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アデライト 逆行復讐編
ソフィアの婚約破棄
しおりを挟むあれから『何事』もなく7年の月日が流れ、私は18歳となった。
マカロン家の評価、地位や名誉も回復をしていた。薬草事業や洋菓子店中心に事業を進めていくと成功したのよね。その成功への道を広げたのは、シリウス伯父様の仕事を少しずつ学び手伝ったジェイコブお兄様のおかげだと言われているのよね。
甘いお菓子の貴公子と呼ばれ、変わった趣味のジェイコブお兄様でも令嬢達は密かに慕っているとか‥‥。顔はとても良いものね。
「ソフィア大丈夫かい?!凄い熱だ!」
「‥ゲホゲホ‥み、みずぅ‥‥」
「ジェイコブお兄様、声が大きくて苛々しますわ。静かにしてちょうだい」
「うっ!そうだな、すまない」
あまり熱を出した事のないソフィアが風邪をひいて屋敷内は混乱していた。珍しい事もあるのね。私は黙ったままコップに薬草と水を入れて渡すと、ソフィアはゼェゼェしながら嬉しそうに飲んでいた。
なんだかその笑顔を見たら気分が悪くなったような気がするわね。
「ふふ。この部屋の空気は悪いし、私はうつされたくないから、もう寝るわ」
「えーと、うん、あのさ、アデライト‥‥いや、そんなに薬を大量に置かなくても。あ!やっぱり心配をしてーって痛い!!何故すぐに鞭で打つんだ!?」
アデライトが部屋へと去った姿をボーと熱にうなされながらも見つめていたソフィアは
「‥‥あぁ‥‥ファミ◯の新作スイーツ食べ損ねたぁ‥‥」
そう呟くソフィアに近くにいたジェイコブは首を傾げつつも冷たいタオルをソフィアのおでこにそっと置いて見守っていた。
私は鏡の前に座りメイドに髪を整えてもらいベッドへと寝た。
あれから、ルカには何か起きたわけでもない。彼の成長を近くで見る事ができた。私が18歳になり、私が知っていた小さな少年からルカは素敵な青年へと成長して満足だわ。
「ただ‥‥18歳は私が『醜くなった』年だわ‥‥断罪され拘束された年‥‥‥」
またあの時のように醜くい顔になるのは嫌だわ。美しくなかったら、ルカに嫌われてしまうもの。ルカは平民出身ながらも『天才』と呼ばれるほど注目が集まり貴族達が養子にと話を持ってきたけれどルカは断っていた。
ルチータ王子の側近として1番近しい者だと邪な者達もルカに近寄ってくる人々がいるのよね。
それに‥‥これまで何も起きなかったのが妙に怪しい。オスカー様も近寄ってこなくなったし‥‥。
朝になりフゥと溜息を出してベッドへと出ると、パタパタと廊下から走る音が聞こえドアをコンコンと叩いてからツインテールの小さな女の子が部屋へと入ってきた。
「アデライト姉さま!朝ごはんだよー!」
「‥‥アメリー‥誰の許可を得て私の部屋を勝手に入ってるのかしら?」
「へへへ。だってね、今日ね、ルチータ王子さまも朝一緒なんでしょ?ほら!見て!このワンピース!かわいいでしょ!メロメロなるよね!」
「‥ふふ。そうね、服は可愛いわ。服はね」
「がーん!」
私は五月蝿いアメリーと一緒に食卓へと向かった。彼女もやはり勉学の知識の呑み込みが早く、学者達も驚くほどルカ以上の天才ではとも言われているわね。
「シリウス伯父さまー!おはようございます!」
「可愛い我が家の天使。おはよう。よく眠れたか?」
「うん!あのね、にんじんのお化けと闘って勝ったお夢みたの。ジェイコブお兄さまもね、エプロン姿で戦ってたよ!」
「あはは!アメリーは可愛い上に勇敢なんだな」
ジェイコブお兄様はせっかく顔だけはよいのに、鼻の下を伸ばし残念な顔をしているわね。
アメリーはキョロキョロと見渡し、ソフィアを探していた。
「ソフィア姉さまは?風邪大丈夫なのかな?」
そう自分の皿にある人参サラダを、近くにいた乳母であるナタリアが自分を見てない事を確認しソフィアの分の皿に入れていた。
あの子、人参お化けとか前回も言っていたけれどそこは変わらないものなのね。天才なのかお馬鹿なのかよくわからないわ。
そうアメリーの方を見ていた時、騎士学校の制服にポニーテール姿のソフィアが現れた。ソフィアはすぐにアメリーを見て、アメリーはニッコリと可愛らしくソフィアに甘えた笑顔を見せた。
「アメリー駄目よ。好き嫌いは良くないわ。食べなさい」
「ふえ!?」
あら‥‥?今までアメリーの苦手な人参を食べてくれていたソフィアだったのに‥‥ショックでアメリーは硬直しているわね。
‥‥なんというか‥‥前回のソフィアに近い雰囲気かしら。生意気な‥‥色々と吹っ切れたようなあの感じ。私がそうソフィアを見ているとソフィアは私にニッコリと笑顔を向けながら
「アデライトお姉様もですよ。苦手な人参をいつもどさくさに紛れて私のお皿に寄越さないで下さい。きちんと食べないと」
何故か約30分‥‥ナタリアとソフィアに、アメリーと一緒にお説教をされた私‥。
「に、人参のお化けなるなんて嫌ああ!」
