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プロローグ
ゴミ山から
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「この、バッカヤローが!てめぇ何度いったらわかるんじゃい!!」
今日も日本唯一のゴミ処理場には罵声が響き渡る。
「まぁまぁ、八潮さん、落ち着いてください。こいつは先週入ったばっかやし、そもそも高校生のアルバイトです。そんなに怒らんでも
...」
頭のてっぺんがつるりんと光る大沢チーフが必死になってなだめる。
「うっせい!くそチーフ。おめぇに何がわかるって言うんだい。こいつはたしかにアルバイトのガキンチョ坊主や。せやけど金をあげてんだよ!?1人の従業員や!せやのにここでくせぇだのなんだの言いやがって、」
八潮の怒りは収まるどころかヒートアップしていた。
「坊主って言うんじゃねーよクソジジイ!ちょっとくせぇっていっただけじゃねーかよ、だいたいここのゴミが多すぎんのがわりぃんだよ。」
金髪でバカでかいピアスをした青年も負けじとどなる。
「じゃあやめろや!さっさとやめてママの足でもかじりながらいきちょれ。」
「うっせぇんだよ。さっさとくたばれ。老いぼれやろう!」
チーフは今にもなきそうになりながら必死の抵抗を続ける。
「おい」
低くてでかい声が一気に二人を沈めた。
3人ともピタッとときがとまっまようにかたまる。
「おまえら仕事はおわったんか?」
チーフは申し訳なさそうに頭をかく。
「ぶ、部長。すみません。実はまださっぱりおわっとないんです。」
ッチと、部長は舌をならした。そして二人を睨み付けた。
二人は気まずそうに下を向き地面を踏み鳴らした。
「てめぇら、ほんとに邪魔なクズだな。今度からは第26班にいけ。」
二人は突然の報告にとびたしそうなほど目を広げ部長を見上げた。
「いゃぁ、そりゃねぇよ部長。俺たち頑張ってきた第13版の仲間じゃねぇか。」
「ふざけんなよ!第26班ってくそめんどくさくて、くそ雑用多いってひょうばんじゃねぇか!そんなとこごめんだ。」
ポケットのタバコを取り出して部長は静かに口を開いた。
「俺にくちごたえしてどうやって生きていくんか?この今の日本で。それだけの金、家、居場所が、おめぇらにあんのか?あぁ?」
悲しそうな顔でチーフはぎゅっと帽子を深くかぶった。
眩しすぎるほどの青い空に雲だけが飛んでいた。
ベルをならすと事務所から若い女性のチーフがヒョコッと出てきた。
「あなたたちが八潮さんと三条くんね!私は第26班チーフの天津です!この仕事は6年目!年は27!よろしく!」
高すぎるテンションは暑い事務所で二人をやけにイラつかせた。
「自己しようかいはいいからさはやく説明してくんない?し、ご、と、」
三条の意地悪い言い方に八潮は眉間にシワをよせた。
「おっけーおっけー!じゃあ説明するね!この紙を見て!」
その紙には第26班の仕事の目標と内容がかかれていた。
二人はそれをじっと見つめた。
「おい。」
「なぁに?三条くん?」
「探し物の事をダイヤってゆーの?」
「そうよ!」
天津チーフは古ぼけたポストから一枚の紙切れを取り出した。
「今日は早速依頼人が来るの!二人も見学して!それで内容もよくわかるでしょ!」
三条はだるそーにうなづき八潮は冷たいお茶をのみほした。
しばらくすると20代くらいの若い女性が事務所にやって来た。
「こんにちは。ここで良かったかしら?」
「えっと、木村さんですか?」
彼女は小さく首をたてに動かした。さらっと揺れる髪からはここじゃ嗅げないような甘い臭いを漂わせていた。
「えっと探し物は指輪ですね!どのような指輪でしょうか?」
少し遠慮ぎみにしゃべりはじめる。(おそらく、いかついおっさんと金髪ピアスがいたせいであろう...)
