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第1話 可愛い後輩
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最近、変な後輩が入ってきた。マネージャーの二年生。別にそれ自体はいい、マネージャーがいるだけでかなり楽になる。問題はその後輩が妙に私に懐いていることだ。好かれて悪い気はしないものの、少し過剰な気がしないこともない。でも向けられた好意を、しかも何かをしたわけでもない後輩を避けるのは、なんというか、先輩として気が引ける。
そういうどっちつかずの心が今の状況を生んだのだと、少し後悔している。
「初めまして、譲島優子です」
「よろしく、私は仲川めぐみ」
最初は只の良い後輩だった。気が利いて、愛想がよくて、それを鼻にかけることもない。すぐにみんなの人気者になった。私もすぐに好きになったし、彼女もみんなのことが大好きだったらしい。今日日あまり見ないタイプの底抜けの善人だと思った。
いつも通りの部活が終わった後、私はじゃんけんに負け、残って掃除をしていて、彼女が手伝っていてくれていた。
「ありがとね、めぐみ」
「いえいえ!先輩に一人でやらせるわけにもいけませんから!」
屈託のない笑顔で掃除をテキパキと手伝い、予想よりだいぶ早めに終わった部屋で、私は彼女に告白された。
「先輩、好きなんです。後輩としてじゃなくて、私と、優子として好きになってください」
確か、そんな感じの告白。
「え、いや、でも、私女だから難しいかな」
確か、そんな風に断った。
そしてじゃあ、せめての頼みだというから二人で部屋飲みをしようとなった。女だからと油断した、という後悔はだいぶ遅かった。
「先輩・・・」
アルコールが回って、赤くなった顔が目の前にある。いつの間にか押し倒されて、少し暗くなった部屋の中でわかるほど、彼女の顔は赤かった。それが酒のせいか、照れかのせいはわからないけど。
「優子。今ならなかったことにする」
「そうですか・・・」
諦めてくれたのかと思った、でも。
油断した私の唇を彼女の唇が塞ぐ。強引に来たわりには、優しくて、軽い、心地いいキスだった。というか。
「んーっ」
上手い、びっくりするほどに。私だって生娘じゃない。キスの一つや二つ経験しているけど、もしかして私が下手なのだろうか。もしかして今までわかれた男たちにはそんなことを思われていたのだろうか。もしくは今までの男が下手なのか。
そんなことを考えてしまうほど、彼女のキスは上手くて、今までのキスがお遊びにしか思えないほどのキスだった。
別に舌を入れられたりしたわけじゃない。ただ触れ合うだけの、中学生みたいなキス。それが、びっくりするほど気持ち良くて。
口と口が混ざり合って、さっき食べたパスタとさっき飲んだカルーアの味がする。甘くて、酸っぱくて、よくわからない味。
「ゆうこ・・・」
カルーアしか飲んでないはずなのに、すごいアルコールが回っている気がして、なんだか視界がぼやける。
「先輩」
一回離れた口がまた近づく。止めなきゃいけないのに、上手く体が動かない。私は、別に彼女の好意に答える気はなくて、だから、ここで、突き放さないといけないのに。弱弱しい手は彼女に容易く絡めとられる。
私の手と彼女の手が絡まる。細くて、力を入れたら折れてしまいそうな華奢な指。陸上をしている内にいつの間にか太くなってしまった私とは大違いの可愛い指。顔も性格もいいのに、手も綺麗らしい。羨ましい。
「いいな・・・」
「何がですか?」
「可愛くて、性格もよくて、手も綺麗で」
「私と付き合ったら、全部、先輩のものですよ?」
それもいいかな、なんて。思わないこともないけれど。そんな内心は彼女に容易く読まれていたらしい。
「先輩・・・」
止まっていた唇がまた私と重なる。さっきのキスとは違う。ゆっくりと舌が入ってくるキス。絡み合う唾液が口の横から零れる。でも、そんなことすらどうでもいい程に今は彼女とのキスをもっとしていたい。
いつしか繋いでいた手は離れていて、彼女を抱きしめていた。両手に感じる鼓動が彼女も意外と緊張していることを伝えてくれる。よく聞けば、彼女のお世辞にも大きいとは言えない胸の向こうからも激しめの鼓動が伝わってくる。
これなら、私の方がまだ落ち着いている。なんだか可愛くなってきて、思わず頭を撫でる。なんだか不満そうな雰囲気が伝わってくる。
不満そうでも、こうやってキスしていればお互いに何も言えない。都合の悪いことも、耳ざわりのいい都合のいいことも、何も。
「「ぷはっ」」
ずいぶん長いキスの後、すごく久しぶりに酸素を吸った気がする頭で彼女のことを考える。
よく考えれば、別に彼女を拒絶したのだって、私が女と付き合ったことがないからというだけだし。悪意があるわけでも、別に何かの罰ゲームでしてるわけでもないのなら、受け入れてもいいのかも、しれない。
私を押し倒した相手にずいぶん甘いなとは思う、でもきっと全部お酒のせいだろう。
