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米と麦

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14.遠足 サントミモザ(Ⅱ)

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 からくり時計を見終えると、クラリスの希望通り、次は街でお買い物という流れになった。

「思ったより本屋が少ないわね。」
「一応観光地ですし、わざわざここまで来て本を買う人は少ないんじゃないかしら?」
「はあ……そうですわね。カミラ様はどこか行きたいところありまして?私はあと文具屋、魔法具店、アクセサリーショップ、あと何かお土産用の食べ物屋さんに行きたいのですけれど。」
「希望多いわね!……いえ、わたくしは特に希望はないので、貴女についていくわ。」

 なんだかどんどんこの子のイメージが崩れていくのだけど……とひどく小さな声で独り言を呟いていたが、聞かなかったことにする。確かに、今までのクラリスはこんなアクティブなタイプではなかった。一花の記憶を得たことで、学生時代を懐かしむ気持ちが先走り、どこへ行ってもはしゃいでしまう。とはいえ、今までのクラリスではカミラと到底うまくやれなかっただろうから、ここは結果オーライと言っておこう。

 クラリスの希望に沿って店を回る。途中、何度か露店に寄り道をしかけたが、その度にカミラから「集合時間に間に合わなくなる」と制止された。自由時間はあと二時間ほどあるが、なにぶん行きたい場所も多いので、これでも足りないかもしれない。
 文具屋を終え、次は魔法具店に入る。魔法具とは、属性魔法や特殊魔法を付与された道具のことをいう。アクセサリーや小物が一般的であり、プレゼントなどに用いられることが多い。
 クラリスが指輪の棚に見入っていると、突然カミラに肩を掴まれた。何かと思い振り向くと、視線の先に、先ほど湖でクラリス達を庇ってくれた二人組がいる。そういえばあの二人、なんという名前だっただろうか。そんなことを考えていると、そのままカミラに手を引かれた。

「……え?あ、ローゼンヴァルド嬢!?それにクラリス様まで、ごきげんよう。」
「えっと、僕らに何か用かな…?」

 いきなり訪れたカミラ達に二人とも困惑している。クラリスもただ連れてこられただけなので返事に困ってしまう。

「ごきげんよう、ジョーンズ様にレイリー様。先程はお助けいただき本当にありがとうございました。あなた方のおかげでお叱りを受けずにすみましたわ。」

 皆の様子に構わず、カミラは毅然とした態度で礼を述べた。一拍遅れてクラリスも頭を下げる。あまりに突然の出来事に、礼を述べられた二人は目をぱちくりさせている。

「いやあ、驚いたなあ……あのローゼンヴァルド嬢からお礼……いや、それより僕たちの名前を覚えていたなんて…。」

 二人のうち背が高い方の男が驚きの言葉をこぼした。

「何を言っておりますの、わたくしだって人に感謝することくらい当然できますわ。それに、あなた方二人はいつも魔法学ので優秀な成績を修めているじゃない。パーシー=ジョーンズ様は、一発の魔法威力が非常に高いですわよね。わたくしの炎魔法も、一撃で仕留めろと言われたらあなたには負けてしまうわ。それにニック=レイリー様、貴方は広範囲に渡る水魔法に長けておりますわ。授業で校庭一面に雨を降らせたと聞いたときは、わたくし驚きましたもの。…………わたくし、ライバルと思った方のリサーチは欠かしませんの。」

 カミラが心外だとばかりに口を尖らせる。対照的にジョーンズとレイリーは心なしか嬉しそうだ。プライドの高いカミラに実力を認められていたことが光栄だったのだろう。

「そ、そんなふうに思ってたんだ……。あ、いや、僕達も二人の試合には色々勉強させてもらったからさ、さっきの件は全然気にしないでよ。」
「そうそう、本当にいいものを見せてもらって、こっちがお礼を言いたいくらいさ!」

 すっかり気を良くした二人に別れの挨拶を告げると、そのまま店を後にした。

(カミラ様、まさかここで好感度上げてくとは……無意識とはいえあざといわ……!!でもそういうのはエリオット皇子にするべきでしてよ…!!)

 クラリスも大概だが、カミラも今日はいつもと少し違う気がする。今まではもう少し冷たい印象だったのだが、なにかあったのだろうか。遠足ハイという可能性もあるし、単なる考え過ぎかもしれないが。

 それから二人はまた街を巡った。観光地なだけあって、お土産にちょうど良さそうな小物屋が結構多い。ふと、一際眼を惹いた店の前で足を止める。こぢんまりとしたその店のショーウィンドウには、可愛らしい髪飾りやアクセサリーが並んでいる。ハンドメイドだろうか、どれも少しいびつなところがあり、それ故に温かみを感じる。

「カミラ様、ここ見てもいいかしら?」
「ええ、かまいませんわ。」

 ドアを開けると、落ち着いたBGMといらっしゃいませという挨拶が迎えてくれた。店内には客が数人しかおらず、小さい店だがじっくり見て回れそうだ。ふと、一人見覚えのある後ろ姿を捉え思わず声を上げる。
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