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■どうやら掴むつもりらしい③
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■どうやら掴むつもりらしい③
「悪い。申し出は嬉しいが、俺は水野に食べて欲しいから」
加藤先輩の手作りが食べたい話した女性に、そうキッパリと伝えたのは加藤先輩本人。オブラートに包むことも、やんわりと断ることもなく、食べて欲しい相手を伝える先輩に流石に話した本人が一瞬固まる。
「そっ……そうなんですね~!」
(うわぁあああああ……!)
俺がダメージを受けたわけじゃないが、言われた女性の気持ちを思えば、ドンマイと駆け寄りたくなった。それと同時に、俺だけという特別感に嬉しくなりながら。
「すみません、主任。そういえば、今日の予定なんですが……」
仕事の開始を知らせながら、人だかりの解消を試み。俺の周囲から計画通りというべきか、時間がきたのでというべきか。無事に人がいなくなった。
「先輩」
「何だ?」
「ちょっと、さっきのは流石にストレート過ぎますよ……」
「?」
何が? という表情のままの先輩。
(ああ、そういえば先輩。こういうところあったなぁ)
「水野。それよりも仕事するぞ」
「あ、はい」
俺と違って切り替えが早い先輩。そういうことで、俺たちは今日も仕事を始めた。
カチカチと右下の時間を示す数字と、先輩が「昼食にしよう」と声を今か今か気にしているあたり、俺も加藤先輩の手作りが気になってしかなかった。
******
****
**
10時。11時と時間は進み、小腹も軽く空き始める頃。
先輩が気になりつつも、ちゃんと電話に出たり作業をしたり。ちゃんと仕事もこなす俺。(本当に偉い)カタカタとキーボードが叩く音が響く中、やっと「その時」はやってきた。
「なぁ、水野」
カタッ……とキーボードの上にあった俺の指が、ピタリと止まる。
「そろそそ、昼食にしないか?」
いつもより少し早い時間。もしかしたら、人込み対策かもしれないと思った。
「喜んで!」
思いのほか、俺の返事も即答だった。喜んで! って何だ? と自分に心の中でツッコミを入れてしまった。お互い机を片付けて、移動する準備。俺はいつものように昼食の入ったバッグも準備して、加藤先輩の後に続いた。いつもの道のりなのに、席に着けば今日は加藤先輩の手作りが……! と思うと、早く見たいという気持ちもあってか、何だか道のりが長く感じる。やっと着いた時には、すぐにいつもの席に着いた。
「俺、お茶取って来ますね」
「頼む」
自分のバッグを置いて、飲み物を取りに行く。両手に多めにお茶をついで戻り、先輩の前に座った。黙ったままでいれば、先輩が思わず笑い声を漏らす。
「水野、俺の手作りを期待してくれてるのか?」
「だっ……! って、あんなにドヤ顔で言われれば、一体どんなだろうって期待しますよ」
「……」
急に黙り込む先輩。
「先輩、どうしたんですか?」
「水野……いきなりハードルを上げないでくれ……」
あんなにドヤ顏だったのに、急に弱気の先輩がまた不覚にも可愛く見えた。
■どうやら掴むつもりらしい③
******
次で終わります…!
お気に入り少し増えて嬉しいです(^^)有難うございます!
「悪い。申し出は嬉しいが、俺は水野に食べて欲しいから」
加藤先輩の手作りが食べたい話した女性に、そうキッパリと伝えたのは加藤先輩本人。オブラートに包むことも、やんわりと断ることもなく、食べて欲しい相手を伝える先輩に流石に話した本人が一瞬固まる。
「そっ……そうなんですね~!」
(うわぁあああああ……!)
俺がダメージを受けたわけじゃないが、言われた女性の気持ちを思えば、ドンマイと駆け寄りたくなった。それと同時に、俺だけという特別感に嬉しくなりながら。
「すみません、主任。そういえば、今日の予定なんですが……」
仕事の開始を知らせながら、人だかりの解消を試み。俺の周囲から計画通りというべきか、時間がきたのでというべきか。無事に人がいなくなった。
「先輩」
「何だ?」
「ちょっと、さっきのは流石にストレート過ぎますよ……」
「?」
何が? という表情のままの先輩。
(ああ、そういえば先輩。こういうところあったなぁ)
「水野。それよりも仕事するぞ」
「あ、はい」
俺と違って切り替えが早い先輩。そういうことで、俺たちは今日も仕事を始めた。
カチカチと右下の時間を示す数字と、先輩が「昼食にしよう」と声を今か今か気にしているあたり、俺も加藤先輩の手作りが気になってしかなかった。
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10時。11時と時間は進み、小腹も軽く空き始める頃。
先輩が気になりつつも、ちゃんと電話に出たり作業をしたり。ちゃんと仕事もこなす俺。(本当に偉い)カタカタとキーボードが叩く音が響く中、やっと「その時」はやってきた。
「なぁ、水野」
カタッ……とキーボードの上にあった俺の指が、ピタリと止まる。
「そろそそ、昼食にしないか?」
いつもより少し早い時間。もしかしたら、人込み対策かもしれないと思った。
「喜んで!」
思いのほか、俺の返事も即答だった。喜んで! って何だ? と自分に心の中でツッコミを入れてしまった。お互い机を片付けて、移動する準備。俺はいつものように昼食の入ったバッグも準備して、加藤先輩の後に続いた。いつもの道のりなのに、席に着けば今日は加藤先輩の手作りが……! と思うと、早く見たいという気持ちもあってか、何だか道のりが長く感じる。やっと着いた時には、すぐにいつもの席に着いた。
「俺、お茶取って来ますね」
「頼む」
自分のバッグを置いて、飲み物を取りに行く。両手に多めにお茶をついで戻り、先輩の前に座った。黙ったままでいれば、先輩が思わず笑い声を漏らす。
「水野、俺の手作りを期待してくれてるのか?」
「だっ……! って、あんなにドヤ顔で言われれば、一体どんなだろうって期待しますよ」
「……」
急に黙り込む先輩。
「先輩、どうしたんですか?」
「水野……いきなりハードルを上げないでくれ……」
あんなにドヤ顏だったのに、急に弱気の先輩がまた不覚にも可愛く見えた。
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次で終わります…!
お気に入り少し増えて嬉しいです(^^)有難うございます!
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