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20】先客がいなくなったあと、ふと。②
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20】先客がいなくなったあと、ふと。②
今日も訪れた海野食堂で、店長の海野さんと二人だけ。砕けた口調で、友達として話をしていると、ふと昼に会社で話していた話題を思い出した。
(海野さんに恋人って……)
どうして気になるんだろう? だとか。同時に思い出したチクリとした痛みが分からないまま。それから、多分いるよなと同じことを思う。
今の会話の流れなら聞けるかもと思っていると、俺の口はゆっくりと動いていた。
「あの」
「うん?」
「海野さんて、か……彼女さんとか……いるの……?」
ドキドキドキ。
(あれ、何だ? 何で俺、ドキドキしてんだ? ああそっか、聞くことに緊張してるのか)
突然襲った胸のドキドキを、冷静に分析する。そんな分析をする俺に対して、海野さんの答えは少し意地悪なものだった。
「水野さんは? 俺に彼女がいたら嬉しい?」
「え?」
何で逆に俺に聞くんだ?
「何で俺に聞くの!? 海野さんのことだよ!?」
ツッコミを入れるように驚いた勢いで返せば、海野さんがチェッと唇を尖らせた。案外と子供っぽいところもあるのかもしれない。
「俺も子供舌だけど、海野さんも子供っぽいとこある?」
「気のせいだよ」
いや、これは子供っぽい。
「で? ねぇ、水野さんは俺に彼女がいたらどう?」
「いや。イケメンだし、いるんだろうなって思ってるけど……」
いたら何だか嫌だなと思ったのは、口にしなかった。
「正解は……」
じっ……と海野さんが俺と視線を合わせた。心なしか、クイズ番組の正解を待つ緊張感を味わう。
(正解は、一体どっちなんだ!? いる!? いない!?)
「俺は彼女が……い」
「い?」
「いません」
「やった~!」
しまった。あんなに口に出すのを我慢したのに、正解が嬉しくて思わず「やった~!」とはしゃいでしまった。
「水野さん、俺に彼女がいないと嬉しいんだ?」
「あ、いや! そういうわえけじゃないんだけど。でも本当に意外だな」
「俺は答えたんだから、今度は水野さんの番だよ。水野さんは? 彼女さんとかいるの?」
ねぇ、と弁当をズラし。海野さんが、カウンターから前のめりになって聞いた。
「水野さん、教えてよ」
「ええ~……っ」
「最初に聞いたのは水野さんだよ」
「海野さんは、俺に彼女いるかどうか気になるの?」
「うん、気になるよ」
一瞬、その眼差しが違っていてゴクリと静かに生唾を飲んだ。
「俺も彼女はいないよ。何なら、今まで恋人いたことないし」
「そうなの? 水野さんこそモテそうなのに。でも同じだね」
「何が?」
「俺も誰かと付き合ったことないから」
「え!? 本当!?」
「本当だよ。告白は結構されたけど、好きってのがイマイチ分からなくて。中途半端に付き合うのも相手に失礼だよなって思って、付き合ったことないんだ」
「海野さんも? 俺もさ、好きってのが良く分からなくて。周囲に女性が多いんだけど、皆恋人が欲しいて話してて。今日もその話でさ……って、結構告白されてるんじゃん!」
「はは」
眼差しは元に戻り。チクショ~! とまた冗談交じりに言いながら、海野さんが俺と同じなところがあることに親近感が湧いた。
******
イイネほか有難うございます
一部修正しました
今日も訪れた海野食堂で、店長の海野さんと二人だけ。砕けた口調で、友達として話をしていると、ふと昼に会社で話していた話題を思い出した。
(海野さんに恋人って……)
どうして気になるんだろう? だとか。同時に思い出したチクリとした痛みが分からないまま。それから、多分いるよなと同じことを思う。
今の会話の流れなら聞けるかもと思っていると、俺の口はゆっくりと動いていた。
「あの」
「うん?」
「海野さんて、か……彼女さんとか……いるの……?」
ドキドキドキ。
(あれ、何だ? 何で俺、ドキドキしてんだ? ああそっか、聞くことに緊張してるのか)
突然襲った胸のドキドキを、冷静に分析する。そんな分析をする俺に対して、海野さんの答えは少し意地悪なものだった。
「水野さんは? 俺に彼女がいたら嬉しい?」
「え?」
何で逆に俺に聞くんだ?
「何で俺に聞くの!? 海野さんのことだよ!?」
ツッコミを入れるように驚いた勢いで返せば、海野さんがチェッと唇を尖らせた。案外と子供っぽいところもあるのかもしれない。
「俺も子供舌だけど、海野さんも子供っぽいとこある?」
「気のせいだよ」
いや、これは子供っぽい。
「で? ねぇ、水野さんは俺に彼女がいたらどう?」
「いや。イケメンだし、いるんだろうなって思ってるけど……」
いたら何だか嫌だなと思ったのは、口にしなかった。
「正解は……」
じっ……と海野さんが俺と視線を合わせた。心なしか、クイズ番組の正解を待つ緊張感を味わう。
(正解は、一体どっちなんだ!? いる!? いない!?)
「俺は彼女が……い」
「い?」
「いません」
「やった~!」
しまった。あんなに口に出すのを我慢したのに、正解が嬉しくて思わず「やった~!」とはしゃいでしまった。
「水野さん、俺に彼女がいないと嬉しいんだ?」
「あ、いや! そういうわえけじゃないんだけど。でも本当に意外だな」
「俺は答えたんだから、今度は水野さんの番だよ。水野さんは? 彼女さんとかいるの?」
ねぇ、と弁当をズラし。海野さんが、カウンターから前のめりになって聞いた。
「水野さん、教えてよ」
「ええ~……っ」
「最初に聞いたのは水野さんだよ」
「海野さんは、俺に彼女いるかどうか気になるの?」
「うん、気になるよ」
一瞬、その眼差しが違っていてゴクリと静かに生唾を飲んだ。
「俺も彼女はいないよ。何なら、今まで恋人いたことないし」
「そうなの? 水野さんこそモテそうなのに。でも同じだね」
「何が?」
「俺も誰かと付き合ったことないから」
「え!? 本当!?」
「本当だよ。告白は結構されたけど、好きってのがイマイチ分からなくて。中途半端に付き合うのも相手に失礼だよなって思って、付き合ったことないんだ」
「海野さんも? 俺もさ、好きってのが良く分からなくて。周囲に女性が多いんだけど、皆恋人が欲しいて話してて。今日もその話でさ……って、結構告白されてるんじゃん!」
「はは」
眼差しは元に戻り。チクショ~! とまた冗談交じりに言いながら、海野さんが俺と同じなところがあることに親近感が湧いた。
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イイネほか有難うございます
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