴァーズ

卯藤ローレン
BL
私立の中高一貫校に通う八坂シオンは、乗り物酔いの激しい体質だ。 飛行機もバスも船も人力車もダメ、時々通学で使う電車でも酔う。 ある朝、学校の最寄り駅でしゃがみこんでいた彼は金髪の男子生徒に助けられる。 眼鏡をぶん投げていたため気がつかなかったし何なら存在自体も知らなかったのだが、それは学校一モテる男子、上森藍央だった(らしい)。 知り合いになれば不思議なもので、それまで面識がなかったことが嘘のように急速に距離を縮めるふたり。 藍央の優しいところに惹かれるシオンだけれど、優しいからこそその本心が掴みきれなくて。 でも想いは勝手に加速して……。 彩り豊かな学校生活と夏休みのイベントを通して、恋心は芽生え、弾んで、時にじれる。 果たしてふたりは、恋人になれるのか――? /金髪顔整い×黒髪元気時々病弱/ じれたり悩んだりもするけれど、王道満載のウキウキハッピハッピハッピーBLです。 集まると『動物園』と称されるハイテンションな友人たちも登場して、基本騒がしい。 ◆毎日2回更新。11時と20時◆

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

悪役Ωは高嶺に咲く

菫城 珪
BL
溺愛α×悪役Ωの創作BL短編です。1話読切。 ※8/10 本編の後に弟ルネとアルフォンソの攻防の話を追加しました。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい

夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが…… ◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。 ◆お友達の花々緒(https://x.com/cacaotic)さんが、表紙絵描いて下さりました。可愛いニャリスと、悩ましげなラクロア様。 ◆これもいつか続きを書きたいです、猫の日にちょっとだけ続きを書いたのだけど、また直して投稿します。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

処理中です...