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愛弟子は私を甘やかす
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朝目覚めると我が自慢の愛弟子ユキちゃんは、エプロン姿で随分と早く起きて朝ご飯の用意をしてくれてた。
サクサクのシナモン入りのクロワッサンと卵サラダ、野菜スープ、そして私の大好きな林檎がテーブルに並んでる。
「これ、ユキちゃんが作ったの?」
「……ハイ、簡単な物で申し訳ございません。この辺の村で上等な肉が見当たらず、狩りにいく時間もありませんでしたので…」
そう、ユキちゃんは申し訳なさそうに話してるけど、充分よ!?料理のスペックも持ってるなんて素晴らしいわね!いいお嫁さんになれるわよ!
「あー…頭いて。酒飲みすぎたー」
頭を抱えながら眠たそうにやってきたマルセクに無言で水をあげるユキちゃん。マルセクがフラフラと何やら探していて、ユキちゃんは苛々しながらまたマルセクに新聞を渡していた。
「お、ユキ、サンキュー」
「……弱いくせに毎日飲み過ぎなんですよ。それと私がいなくなってた間、かなり洗濯物が溜まっています。あと燃えるゴミと燃えないゴミをきちんと分別するよう以前から注意したはずです。まったく…元貴族はこれだから…」
「……お前は俺のオカンかよ。朝から小言はかんべんだー」
そんな2人の雰囲気は、そうね…ふふ。なんだか…
「2人共、熟年夫婦みたいだわ。ユキちゃんがお嫁さんで、マルセクが旦那さんね」
そう私がクロワッサンを食べて話すと2人は固まっていた。師匠の私より仲が良くてなんだか妬けちゃうわ。まあ、私がいなかった時マルセクがユキちゃんの面倒を見てくれてたのよね…私の実家はアテにならないと知ってて…。
「くくっ…ぶはっ!おい、ユキッ、せっかくドロシーに《料理できる良い男》アピールしたつもりが、俺と夫婦って笑えるなって、あっぶね!おい!急にナイフとフォークを俺めがけて投げんなよ!?」
「…まだ酔いが覚めてないかと思いまして。その脳みそを少し取り出した方よいかと」
「…ちょ、ま、ぎゃー!おまっ!ここ俺ん家!!投げんな!」
うん、やっぱり二人共仲良しだわ。それにしてもクロワッサン…美味しすぎるわ!久しぶりの賑やかな朝食でした!
「…で、ドロシー。お前は何をするつもりだ?一日でわかっただろ?この国はもう終わりだ」
「あら、マルセクらしくない発言ね」
「…お前がいないこの18年間色々あったんだよ……歳のせいかもなあ」
「……マルセク…」
私は自分が持っていた短剣を瞬時に出し、彼に殺気を向けて攻撃をした。マルセクは素早く、自分の魔力を放ち右手から剣を取り出して防御する。
カキンッ!と剣と剣の刃のぶつかり合いだけが鳴り響いた。
「おいおい、ドロシー。なんの冗談だ」
「それはこちらの台詞よ。私の友人マルセクは弱音なんて吐かず己の剣に誇りを持っていた騎士よ」
「誇り?それは昔の話しだ」
「……国が終わりとか言いながらも、少しでも何か守ろうとしていたから裏家業なんてしてたんでしょ?」
「………それは……」
私がそうマルセクに話しているのをユキちゃんは壁際で腕を組みながら、ただ黙っていた。
「私は国を、立て直すとか、そんな立派な志しは無いわよ。そこまで出来た人間じゃないもの。でもね……」
「…でも、なんだよ?」
「あの、アホアホユリウスがのうのうと生きてるのがムカつくから、一発ブン殴らなきゃ気が治らないわ!!」
そう私が言い切るとマルセクはポカンと口を開けて、笑った。
「…ぶはっ!お前は変わらずだな」
「それと、あのオッパイデカい、エルという女もだわ」
「…はー……若さだな。…ドロシー、その…まだお前に話してない事がーー」
そうマルセクは言葉を濁しながら何かを言おうとしていた時、パン!とユキちゃんは遮るかのように手を叩いて私に微笑みかける。
「師匠、それよりも買い物へいきましょう」
「ん?」
そうユキちゃんは私の手を取り一瞬で、別な町へと移動していた。え、この子簡単に移動できるの?!こんや高度な魔法…やはり我が愛弟子は天才だわ!でも……
「あ、あの…ユキちゃん」
「はい、なんでしょうか」
「なんで私はお姫様抱っこのままお店にまわらねばならないのかしら?周りの人達の視線が痛いのよ!それにこんなに目立っていたらダメよ」
「…たしかに師匠の美しさが目立っていますからね。さあ、こちらのお店へ」
フワリと優しくお店の前までおろしてくれたユキちゃんは私をお店の中までエスコートをしてくれた。あんなに小さな男の子が優しく女性をエスコートする紳士になり嬉しいけど、変な感じ。
「この店の物全て買う」
「え」
…だけど、お金の使い方は荒々しいみたいだから、そこは後で師匠である私が教えないといけないかも…。いや、その前にお金は何処から!?私は一着白いワンピースに着替え終えて、お金はあるのかと聞こうとした時、ユキちゃんは頬を赤らめながら嬉しそうな笑顔を私に向けた。
「さすが私の師匠です。どの服も似合いますが、やはり白が格別に違いますね」
…くっ…何!あの笑顔は!反則よ!?可愛すぎる!普通の令嬢ならあの笑顔でイチコロね!
