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■ふとした瞬間に、何かが崩れたりする■
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■ふとした瞬間に、何かが崩れたりする■
「ええ、そうですね。水野は可愛い後輩ですよね」
「お……っ、おお。イケメンじゃないか」
「せ……加藤主任……」
俺と田中さんが、昼食を取りながら世間話をしながら。もとい、加藤先輩の話をしていると本人が現れた。(噂をすれば影とは良く言ったものだと、心臓がヒュッと縮こまる感じがした)
別に悪い話をしていたわけじゃない。世間話程度。先輩に彼女が~という程度なので、もし聞かれていたら、素直に話の内容を伝える。それでも、先輩の聞こえた第一声は普段とどこか異なっていて、周囲にピリッとした空気が流れた。
「田中さん、いつも水野を可愛がってくれて有難うございます」
「いやいや、そんなことは。そういえば、トレーを持ってどうしたんだ? 昼食、今からか?」
「ええ。さっき戻って来たばかりで。下で山本さんに、水野は此処にお昼に来ていると聞いたので、是非一緒にと思って来たんですが……」
「そうか。俺は食べ終わったところで、今から出なきゃなんだ。どうだ? 水野と積る話でも」
「良いんですか?」
「勿論!」
「あ、ちょっ! 田中さん」
「水野はおにぎり残ってるだろ。俺は、この後外回りなんだよ……!」
「ズルイですよ、俺を残して行かないで下さい!!」
「…………」
「イケメンがいるだろうか。じゃあ、また今度な」
加藤先輩の雰囲気に気を遣ったのか、田中さんが急いで席を立って出て行った。残されたのは、俺と加藤先輩だけ。どうすることも出来ず、とりあえず「どうぞ」と先輩に座ることを促した。黙ったまま席に着いた先輩に、俺も残りのおにぎりを口へ運ぶ。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
(あー! もう、空気が重い!!)
無言のままは、食は進むが味がしない。こんな空気はまっぴらだと、俺はおにぎりの最後の一口を押し込んで「先輩」と声をかけた。
「先輩」
「なんだ?」
顔を上げた先輩は、うどんを食べている。
(先輩と、うどん……。ちょっとウケる)
「ふはっ……先輩と、うどん……」
そういえば、案外と先輩は定食とかも好きだった。一見ホテルのコース料理をイメージしがちだけれど、再開した後も一緒に初めて食べたのは定食だったっけ。俺が笑い声を漏らせあ、少しだけ空気が和らいだ。
「さっきはその……何だか空気を重くして悪かった」
「そうですよ、今度田中さんに何か美味しいものお土産に買って来て下さいね」
「ああ」
ズズッと、うどんを啜る先輩。
ラーメンも食べるのが早いが、うどんもあっという間に完食。「ごちそうさまでした」と、行儀よく手を合わせた後に小さな声で言った。
「俺、本当に水野のことになると余裕無いな」
この時。いつもなら、黙ったままでいるのに。聞こえないフリをしたり、知りませんとハネ返すところを、何を思ったが俺は返事をしていた。
「…………俺は、昔先輩のことになると余裕が無かったですよ」
(本当、昔ですけど)
その言葉に、先輩の顔色が変わる。テーブルの上に置いていた俺の手を覆うように重ねてきて、言葉を続けた。
「また、俺のことで余裕無くなれば良いのに」
「な……っ! そんなの……我儘過ぎますよ」
ギュッと先輩に握られた下にある手が、拳を作る。そのまま勢いよく引いて、手を離し立ち上った。
「俺も休憩上がります。このまま、外回り出るんで」
「水野」
「じゃあ、失礼します」
そのまま俺は、先輩を一人残して出て行った。
■ふとした瞬間に、何かが崩れたりする■
******
「ええ、そうですね。水野は可愛い後輩ですよね」
「お……っ、おお。イケメンじゃないか」
「せ……加藤主任……」
俺と田中さんが、昼食を取りながら世間話をしながら。もとい、加藤先輩の話をしていると本人が現れた。(噂をすれば影とは良く言ったものだと、心臓がヒュッと縮こまる感じがした)
別に悪い話をしていたわけじゃない。世間話程度。先輩に彼女が~という程度なので、もし聞かれていたら、素直に話の内容を伝える。それでも、先輩の聞こえた第一声は普段とどこか異なっていて、周囲にピリッとした空気が流れた。
「田中さん、いつも水野を可愛がってくれて有難うございます」
「いやいや、そんなことは。そういえば、トレーを持ってどうしたんだ? 昼食、今からか?」
「ええ。さっき戻って来たばかりで。下で山本さんに、水野は此処にお昼に来ていると聞いたので、是非一緒にと思って来たんですが……」
「そうか。俺は食べ終わったところで、今から出なきゃなんだ。どうだ? 水野と積る話でも」
「良いんですか?」
「勿論!」
「あ、ちょっ! 田中さん」
「水野はおにぎり残ってるだろ。俺は、この後外回りなんだよ……!」
「ズルイですよ、俺を残して行かないで下さい!!」
「…………」
「イケメンがいるだろうか。じゃあ、また今度な」
加藤先輩の雰囲気に気を遣ったのか、田中さんが急いで席を立って出て行った。残されたのは、俺と加藤先輩だけ。どうすることも出来ず、とりあえず「どうぞ」と先輩に座ることを促した。黙ったまま席に着いた先輩に、俺も残りのおにぎりを口へ運ぶ。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
(あー! もう、空気が重い!!)
無言のままは、食は進むが味がしない。こんな空気はまっぴらだと、俺はおにぎりの最後の一口を押し込んで「先輩」と声をかけた。
「先輩」
「なんだ?」
顔を上げた先輩は、うどんを食べている。
(先輩と、うどん……。ちょっとウケる)
「ふはっ……先輩と、うどん……」
そういえば、案外と先輩は定食とかも好きだった。一見ホテルのコース料理をイメージしがちだけれど、再開した後も一緒に初めて食べたのは定食だったっけ。俺が笑い声を漏らせあ、少しだけ空気が和らいだ。
「さっきはその……何だか空気を重くして悪かった」
「そうですよ、今度田中さんに何か美味しいものお土産に買って来て下さいね」
「ああ」
ズズッと、うどんを啜る先輩。
ラーメンも食べるのが早いが、うどんもあっという間に完食。「ごちそうさまでした」と、行儀よく手を合わせた後に小さな声で言った。
「俺、本当に水野のことになると余裕無いな」
この時。いつもなら、黙ったままでいるのに。聞こえないフリをしたり、知りませんとハネ返すところを、何を思ったが俺は返事をしていた。
「…………俺は、昔先輩のことになると余裕が無かったですよ」
(本当、昔ですけど)
その言葉に、先輩の顔色が変わる。テーブルの上に置いていた俺の手を覆うように重ねてきて、言葉を続けた。
「また、俺のことで余裕無くなれば良いのに」
「な……っ! そんなの……我儘過ぎますよ」
ギュッと先輩に握られた下にある手が、拳を作る。そのまま勢いよく引いて、手を離し立ち上った。
「俺も休憩上がります。このまま、外回り出るんで」
「水野」
「じゃあ、失礼します」
そのまま俺は、先輩を一人残して出て行った。
■ふとした瞬間に、何かが崩れたりする■
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