「本当にきれいな...蝶々のついた指輪です。色はちょっぴりピンクで内側に愛結とかいてあります。」
「え!?結婚指輪おとしたの?!」
思わず三条は叫んでしまった。慌てて口を押さえる。しかし天津チーフは怒って、こら!とげんこつを飛ばした。
その様子を笑う八潮に三条はキレ腹パンした。
彼女はその様子を引きぎみにたちあがり、床に土下座した。
そのしぐさにあれほどうるさかった事務所にわずかな静寂が訪れた。
「私のせいですみません。そうです。結婚指輪をおとしてしまったんです。でも彼、優しい人だから気にすんなって...どうかお願いです!あの指輪を見つけてください!じゃないと私...」
「いいんですよ。木村さん!もう土下座をやめてください!謝るのは私たちです!私たちは依頼人のために探し物をするのが仕事です。任せてくださいね。」
三条も少し、頭を下げた。
八潮はじっと木村を見つめた。静かに礼を言う彼女だがその目はなにかもっと大きいものを抱えているかのように見えた。
一日目は結局見つからず明日に延期となった。
うなだれるように暑い太陽が沈むと、ゴミ処理場に夜がくる。
敷地の一角。ほんとに小さなスペースにアパートがあった。そこに三条と八潮も住んでいた。
敷地のなかなのでやはり少しは匂う。しかしお金は安くすみご飯も出るのでなんとなくみんな住み着いていた。(女性は匂いが気になるため全員自宅にすんでいる。)
「あぁー、めっちゃいいゆだーぁー」
共同風呂場の端じっこで三条は1人、足を伸ばす。
体からは何とも言えない匂いが漂い洗っても洗っても落ちない。
湯船に頭まで浸かる。後悔と息苦しさが胸をおおった。
やっぱこんな臭いとこやめときゃよかったなー。
そう、毎日考えてしまう。直したい癖のひとつである。
「おい!」
「うわぁぁぁ!ぁ!」
「坊主!生きてるんか?!」
八潮が入ってきた。共同だからやむを得ない。
「ビックリすんだろじじい!」
八潮が湯船に入るとたくさんの水が溢れ落ち辺りを湿らせていた。
「なぁ、」
八潮は三条の横に移動して話しかけた。
「なんだよ?」
「さっきの女性、なんか隠してるよな」
「なぜに?」
八潮は髭をポリポリかく。
「なんとなくなんだけどさ、なんか分かる。」
「意味わかんねえよ。」
「はぁ?!ガキの癖に年上に偉そうな口きくんじゃねぇ!」
三条はグッと足と拳に力を込めた。
「でもな、」
突然の八潮の珍しく弱気な顔に力が逃げる。
「あの人、訳有りな気がすんの。手、かしてやりてぇなぁって思っちまった。」
ザァァァァァ
八潮は湯船から上がった。
彼はそういう男だった。いつもはうざくて、めんどくさくて、やけに意地悪いやつなのにいざというときは絶対にほおっておかない。
一週間しか一緒にいない三条でも分かった。
小さなまどからはそっと月光が差し込んでいた。
しかしその形はぼやけてはっきりとしない。
三条はそっと湯船から上がった。
「あのクソジジい、手伝ってやるか。」
ボソッと月に向かって呟きながら。
今日も日本唯一のゴミ処理場には罵声が響き渡る。
「まぁまぁ、八潮さん、落ち着いてください。こいつは先週入ったばっかやし、そもそも高校生のアルバイトです。そんなに怒らんでも
...」
頭のてっぺんがつるりんと光る大沢チーフが必死になってなだめる。
「うっせい!くそチーフ。おめぇに何がわかるって言うんだい。こいつはたしかにアルバイトのガキンチョ坊主や。せやけど金をあげてんだよ!?1人の従業員や!せやのにここでくせぇだのなんだの言いやがって、」
八潮の怒りは収まるどころかヒートアップしていた。
「坊主って言うんじゃねーよクソジジイ!ちょっとくせぇっていっただけじゃねーかよ、だいたいここのゴミが多すぎんのがわりぃんだよ。」
金髪でバカでかいピアスをした青年も負けじとどなる。
「じゃあやめろや!さっさとやめてママの足でもかじりながらいきちょれ。」
「うっせぇんだよ。さっさとくたばれ。老いぼれやろう!」
チーフは今にもなきそうになりながら必死の抵抗を続ける。
「おい」
低くてでかい声が一気に二人を沈めた。
3人ともピタッとときがとまっまようにかたまる。
「おまえら仕事はおわったんか?」
チーフは申し訳なさそうに頭をかく。
「ぶ、部長。すみません。実はまださっぱりおわっとないんです。」
ッチと、部長は舌をならした。そして二人を睨み付けた。
二人は気まずそうに下を向き地面を踏み鳴らした。
「てめぇら、ほんとに邪魔なクズだな。今度からは第26班にいけ。」
二人は突然の報告にとびたしそうなほど目を広げ部長を見上げた。
「いゃぁ、そりゃねぇよ部長。俺たち頑張ってきた第13版の仲間じゃねぇか。」
「ふざけんなよ!第26班ってくそめんどくさくて、くそ雑用多いってひょうばんじゃねぇか!そんなとこごめんだ。」
