【完結・BL】12年前の教え子が、僕に交際を申し込んできたのですが!?【年下×年上】

彩華

文字の大きさ
37 / 39

【おまけ】初めて恋人が家に来ることになりまして

しおりを挟む
【おまけ】初めて恋人が家に来ることになりまして

 「先生。俺、先生の家に行きたいんだけど」

「家?」

「うん、先生の家」

昔は僕を見上げていた、元教え子。それが、今となっては僕の恋人になった子ども。いや、彼が僕と視線を合わせながら、言った。

「え……? ええっ……!?」

(家に、行きたい……!?)

どうにかこうにか、僕自身の気持ちを認め。最後は僕の方から告白したのは、記憶に新しい。めでたく? 久保君は希望校に合格し、大学生になり。僕はいえば、勤続年数が増えついでにまた年を取る以外は、特に変わらない日々を送っていた。

今は久保君が大学入学前の春休みで、よく園に顔を出してくれる。子供たちも、お兄さんと遊ぶのは楽しいと懐いているし、ゆりちゃんは「私が最初に先輩と仲良くなったんだから!」とマウントを取っていたりする。

そんな賑やかな時間も過ぎ、今日もまた教室に二人きり。
終わることのない掲示物の作成や、部屋の片づけをしていると「先生」と久保君が呼んだあと、家に行きたいと言った。

「駄目だったら良いんだけど、俺たち付き合ってるワケだし……デートするには場所を選ぶし? かといって、俺の家に先生を呼ぶのはって思って。俺が一人暮らしをしたら、先生を呼ぶけど、今はまだ出来ないから」

「久保君……」

「先生は、俺と一緒にいたくない?」

「久保君と一緒に……いたい……」

恋って凄い。人をこんなに変えちゃうなんて。
自分のことながら、口を出た言葉に驚いた。以前の僕だったら、こんなに素直に気持ちを伝えられただろうか? 僕の言葉に、満面の笑みを久保君が浮かべるものだから、絆されてしまう。もっと嬉しそうな顔が見たいと思うし、一緒にいたいと。好きだと思う。

「先生とお家デートってやつですね。楽しみだなぁ。いつ先生の家に行ってもいいですか?」

「今週の土曜日とかはどう?」

「やった!」

おじさん相手に、お家デートだなんてと思ったが誰にも見られないんだ。なら楽しんだっていいんだろう。幾分、恋愛については前向きに考えられるようになった僕は、二つ返事で久保君に答えた。

「駅で待ち合わせでいいかな?」

「勿論です! すっげぇ嬉しいです!」

「大袈裟だよ」

「だって、ずっと好きな人の家に行くんですよ? 嬉しいに決まってるじゃないですか」

「俺、好きな映画のDVDとか持って行きますね」

「うん。僕も楽しみにしてるね」

少し照れながら、久保君が立ち上がる。「じゃあ!」と元気な声で振り返り、「先生、またね!」と帰って行った。
暫く会えない時間があっただけに、彼の言葉が「またね」と再び会う機会がある可能性を秘めているのが嬉しい。

「……っ! いけない。僕も早く帰らなきゃ!」

なんて。
浮き足だって軽い足取りで、僕は家へと帰って行った。帰ってすぐに、始めたのは掃除の段取り。特に散らかっていないから焦る必要はないが、少しは綺麗にしておきたい。カレンダーに簡単にすることを書き込んで、僕の一日は終わった。

「お家デートかぁ……」

カレンダーに、うっかり掃除の書き込みの他に「お家デート」なんて文字まで書いてしまったのは、数日前のことだった。

*******
更新しました!
感想コメントが嬉しかったので、そっと短いですがおまけ程度に。コメント有難うございます(^^)
ちょこっと間があくかもしれませんが、家で緩く映画が見る程度の予定です。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

Sランク冒険者クロードは吸血鬼に愛される

あさざきゆずき
BL
ダンジョンで僕は死にかけていた。傷口から大量に出血していて、もう助かりそうにない。そんなとき、人間とは思えないほど美しくて強い男性が現れた。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

なぜかピアス男子に溺愛される話

光野凜
BL
夏希はある夜、ピアスバチバチのダウナー系、零と出会うが、翌日クラスに転校してきたのはピアスを外した優しい彼――なんと同一人物だった! 「夏希、俺のこと好きになってよ――」 突然のキスと真剣な告白に、夏希の胸は熱く乱れる。けれど、素直になれない自分に戸惑い、零のギャップに振り回される日々。 ピュア×ギャップにきゅんが止まらない、ドキドキ青春BL!

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

三ヶ月だけの恋人

perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。 殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。 しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。 罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。 それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

処理中です...