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【首吊りの木】
弐
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社会人として、職場でその格好はどうなんだとは思えども。佐久間のおっさん曰く、詞葉さん的にはコレが勝負服だから、なんら問題はないのだそうだ。
「熱ッ。うまッ。バター醤油がごはんにからんで染みうまッ」
ちまちまと炒飯を頬張っては歓喜の声をあげている姿がただの小娘にしか見えなくとも、詞葉さんは『御霊鎮め』のプロなのだそうだ。舞いを納めて『荒御魂』とやらを鎮めるのが得意分野なんだとか。
とはいえ、この人もまた、尼子さんと同じく我流である。
でもって、我流であるが故に、ちょこちょこやらかす人でもある。
尼子さんは、男勝りで些か粗野ではあれど、仕事面ではきちんとした計画を立てて事を進めるタイプだ。シュミレーションにシュミレーションを重ね、もし失敗しても大惨事にはならないよう、細心の注意を払っている。
そのくせ何故か、最後の最後は力業で押しきってしまう。
そこまで綿密にやるのなら、力業に走る必要はないのではなかろうかと思うのだが。
本人曰く『いける』と思った瞬間に、なんらかのスイッチが入ってしまうらしい。
対して詞葉さんは、フィーリングで仕事をするタイプの人だ。ほぼ直感で対処してしまう為、たまに失敗して『呪い』を受けて帰ってきたりする。
その都度、佐久間のおっさんやら佐津川さんが苦労して呪いを解いたり返したり、忙しく走り回る羽目になる。
毎回、騒動の後はこっぴどく叱られているにもかかわらず、懲りないのが詞葉さんという人だ。
今回もまた、なにかしらやらかしたのだろう。
「おかわり!」
そう元気よく空になった取り皿を差し出す詞葉さんの首には、半透明の、絞首刑に用いられるような太く厳ついロープが、がっちりと巻き付いていた。
+++
詞葉さんの首筋にうっすらとロープで絞められたような跡が浮かび上がってきたのは確か、一週間ほど前だった。
がっちりと封印されて地方担当の誰か--地方から地方へ渡り歩いている面子とは、会った事もなければ紹介された事もない--から宅配便で送られてきた何かのミイラに憑いていた動物霊が、包みを開けた途端、派手に暴れまわってくれた日で。なんだろうと首を傾げながらも全員、動物霊を捕まえるのに疲れ果てていたため、その日はそのまま解散となった。
仮にも本職の祓い師だ。よしんば何かあったとしても、大事に至る前には何らかの対応が出来るはず。ならば、疲れ果てた状態で中途半端に調べるよりも、落ち着いてからゆっくり鑑定しようという話になったのだ。
けれど、詞葉さんは翌日、いつもの通り予定されていた祓いの場に出掛けて行ってしまった。
「熱ッ。うまッ。バター醤油がごはんにからんで染みうまッ」
ちまちまと炒飯を頬張っては歓喜の声をあげている姿がただの小娘にしか見えなくとも、詞葉さんは『御霊鎮め』のプロなのだそうだ。舞いを納めて『荒御魂』とやらを鎮めるのが得意分野なんだとか。
とはいえ、この人もまた、尼子さんと同じく我流である。
でもって、我流であるが故に、ちょこちょこやらかす人でもある。
尼子さんは、男勝りで些か粗野ではあれど、仕事面ではきちんとした計画を立てて事を進めるタイプだ。シュミレーションにシュミレーションを重ね、もし失敗しても大惨事にはならないよう、細心の注意を払っている。
そのくせ何故か、最後の最後は力業で押しきってしまう。
そこまで綿密にやるのなら、力業に走る必要はないのではなかろうかと思うのだが。
本人曰く『いける』と思った瞬間に、なんらかのスイッチが入ってしまうらしい。
対して詞葉さんは、フィーリングで仕事をするタイプの人だ。ほぼ直感で対処してしまう為、たまに失敗して『呪い』を受けて帰ってきたりする。
その都度、佐久間のおっさんやら佐津川さんが苦労して呪いを解いたり返したり、忙しく走り回る羽目になる。
毎回、騒動の後はこっぴどく叱られているにもかかわらず、懲りないのが詞葉さんという人だ。
今回もまた、なにかしらやらかしたのだろう。
「おかわり!」
そう元気よく空になった取り皿を差し出す詞葉さんの首には、半透明の、絞首刑に用いられるような太く厳ついロープが、がっちりと巻き付いていた。
+++
詞葉さんの首筋にうっすらとロープで絞められたような跡が浮かび上がってきたのは確か、一週間ほど前だった。
がっちりと封印されて地方担当の誰か--地方から地方へ渡り歩いている面子とは、会った事もなければ紹介された事もない--から宅配便で送られてきた何かのミイラに憑いていた動物霊が、包みを開けた途端、派手に暴れまわってくれた日で。なんだろうと首を傾げながらも全員、動物霊を捕まえるのに疲れ果てていたため、その日はそのまま解散となった。
仮にも本職の祓い師だ。よしんば何かあったとしても、大事に至る前には何らかの対応が出来るはず。ならば、疲れ果てた状態で中途半端に調べるよりも、落ち着いてからゆっくり鑑定しようという話になったのだ。
けれど、詞葉さんは翌日、いつもの通り予定されていた祓いの場に出掛けて行ってしまった。
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