「師匠、ここの町で一番人気のクレープです。林檎をトッピングしました」
「私の好みを知っているなんて流石だわ!いただきまーす。んー!やっぱり林檎と生クリーム美味しいわ!」
ユキちゃんが買ってきてくれたクレープを私は食べた。んー生クリームたっぷりで美味しい!そんな私をユキちゃんはクスクス笑いながら、私の口元についている生クリームを親指でとってくれた。
「…たしかに美味しいですね」
そんなユキちゃんに、周りにいた町の女の子達は頬赤らめて目がハートになっていた。……無駄に色気がありすぎるのも、ちょっと困るわね。…それに、今日のユキちゃんは本当に私を甘やかし放題というかなんというか…。
私はもう一口、クレープを食べてユキちゃんに話しかけた。
「ねえ、ユキちゃん…」
「はい、なんでしょうか」
「……私に何か隠してることあるね?」
そう私が言うと、ユキちゃんは少し困った顔しながら少し笑って話した。
「……やはり師匠に隠し事は通じませんか」
ユキちゃんはなんだか少し寂しげな目で私を見つめてからパチン!と指を鳴らした。
風が程よく吹いて気持ちがよい…ここはどこだろう?どこかの丘の上?
私から少し離れていたところに、ユキちゃんは立っていた。ここに連れ出してきて何があるんだろう?そう思っていた時……
「墓標……?一体だれの…」
私は目の前にある木の墓標に近寄ってみた。それが誰の墓なのか。
……かつて私と共に魔道具を作り、友人だった人。昔からの幼馴染であり………良き理解者でもあった人………。
「……な…んで……彼の名前が刻まれてるの………シリウス……」
私の初恋だった彼は……死んでいた。
サクサクのシナモン入りのクロワッサンと卵サラダ、野菜スープ、そして私の大好きな林檎がテーブルに並んでる。
「これ、ユキちゃんが作ったの?」
「……ハイ、簡単な物で申し訳ございません。この辺の村で上等な肉が見当たらず、狩りにいく時間もありませんでしたので…」
そう、ユキちゃんは申し訳なさそうに話してるけど、充分よ!?料理のスペックも持ってるなんて素晴らしいわね!いいお嫁さんになれるわよ!
「あー…頭いて。酒飲みすぎたー」
頭を抱えながら眠たそうにやってきたマルセクに無言で水をあげるユキちゃん。マルセクがフラフラと何やら探していて、ユキちゃんは苛々しながらまたマルセクに新聞を渡していた。
「お、ユキ、サンキュー」
「……弱いくせに毎日飲み過ぎなんですよ。それと私がいなくなってた間、かなり洗濯物が溜まっています。あと燃えるゴミと燃えないゴミをきちんと分別するよう以前から注意したはずです。まったく…元貴族はこれだから…」
「……お前は俺のオカンかよ。朝から小言はかんべんだー」
そんな2人の雰囲気は、そうね…ふふ。なんだか…
「2人共、熟年夫婦みたいだわ。ユキちゃんがお嫁さんで、マルセクが旦那さんね」
そう私がクロワッサンを食べて話すと2人は固まっていた。師匠の私より仲が良くてなんだか妬けちゃうわ。まあ、私がいなかった時マルセクがユキちゃんの面倒を見てくれてたのよね…私の実家はアテにならないと知ってて…。
「くくっ…ぶはっ!おい、ユキッ、せっかくドロシーに《料理できる良い男》アピールしたつもりが、俺と夫婦って笑えるなって、あっぶね!おい!急にナイフとフォークを俺めがけて投げんなよ!?」
「…まだ酔いが覚めてないかと思いまして。その脳みそを少し取り出した方よいかと」
「…ちょ、ま、ぎゃー!おまっ!ここ俺ん家!!投げんな!」
うん、やっぱり二人共仲良しだわ。それにしてもクロワッサン…美味しすぎるわ!久しぶりの賑やかな朝食でした!
