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【おまけ】初めて恋人が家に来ることになりまして
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【おまけ】初めて恋人が家に来ることになりまして
「先生。俺、先生の家に行きたいんだけど」
「家?」
「うん、先生の家」
昔は僕を見上げていた、元教え子。それが、今となっては僕の恋人になった子ども。いや、彼が僕と視線を合わせながら、言った。
「え……? ええっ……!?」
(家に、行きたい……!?)
どうにかこうにか、僕自身の気持ちを認め。最後は僕の方から告白したのは、記憶に新しい。めでたく? 久保君は希望校に合格し、大学生になり。僕はいえば、勤続年数が増えついでにまた年を取る以外は、特に変わらない日々を送っていた。
今は久保君が大学入学前の春休みで、よく園に顔を出してくれる。子供たちも、お兄さんと遊ぶのは楽しいと懐いているし、ゆりちゃんは「私が最初に先輩と仲良くなったんだから!」とマウントを取っていたりする。
そんな賑やかな時間も過ぎ、今日もまた教室に二人きり。
終わることのない掲示物の作成や、部屋の片づけをしていると「先生」と久保君が呼んだあと、家に行きたいと言った。
「駄目だったら良いんだけど、俺たち付き合ってるワケだし……デートするには場所を選ぶし? かといって、俺の家に先生を呼ぶのはって思って。俺が一人暮らしをしたら、先生を呼ぶけど、今はまだ出来ないから」
「久保君……」
「先生は、俺と一緒にいたくない?」
「久保君と一緒に……いたい……」
恋って凄い。人をこんなに変えちゃうなんて。
自分のことながら、口を出た言葉に驚いた。以前の僕だったら、こんなに素直に気持ちを伝えられただろうか? 僕の言葉に、満面の笑みを久保君が浮かべるものだから、絆されてしまう。もっと嬉しそうな顔が見たいと思うし、一緒にいたいと。好きだと思う。
「先生とお家デートってやつですね。楽しみだなぁ。いつ先生の家に行ってもいいですか?」
「今週の土曜日とかはどう?」
「やった!」
おじさん相手に、お家デートだなんてと思ったが誰にも見られないんだ。なら楽しんだっていいんだろう。幾分、恋愛については前向きに考えられるようになった僕は、二つ返事で久保君に答えた。
「駅で待ち合わせでいいかな?」
「勿論です! すっげぇ嬉しいです!」
「大袈裟だよ」
「だって、ずっと好きな人の家に行くんですよ? 嬉しいに決まってるじゃないですか」
「俺、好きな映画のDVDとか持って行きますね」
「うん。僕も楽しみにしてるね」
少し照れながら、久保君が立ち上がる。「じゃあ!」と元気な声で振り返り、「先生、またね!」と帰って行った。
暫く会えない時間があっただけに、彼の言葉が「またね」と再び会う機会がある可能性を秘めているのが嬉しい。
「……っ! いけない。僕も早く帰らなきゃ!」
なんて。
浮き足だって軽い足取りで、僕は家へと帰って行った。帰ってすぐに、始めたのは掃除の段取り。特に散らかっていないから焦る必要はないが、少しは綺麗にしておきたい。カレンダーに簡単にすることを書き込んで、僕の一日は終わった。
「お家デートかぁ……」
カレンダーに、うっかり掃除の書き込みの他に「お家デート」なんて文字まで書いてしまったのは、数日前のことだった。
*******
更新しました!
感想コメントが嬉しかったので、そっと短いですがおまけ程度に。コメント有難うございます(^^)
ちょこっと間があくかもしれませんが、家で緩く映画が見る程度の予定です。
「先生。俺、先生の家に行きたいんだけど」
「家?」
「うん、先生の家」
昔は僕を見上げていた、元教え子。それが、今となっては僕の恋人になった子ども。いや、彼が僕と視線を合わせながら、言った。
「え……? ええっ……!?」
(家に、行きたい……!?)
どうにかこうにか、僕自身の気持ちを認め。最後は僕の方から告白したのは、記憶に新しい。めでたく? 久保君は希望校に合格し、大学生になり。僕はいえば、勤続年数が増えついでにまた年を取る以外は、特に変わらない日々を送っていた。
今は久保君が大学入学前の春休みで、よく園に顔を出してくれる。子供たちも、お兄さんと遊ぶのは楽しいと懐いているし、ゆりちゃんは「私が最初に先輩と仲良くなったんだから!」とマウントを取っていたりする。
そんな賑やかな時間も過ぎ、今日もまた教室に二人きり。
終わることのない掲示物の作成や、部屋の片づけをしていると「先生」と久保君が呼んだあと、家に行きたいと言った。
「駄目だったら良いんだけど、俺たち付き合ってるワケだし……デートするには場所を選ぶし? かといって、俺の家に先生を呼ぶのはって思って。俺が一人暮らしをしたら、先生を呼ぶけど、今はまだ出来ないから」
「久保君……」
「先生は、俺と一緒にいたくない?」
「久保君と一緒に……いたい……」
恋って凄い。人をこんなに変えちゃうなんて。
自分のことながら、口を出た言葉に驚いた。以前の僕だったら、こんなに素直に気持ちを伝えられただろうか? 僕の言葉に、満面の笑みを久保君が浮かべるものだから、絆されてしまう。もっと嬉しそうな顔が見たいと思うし、一緒にいたいと。好きだと思う。
「先生とお家デートってやつですね。楽しみだなぁ。いつ先生の家に行ってもいいですか?」
「今週の土曜日とかはどう?」
「やった!」
おじさん相手に、お家デートだなんてと思ったが誰にも見られないんだ。なら楽しんだっていいんだろう。幾分、恋愛については前向きに考えられるようになった僕は、二つ返事で久保君に答えた。
「駅で待ち合わせでいいかな?」
「勿論です! すっげぇ嬉しいです!」
「大袈裟だよ」
「だって、ずっと好きな人の家に行くんですよ? 嬉しいに決まってるじゃないですか」
「俺、好きな映画のDVDとか持って行きますね」
「うん。僕も楽しみにしてるね」
少し照れながら、久保君が立ち上がる。「じゃあ!」と元気な声で振り返り、「先生、またね!」と帰って行った。
暫く会えない時間があっただけに、彼の言葉が「またね」と再び会う機会がある可能性を秘めているのが嬉しい。
「……っ! いけない。僕も早く帰らなきゃ!」
なんて。
浮き足だって軽い足取りで、僕は家へと帰って行った。帰ってすぐに、始めたのは掃除の段取り。特に散らかっていないから焦る必要はないが、少しは綺麗にしておきたい。カレンダーに簡単にすることを書き込んで、僕の一日は終わった。
「お家デートかぁ……」
カレンダーに、うっかり掃除の書き込みの他に「お家デート」なんて文字まで書いてしまったのは、数日前のことだった。
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感想コメントが嬉しかったので、そっと短いですがおまけ程度に。コメント有難うございます(^^)
ちょこっと間があくかもしれませんが、家で緩く映画が見る程度の予定です。
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