ポケットのタバコを取り出して部長は静かに口を開いた。
「俺にくちごたえしてどうやって生きていくんか?この今の日本で。それだけの金、家、居場所が、おめぇらにあんのか?あぁ?」
悲しそうな顔でチーフはぎゅっと帽子を深くかぶった。
眩しすぎるほどの青い空に雲だけが飛んでいた。
ベルをならすと事務所から若い女性のチーフがヒョコッと出てきた。
「あなたたちが八潮さんと三条くんね!私は第26班チーフの天津です!この仕事は6年目!年は27!よろしく!」
高すぎるテンションは暑い事務所で二人をやけにイラつかせた。
「自己しようかいはいいからさはやく説明してくんない?し、ご、と、」
三条の意地悪い言い方に八潮は眉間にシワをよせた。
「おっけーおっけー!じゃあ説明するね!この紙を見て!」
その紙には第26班の仕事の目標と内容がかかれていた。
二人はそれをじっと見つめた。
「おい。」
「なぁに?三条くん?」
「探し物の事をダイヤってゆーの?」
「そうよ!」
天津チーフは古ぼけたポストから一枚の紙切れを取り出した。
「今日は早速依頼人が来るの!二人も見学して!それで内容もよくわかるでしょ!」
三条はだるそーにうなづき八潮は冷たいお茶をのみほした。
しばらくすると20代くらいの若い女性が事務所にやって来た。
「こんにちは。ここで良かったかしら?」
「えっと、木村さんですか?」
彼女は小さく首をたてに動かした。さらっと揺れる髪からはここじゃ嗅げないような甘い臭いを漂わせていた。
「えっと探し物は指輪ですね!どのような指輪でしょうか?」
少し遠慮ぎみにしゃべりはじめる。(おそらく、いかついおっさんと金髪ピアスがいたせいであろう...)
「本当にきれいな...蝶々のついた指輪です。色はちょっぴりピンクで内側に愛結とかいてあります。」
「え!?結婚指輪おとしたの?!」
思わず三条は叫んでしまった。慌てて口を押さえる。しかし天津チーフは怒って、こら!とげんこつを飛ばした。
その様子を笑う八潮に三条はキレ腹パンした。
彼女はその様子を引きぎみにたちあがり、床に土下座した。
そのしぐさにあれほどうるさかった事務所にわずかな静寂が訪れた。
「私のせいですみません。そうです。結婚指輪をおとしてしまったんです。でも彼、優しい人だから気にすんなって...どうかお願いです!あの指輪を見つけてください!じゃないと私...」
「いいんですよ。木村さん!もう土下座をやめてください!謝るのは私たちです!私たちは依頼人のために探し物をするのが仕事です。任せてくださいね。」
三条も少し、頭を下げた。
八潮はじっと木村を見つめた。静かに礼を言う彼女だがその目はなにかもっと大きいものを抱えているかのように見えた。
一日目は結局見つからず明日に延期となった。
うなだれるように暑い太陽が沈むと、ゴミ処理場に夜がくる。
敷地の一角。ほんとに小さなスペースにアパートがあった。そこに三条と八潮も住んでいた。
敷地のなかなのでやはり少しは匂う。しかしお金は安くすみご飯も出るのでなんとなくみんな住み着いていた。(女性は匂いが気になるため全員自宅にすんでいる。)
「あぁー、めっちゃいいゆだーぁー」
共同風呂場の端じっこで三条は1人、足を伸ばす。
体からは何とも言えない匂いが漂い洗っても洗っても落ちない。
湯船に頭まで浸かる。後悔と息苦しさが胸をおおった。
やっぱこんな臭いとこやめときゃよかったなー。
そう、毎日考えてしまう。直したい癖のひとつである。
「おい!」
「うわぁぁぁ!ぁ!」
「坊主!生きてるんか?!」
八潮が入ってきた。共同だからやむを得ない。
「ビックリすんだろじじい!」
八潮が湯船に入るとたくさんの水が溢れ落ち辺りを湿らせていた。
「なぁ、」
八潮は三条の横に移動して話しかけた。
「なんだよ?」
「さっきの女性、なんか隠してるよな」
「なぜに?」
八潮は髭をポリポリかく。
「なんとなくなんだけどさ、なんか分かる。」
「意味わかんねえよ。」
「はぁ?!ガキの癖に年上に偉そうな口きくんじゃねぇ!」
三条はグッと足と拳に力を込めた。
「でもな、」
突然の八潮の珍しく弱気な顔に力が逃げる。
「あの人、訳有りな気がすんの。手、かしてやりてぇなぁって思っちまった。」
ザァァァァァ
八潮は湯船から上がった。
彼はそういう男だった。いつもはうざくて、めんどくさくて、やけに意地悪いやつなのにいざというときは絶対にほおっておかない。
一週間しか一緒にいない三条でも分かった。
小さなまどからはそっと月光が差し込んでいた。
しかしその形はぼやけてはっきりとしない。
三条はそっと湯船から上がった。
「あのクソジジい、手伝ってやるか。」
ボソッと月に向かって呟きながら。
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