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その16. 解禁の勧め

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「俺がいないところで飲むときは、せめて同性だけの集まりに限定してくれれば嬉しいです」

 言いながら、露骨に独占欲を出しているなと健斗は思う。二週間振りで会うせいか、どうも自分の感情を抑えることが上手くできない。

「うん。心配してくれて、ありがとうね」

 そんな健斗の気持ちを知らずに、美晴が嬉しそうに微笑んだ。その素直な表情に、なぜか罪悪感がわいてしまう。

「……なんか、すみません美晴さん」
「なにが?」
「持ってきたぞー」

 呼びかける声が聞こえて振り向いた。戻ってきた陽平がプラスチックのカップが刺さったホルダーを両手で持ち、新菜がそのカップをテーブルに置いていく。数十分前に会ったばかりとは思えない、息のあったその動きに健斗は感心した。

「ケンケン、火はついた?」

 新菜に聞かれ、健斗はグリルに目をやる。黒炭は隙間を空けながら柱のように何本も立たせて、その隙間にゆるくよじった新聞紙を突っ込んで火をつけた。こうすると、新聞紙が燃えているうちに炭に火が移っていく。燃焼しやすい、炭の効率良い立て方さえ知っていれば簡単に出来る火の起こし方だ。

「炭が燃えるまでもう少し待って」
「……ケンケンって?」

 当たり前のように流れる会話を止め、確認するように美晴が繰り返す。その疑問に答えるため、陽平がニコリと微笑んで言い切った。

「美晴さんいるのに新菜ちゃんが健斗って呼んじゃまずいでしょう」
「そんな」

 押し切られて、なぜか美晴がうろたえる。

「うん。そんなことより、乾杯しましょう!」
「乾杯ー!」

 最終的に新菜が仕切って陽平がそれに乗って、それぞれプラカップを手に持ち乾杯する。明るい日差しの下、冷えたビールが喉を通って身体に染みていった。

「気持ちいいねー」

 青空に向かってビールを掲げ、新菜が叫ぶ。

「ほんと、ビール美味しい」
「美晴さん、すっごいしみじみ言った」

 さっそく新菜に突っ込まれ、美晴がビクリとする。その様子を肴に、健斗はまたビールを一口飲んだ。

「えーっと、ここ最近お酒飲んでなかったんで、つい」

 ただの事実なのに、そわそわしながら説明するのでなんだか怪しい。これでは痛くない腹も探られてしまう。

 可愛いなぁ。

 そんなことを思いながら、またビールを飲んだ。

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