「アメリー、ふふふ。何故そこで、私を見るのかしら?」
‥‥アメリーもソフィアもやっぱり生意気だという事がよくわかったわ。ジェイコブお兄様は笑うのを堪えてるし‥後でお仕置きを‥‥
「ソフィアお嬢様‥あの朝早くからですが婚約者のオスカー様がお見えになられました。話があると‥‥ただ女性の方も一緒で‥」
そうメイドがソフィアに告げるとソフィアは、ハァと溜息を出した。
「‥‥そう。会うわ」
ソフィアはオスカー様に会いに行って静かになったから、私はゆっくり温かいスープを頂こうかしら。そう、スープを飲もうとした時ジェイコブお兄様とアメリーに手を引っ張られ何故かソフィアを追いかける‥。ジェイコブお兄様は顔を真っ赤にしながら今にでも殴りそうな勢いで早く歩く。
「オスカー!あいつ!今までなんもしてなかったのに!久しぶりにきて、なんだと思えば、女性も一緒だと!?ソフィアの婚約者でありながら!!」
「あのね、ジェイコブお兄さま!こういうときは、見守るのがいいんだよ!おちついて!」
「‥‥‥朝食のスープが冷めるわよ」
「「いいから!早く!!」」
面倒ね。それになんというか‥‥この感じデジャヴ‥。そう、かつて私がソフィアにした仕打ちに似ている。
階段下には、ソフィアとオスカー様‥‥そして、あぁ‥やっぱり貴女ね。
「ソフィア、すまない。僕はアイラ嬢を愛してしまったんだ」
「ソフィアさん!ごめんなさい!オスカー様は私がいないと駄目みたいなの‥‥許してくれる?」
シンと静まる中、私の隣にいたジェイコブお兄様は落ちつくため急に編み物をしながらぶつぶつと独り言をいいながら殺気立っていた。
ソフィアは涙も流さず、落ちついた様子ね‥‥。
回帰前はそう、確か‥‥あの子‥‥
「オスカー様」
「え、あ、うん。なんだい?」
「歯を食い縛ってくださいな」
「…え?」
ソフィアはぐっと拳を強く握りしめて、見事なストレートパンチをオスカー様に喰らわせた。
キャア!と屋敷には悲鳴が響いた。コロンとオスカー様の前歯が欠けているわ。
「ソ、ソフィアさん!?いくらなんでも、急に殴るなんて!騎士を目指す方だとは到底おもえないわ!非常識よ!?」
「アイラさん‥‥。非常識の方には非常識で返さないと。あとムカついたから一発殴りたかった。それだけですよ?はい、次は貴女ですねーー」
「キャアア!?なんなの!あんた!」
「誰かソフィアを止めろ!って、ジェイコブ!お前まで剣を持つな!」
そうシリウス伯父様はジェイコブお兄様を止め、ソフィアはメイドや執事達に止められる。
懐かしい光景で逆に笑っちゃうわ。
「うあああん!ソフィア姉さまが頭おかしくなっちゃったああああ!人参たべてくれなくなっだもーん!」
混乱する屋敷内の中、ソフィアはハアとため息を出し、歯欠け状態の間抜け姿のオスカー様にニッコリと微笑みかける。いえ、もうアレは軽蔑した眼差しね。
「ハイ、さよなら、間抜けな元婚約者様」
そうソフィアは告げてその場から立ち去り、騎士学校へと向かっていった。
すれ違いかのように、ルチータ殿下とルカがやってきてルチータ殿下は直ぐに察し呆れていた。ルカは私の元へ駆け寄り声をかけてきた。
「アディー!朝からどうしたの?さっきソフィアちゃんとすれ違ったら、なんか雰囲気が‥少し変わってたけど」
「ルカ‥‥ふふ。ちょっとした‥‥ゴミをソフィアは掃除しただけよ」
そう私がルカと話しているとオスカー様は何故か私を見て睨んでいた。
ソフィアの婚約破棄は少しだけ噂が広まった。
愛し合う二人を邪魔し嫉妬をしてアイラを叩いたソフィアという変な噂が広まったけれど、ルチータ王子は実は幼女好きでないかという噂を流してみたらそちらの方が更に広まり、ソフィア達の婚約破棄は消えていった。
「ねえ、私にとってそれは迷惑だし名誉に関わる事だよね?」
「あら、ルチータ王子。貴方様の薬を作っているのは誰かお忘れかしら?」
「はあ。あぁ、そうだ。敵国だったフォース国と平和協定を結ぶ事になったよ」
‥‥え?平和協定?
「‥‥‥平和協定はまだ先‥」
「ん?何がだい?ルカ、君も出席してくれ。君がいなければ話にならないしね。私の恩人でもあり、大切な友人だ」
「ルチータ、僕をそうやって令嬢達から逃げようとしてるでしょ」
「君の隣りには魔女と呼ばれている彼女がいるからね。普通の令嬢達は近寄ってこないのさ。最近父上達が婚約者を早く決めろと言われてるよ。敵国であったリリアン姫との話しもでてるし」
そう話すルチータとルカの間からアメリーがぴょんぴょんと手を挙げていた。
「はーい!はいはい!ここに候補者いるよ!ルチータ王子さま!結婚してください!」
ルチータ殿下はニッコリと小さなアメリーに微笑みながら
「あはは、却下だよ」
「ががーん!」
‥‥平和協定はまだ先の話なのにこんなに早く話が出てくるのって‥少し怪しいわね。
来週パーティーに出席をすればわかるかしら。
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