「付き合うかは少し考えてもいい?」
「なんで終わった気分なんですか?」
「え?」
「まだ夜は明けてないし、酔いだってさめてませんよ?」
彼女は、兎の皮を被った狼だったらしい。
そういうどっちつかずの心が今の状況を生んだのだと、少し後悔している。
「初めまして、譲島優子です」
「よろしく、私は仲川めぐみ」
最初は只の良い後輩だった。気が利いて、愛想がよくて、それを鼻にかけることもない。すぐにみんなの人気者になった。私もすぐに好きになったし、彼女もみんなのことが大好きだったらしい。今日日あまり見ないタイプの底抜けの善人だと思った。
いつも通りの部活が終わった後、私はじゃんけんに負け、残って掃除をしていて、彼女が手伝っていてくれていた。
「ありがとね、めぐみ」
「いえいえ!先輩に一人でやらせるわけにもいけませんから!」
屈託のない笑顔で掃除をテキパキと手伝い、予想よりだいぶ早めに終わった部屋で、私は彼女に告白された。
「先輩、好きなんです。後輩としてじゃなくて、私と、優子として好きになってください」
確か、そんな感じの告白。
「え、いや、でも、私女だから難しいかな」
確か、そんな風に断った。
そしてじゃあ、せめての頼みだというから二人で部屋飲みをしようとなった。女だからと油断した、という後悔はだいぶ遅かった。
「先輩・・・」
アルコールが回って、赤くなった顔が目の前にある。いつの間にか押し倒されて、少し暗くなった部屋の中でわかるほど、彼女の顔は赤かった。それが酒のせいか、照れかのせいはわからないけど。
「優子。今ならなかったことにする」
「そうですか・・・」
諦めてくれたのかと思った、でも。
油断した私の唇を彼女の唇が塞ぐ。強引に来たわりには、優しくて、軽い、心地いいキスだった。というか。
「んーっ」
上手い、びっくりするほどに。私だって生娘じゃない。キスの一つや二つ経験しているけど、もしかして私が下手なのだろうか。もしかして今までわかれた男たちにはそんなことを思われていたのだろうか。もしくは今までの男が下手なのか。
そんなことを考えてしまうほど、彼女のキスは上手くて、今までのキスがお遊びにしか思えないほどのキスだった。
別に舌を入れられたりしたわけじゃない。ただ触れ合うだけの、中学生みたいなキス。それが、びっくりするほど気持ち良くて。
口と口が混ざり合って、さっき食べたパスタとさっき飲んだカルーアの味がする。甘くて、酸っぱくて、よくわからない味。
「ゆうこ・・・」
カルーアしか飲んでないはずなのに、すごいアルコールが回っている気がして、なんだか視界がぼやける。
「先輩」
一回離れた口がまた近づく。止めなきゃいけないのに、上手く体が動かない。私は、別に彼女の好意に答える気はなくて、だから、ここで、突き放さないといけないのに。弱弱しい手は彼女に容易く絡めとられる。
私の手と彼女の手が絡まる。細くて、力を入れたら折れてしまいそうな華奢な指。陸上をしている内にいつの間にか太くなってしまった私とは大違いの可愛い指。顔も性格もいいのに、手も綺麗らしい。羨ましい。
「いいな・・・」
「何がですか?」
「可愛くて、性格もよくて、手も綺麗で」
「私と付き合ったら、全部、先輩のものですよ?」
それもいいかな、なんて。思わないこともないけれど。そんな内心は彼女に容易く読まれていたらしい。
「先輩・・・」
止まっていた唇がまた私と重なる。さっきのキスとは違う。ゆっくりと舌が入ってくるキス。絡み合う唾液が口の横から零れる。でも、そんなことすらどうでもいい程に今は彼女とのキスをもっとしていたい。
いつしか繋いでいた手は離れていて、彼女を抱きしめていた。両手に感じる鼓動が彼女も意外と緊張していることを伝えてくれる。よく聞けば、彼女のお世辞にも大きいとは言えない胸の向こうからも激しめの鼓動が伝わってくる。
これなら、私の方がまだ落ち着いている。なんだか可愛くなってきて、思わず頭を撫でる。なんだか不満そうな雰囲気が伝わってくる。
不満そうでも、こうやってキスしていればお互いに何も言えない。都合の悪いことも、耳ざわりのいい都合のいいことも、何も。
「「ぷはっ」」
ずいぶん長いキスの後、すごく久しぶりに酸素を吸った気がする頭で彼女のことを考える。
よく考えれば、別に彼女を拒絶したのだって、私が女と付き合ったことがないからというだけだし。悪意があるわけでも、別に何かの罰ゲームでしてるわけでもないのなら、受け入れてもいいのかも、しれない。
私を押し倒した相手にずいぶん甘いなとは思う、でもきっと全部お酒のせいだろう。
「付き合うかは少し考えてもいい?」
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「え?」
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彼女は、兎の皮を被った狼だったらしい。
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