「…で、ドロシー。お前は何をするつもりだ?一日でわかっただろ?この国はもう終わりだ」
「あら、マルセクらしくない発言ね」
「…お前がいないこの18年間色々あったんだよ……歳のせいかもなあ」
「……マルセク…」
私は自分が持っていた短剣を瞬時に出し、彼に殺気を向けて攻撃をした。マルセクは素早く、自分の魔力を放ち右手から剣を取り出して防御する。
カキンッ!と剣と剣の刃のぶつかり合いだけが鳴り響いた。
「おいおい、ドロシー。なんの冗談だ」
「それはこちらの台詞よ。私の友人マルセクは弱音なんて吐かず己の剣に誇りを持っていた騎士よ」
「誇り?それは昔の話しだ」
「……国が終わりとか言いながらも、少しでも何か守ろうとしていたから裏家業なんてしてたんでしょ?」
「………それは……」
私がそうマルセクに話しているのをユキちゃんは壁際で腕を組みながら、ただ黙っていた。
「私は国を、立て直すとか、そんな立派な志しは無いわよ。そこまで出来た人間じゃないもの。でもね……」
「…でも、なんだよ?」
「あの、アホアホユリウスがのうのうと生きてるのがムカつくから、一発ブン殴らなきゃ気が治らないわ!!」
そう私が言い切るとマルセクはポカンと口を開けて、笑った。
「…ぶはっ!お前は変わらずだな」
「それと、あのオッパイデカい、エルという女もだわ」
「…はー……若さだな。…ドロシー、その…まだお前に話してない事がーー」
そうマルセクは言葉を濁しながら何かを言おうとしていた時、パン!とユキちゃんは遮るかのように手を叩いて私に微笑みかける。
「師匠、それよりも買い物へいきましょう」
「ん?」
そうユキちゃんは私の手を取り一瞬で、別な町へと移動していた。え、この子簡単に移動できるの?!こんや高度な魔法…やはり我が愛弟子は天才だわ!でも……
「あ、あの…ユキちゃん」
「はい、なんでしょうか」
「なんで私はお姫様抱っこのままお店にまわらねばならないのかしら?周りの人達の視線が痛いのよ!それにこんなに目立っていたらダメよ」
「…たしかに師匠の美しさが目立っていますからね。さあ、こちらのお店へ」
フワリと優しくお店の前までおろしてくれたユキちゃんは私をお店の中までエスコートをしてくれた。あんなに小さな男の子が優しく女性をエスコートする紳士になり嬉しいけど、変な感じ。
「この店の物全て買う」
「え」
…だけど、お金の使い方は荒々しいみたいだから、そこは後で師匠である私が教えないといけないかも…。いや、その前にお金は何処から!?私は一着白いワンピースに着替え終えて、お金はあるのかと聞こうとした時、ユキちゃんは頬を赤らめながら嬉しそうな笑顔を私に向けた。
「さすが私の師匠です。どの服も似合いますが、やはり白が格別に違いますね」
…くっ…何!あの笑顔は!反則よ!?可愛すぎる!普通の令嬢ならあの笑顔でイチコロね!
「師匠、ここの町で一番人気のクレープです。林檎をトッピングしました」
「私の好みを知っているなんて流石だわ!いただきまーす。んー!やっぱり林檎と生クリーム美味しいわ!」
ユキちゃんが買ってきてくれたクレープを私は食べた。んー生クリームたっぷりで美味しい!そんな私をユキちゃんはクスクス笑いながら、私の口元についている生クリームを親指でとってくれた。
「…たしかに美味しいですね」
そんなユキちゃんに、周りにいた町の女の子達は頬赤らめて目がハートになっていた。……無駄に色気がありすぎるのも、ちょっと困るわね。…それに、今日のユキちゃんは本当に私を甘やかし放題というかなんというか…。
私はもう一口、クレープを食べてユキちゃんに話しかけた。
「ねえ、ユキちゃん…」
「はい、なんでしょうか」
「……私に何か隠してることあるね?」
そう私が言うと、ユキちゃんは少し困った顔しながら少し笑って話した。
「……やはり師匠に隠し事は通じませんか」
ユキちゃんはなんだか少し寂しげな目で私を見つめてからパチン!と指を鳴らした。
風が程よく吹いて気持ちがよい…ここはどこだろう?どこかの丘の上?
私から少し離れていたところに、ユキちゃんは立っていた。ここに連れ出してきて何があるんだろう?そう思っていた時……
「墓標……?一体だれの…」
私は目の前にある木の墓標に近寄ってみた。それが誰の墓なのか。
……かつて私と共に魔道具を作り、友人だった人。昔からの幼馴染であり………良き理解者でもあった人………。
「……な…んで……彼の名前が刻まれてるの………シリウス……」
私の初恋だった彼は……死んでいた。
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