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米と麦

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13.遠足 サントミモザ(Ⅰ)

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 しばらくして、サントミモザ行きを告げるベルが鳴った。生徒達は次々と馬車に乗り込む。クラリス達もその波にのった。車内に入る際に、運転手から少し遅めの昼食が配られた。どうやら丸パンのようだ。直前まで魔法で温めてくれていたのか、紙包みはじんわりと熱を帯びている。中を開けるとふわりとこうばしい香りが鼻腔をかすめた。思わず腹が小さく鳴る。

「髪がゴワゴワしますわ…」

 もぐもぐとパンを食べていると、未だに髪を気にしているカミラが小言をぼやいた。

「カミラ様ったらまだ言ってる。仕方ないじゃない、今日ももう後半戦ですし、あとちょっと我慢してくださいまし。それより早くパンを食べてしまわないと、冷めますわよ。」

「一体誰のせいだと…………はあ……まあそうね、いただくわ。」

 話してもしょうがないと分かったらしい、カミラはそこで話を切り上げた。

「ところで、ここからサントミモザまでってどれくらいかかるのかしら?」
「確か、すぐふもとにあるはずだからそうかからないはずよ。」

 その言葉通り、ものの十五分もするとサントミモザの城下町に到着した。閑静なレシーヌ湖とはうって変わり、そこは人々の活気で賑わう小さな街だった。観光客も多い為、そこかしこに店が立ち並んでいる。今度は修学旅行で行った京都みたいだな、と思った。一花の記憶を思い出し、クラリスの気持ちがまた高まる。

「まあ、素敵ですわ!最近遠出してなかったから、なんだかちょっとした旅行気分ね!どこへ行きましょう?やっぱり城跡は行ったほうがいいのかしら?でもあそこは少し離れてますのよね。時計台の方も気になるし、あとお買い物は絶対にしたいですわよね!ねえねえカミラ様、貴女はどこか行きたいところとかある?」

 くるりと振り向き、数歩後ろのカミラに問う。彼女は目を輝かせてはしゃぐクラリスに少したじろいだ。

「わ、わたくしはどこでもよろしくてよ……そうねえ、城跡よりは時計台の方がいいんじゃないかしら?あと十分で十五時になるから、ちょうどからくりが見れると思うわ。それに商店街もすぐそばですし、回りやすいでしょう?」
「そういえば確かここの時計台はからくり時計だったわよね!さすがカミラ様、名案だわ!よし、そうしましょう!では早速行きましてよ!」
「ちょ、ちょっと…!!」

 気後れしているカミラの手を引いて、駆け足気味で広場に向かう。せっかくいい時間に来たのだ。この目でしっかり拝まなければ。

 広場に着くと、同じく時計台を見に来た生徒達がちらほら集まっていた。その中にはフローラの姿もあった。どうやらマーゴットと行動を共にしているようだ。エリオットの姿は見当たらないので、とりあえず問題はないだろう。 
 また、攻略対象の一人、お色気担当のカーティスもここに来ていた。いつもなら取り巻きの女子を侍らしているのに今は珍しく一人である。

(どうやらカーティスルートの場合、ここでイベント発生みたいね。)

 見たところフローラからカーティスのところまでは結構な距離がある上、今はマーゴットもいる。二人を見ても、お互いにまるで関心もないようなので、おそらくイベントは発生しないだろう。カーティスルートのライバル、アンジェは安泰だなあと思いながら二人を眺めた。

「あ、来ますわよ。」

 カミラの言葉のすぐ後で、時計台の鐘が広場に鳴り響く。ゴーンと、きっかり3回鳴った後、可愛らしいメロディとともに時計のすぐ下が開き、中から数体のブリキ人形が現れた。どれも古いものだが、作りが凝っているせいか見すぼらしさはなく、むしろ風化により一層味のある様相に仕上がっている。それらはちょっとした寸劇をその場で披露した後、ゆっくりと時計の中へ戻っていった。

「す、すごいわカミラ様!あんな精巧なからくり時計初めて見ましたわ!ちょうど間に合って良かったですわね!」
「確かに、思っていたよりも壮大な作りだったわね。見れて良かったわ。」

 どうやらカミラも感嘆しているようだ。ここへ来たのは正解だった。生徒たちにも好評で、周りから小さな歓声が上がっている。さりげなくフローラの方を見ると、彼女もまた友達のマーゴットと嬉しそうにはしゃいでいた。

(マーゴット嬢はルーク=アルバーン攻略時のライバル嬢と踏んでいたのだけど、フローラ様とはうまくやってるのね。)

 おそらくルークルートも進展していないのだろう。春、クラスでつまはじきにされていたフローラに、最初に声をかけたのはマーゴットと聞く。ゲームプレイヤーでもない限り、あえてかけがえのない友人の想い人を横取りするという選択は、相当大胆な性格でなければ出来ないだろう。婚約者持ちの男に手を出すのもなかなかないないとは思うが。

(まあまだ六月だし、これからひっくり返る可能性もありますし、ね。)

 自分に火の粉が降りそそぐ可能性だっていくらでもあるのだと、クラリスは改めて自分を戒めた。
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