【完結・BL】俺がナニが小さい悩みを伝えたら、幼馴染の王子が食い気味に協力すると言い出したんだが？（やめろ！）【王子×騎士団長】

35】初めてだよ

35】初めてだよ

　アーサーが触れるだけのキスじゃない。舌を俺の口内に押し込んで、口内を動き回った。舌先を絡め、水音が大きくなった頃。ようやく出て行ったかと思ったのに、未だにアーサーが気にしているのは、俺のキスの相手ばかり。誰かって誰だ。（相手はミカだが）
そもそも、俺に色恋の話は一つも立っていないだろうが。第一、俺は軽い男じゃない。誰彼かまわず手を出すなんて無いし、騎士団長としての仕事ばかりで、時間も余裕もないと伝えただろうに。

内心こんなに俺の口は饒舌なのに、現実の俺の身体は呼吸をするので精一杯。そんな俺と違って、アーサーは息一つ乱れていない。アーサーことキスだとか、こういうことが初めてじゃないだろ！　と思う。

「ギルベルト、教えて」

（まだキスのことを気にしているのか。こんなキス、誰ともしたことがないのに）

一体何に執着しているのか。

「……だろ」

「ギルベルト？」

「アーサー。お前こそ、キスとか初めてじゃないだろ」

どうだ。言ってやったぞ。俺に聞く前に、答えてみろ。
そんな思いを込めて、アーサーの瞳を見つめた。

フーッ……♡　フーッ……♡と俺の呼吸だけが荒い。先ほどのキスで濡れた口元を拭いながら、アーサーの出方を待った。アーサーの眼差しは、変わらず熱っぽい。男というより、雄の感じ。

ゾクゾクゾクッ♡　ドキドキ……♡♡

（止めろ。そんな目で俺を見るな）

（何だか変な気持ちになる）

「ギルベルトこそ。私が誰かと、こんなことをしているように思うのかい？」

「俺に同じことを聞いたのは、アーサーだろう？」

「そうだけど。私は、こういうキスを。誰かの唇にキスをするのは、ギルベルトが初めてだよ」

俺の下唇を優しく左右になぞりながら、まっすぐに俺と視線を合わせてアーサーが言った。

「私の初めては、今まで全部ギルベルトだ。きっと、これからも……。だから、唇のキスを誰かに奪われたのは、これからもずっと後悔するんだろうなぁ」

最後は独り言のようだった。

「意味が分からないんだが」

「ギルベルトって、本当にこういうことは疎いよね」

「どういう意味……だ、ぁ……♡」

すりっ……ちゅっ♡　ちゅぷっ……♡♡　くちゅ♡

またアーサーが俺の唇にキスをした。先ほどのように長くはないが、覚えた舌の位置を狙い、くちゅりと水音を立てる。

「私のことを意識して。主君だけじゃない。私はギルベルトのことが好きってことだよ」

「は……？」

（何だって……？　アーサーは、俺のことが好き……？？）

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