愚かな道化は鬼哭と踊る

ふゆき

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【朱に交われば赤くなる】

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 幽霊や化け物を物理で殴れるってことは、だ。虎蔵にとってソイツらの存在は、見た目はさておき、生身の人間とさして変わらないということになる。ごく自然に話しかけていたところをみると、しようと思えば意思の疎通もできる存在なのだろう。

 触れられて、意思の疎通もできる相手を殴り殺すのが仕事だと、虎蔵は言う。
 物騒なことを平然と言ってのける虎蔵にゾッとしたのも束の間。

「他人に迷惑かけなんだら、他の連中みたいに、未練がのうなるまでなんぼでもおらせてもらえるのに阿呆やんなあ。生きてる者の害になったら排除せな危のうてしゃあない」

 どこかやるせなさそうにぽつりと落とされた言葉で、オレは自分の勘違いに気付く。
 アレはこの世ならざるモノで。
 いくら触れようが言葉を交わせようが、その存在はもう、別物に変わり果てている。

 アレらはもう、生きている者とまじわってはならない存在なのだ。
 だから虎蔵は、なんの躊躇いもなく拳を振るっている。
 たぶん、そういう事だ。

 --……でなけりゃ、流石に今後の付き合い方を考える。相手が化け物だとしても、見て触れて話も出来るモノを躊躇いなくどうこう出来るヤツとなんざ、いくらなんでも親戚付き合いしたくない。

「--……ん? いや、待て。幽霊だのなんだのってな、そんなあちこちにいるもんなのか?」

 少なくとも、いままで生きてきて、オレはその手のモノに出くわした覚えはないし、周りに見たと言うヤツもいなかった。そもそも、その手のモノがあちこちで迷惑だの害だのを振り撒いているなら、話くらいは聞こえてくるはずだ。

 と、いうか虎蔵。おまえからそんな話を一度も聞かされた覚えがないんだがな?

「おるけど、普通やったら見えへんし触れへんよ。見えなんだらおらんのと一緒やろ? せやで、人様の害にさえならなんだら好きなだけ未練にしがみついとったらええやんって話なるわけや」

 オレの言わんとしていることが伝わったのだろう。虎蔵が、パタパタと顔の前で手を横に振る。

 存在していてもほぼ無害。未練にしがみついてソコに居るだけ。
 怨みを呑んで化けて出るような存在ならいざ知らず、存在するだけのモノをいちいち取り沙汰すのもめんどくさいと虎蔵は言う。
 まあよ。ただそこに在るだけのモノならそうなんだろうけどよ。

「見えたし襲われたんだが?」

 今回のおっさんは、その手のモノが一切見えていなかったオレにもはっきり見えた--どころか。手招きされるわ追いかけられるわ。下手すりゃもう少しで襲いかかられるところだった。
 あんなモノが無害であってたまるかってんだ。
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