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第2章 騎士団長と神の怒り
第3話 寄進
深夜も遅く、疲れて眠りに落ちた彼の中に、“もう一人のルーディス”が現れた。
自分の裸体をみやり、また呆れたような顔でヴェルディを見つめる。
「……本当にお前はルースが好きだな。ちょっと控えたらどうだ」
すいとヴェルディは目を逸らした。
登場するたびに“もう一人のルーディス”に呆れて言われている気がする。
そもそも、彼はあまりルースの中から出てこないものなのではないのか。
そう言いたげなヴェルディに、“もう一人のルーディス”は長く伸びた黒髪を掻き上げた。
「仕方ないだろう。私がいろいろとしないとマズイ事態になるからな。神殿に薬の寄進をさせたのも必要なことだ」
“もう一人のルーディス”は、今後、疫病が起こるであろうと予知した。
そのまま放っておくこともできず、彼はルースに大量の薬を寄進させている。
神殿育ちで、神殿にはお世話になったからと言って行った寄進は、なんらおかしなことはない。
副神官長のテラは大いに感謝していた。
その薬の多くが、熱を下げるものだということに、不思議な顔をしていたが。
寄進は、“もう一人のルーディス”が、ルースの心の内で囁いて、誘導してやらせたものだと言う。
もとから神官長ルーディスには、資金さえあれば、薬の在庫を可能な限り多く持ちたいという望みがあったようなので、誘導するのは簡単なことだと言った。
「アレは生粋の神官奴隷根性の持ち主だからな。人に尽くすことが大好きだ」
神官長ルーディスは自分のことであるのに、どこか馬鹿にしているような様子で“もう一人のルーディス”は言っていた。
「だから簡単にだまされる。人を疑うことを知らない。ヴェルディ、お前はよく、ルースを見張っておくんだぞ」
「わかっている」
人を疑うことを知らない彼だから、大切に守っていきたかった。
実際、ルースの前世の神官長ルーディスを、この上なく大切に守ってきた自負はある。……最期の時は除くが。
もし、あの“ライシャ事変”が無ければ、ヴェルディとルーディスはずっと平行線のまま、互いの距離を保って生きてきただろう。
清く正しく美しく生きている彼のことを、いつまでも尊びながら。
そして、本日、王とライト公爵が、突然屋敷を訪問したという話をすると、“もう一人のルーディス”は心底おかしそうに笑った。
「ついているな、ルースは」
「お前が計ったことではないのか」
「知っているだろう。自分のことは予知できない。私は王や公爵が来ることなんぞ知らなかった。偶然にも、会うことなくやりすごしたわけだ。とんだ偶然だ」
「そうなのか」
てっきり、ルースが神殿に行くタイミングについても、“もう一人のルーディス”が計って、やり過ごすようにしたのかと思っていた。
「このまま最後まで、あやつらと会わないようにできるといいな」
最後まで?
“もう一人のルーディス”はヴェルディに言った。
「薬の備蓄を勧めろ。金に糸目をつけなくてもいいだろう? ヴェルディ、お前の愛しのルースの願いだ」
「…………本当に、疫病が起きるというのか」
「神罰だと言っただろう」
彼のその光のない黒い瞳が、ヴェルディを見つめた。
「赦しはない。滅びる時まで、起きるぞ」
自分の裸体をみやり、また呆れたような顔でヴェルディを見つめる。
「……本当にお前はルースが好きだな。ちょっと控えたらどうだ」
すいとヴェルディは目を逸らした。
登場するたびに“もう一人のルーディス”に呆れて言われている気がする。
そもそも、彼はあまりルースの中から出てこないものなのではないのか。
そう言いたげなヴェルディに、“もう一人のルーディス”は長く伸びた黒髪を掻き上げた。
「仕方ないだろう。私がいろいろとしないとマズイ事態になるからな。神殿に薬の寄進をさせたのも必要なことだ」
“もう一人のルーディス”は、今後、疫病が起こるであろうと予知した。
そのまま放っておくこともできず、彼はルースに大量の薬を寄進させている。
神殿育ちで、神殿にはお世話になったからと言って行った寄進は、なんらおかしなことはない。
副神官長のテラは大いに感謝していた。
その薬の多くが、熱を下げるものだということに、不思議な顔をしていたが。
寄進は、“もう一人のルーディス”が、ルースの心の内で囁いて、誘導してやらせたものだと言う。
もとから神官長ルーディスには、資金さえあれば、薬の在庫を可能な限り多く持ちたいという望みがあったようなので、誘導するのは簡単なことだと言った。
「アレは生粋の神官奴隷根性の持ち主だからな。人に尽くすことが大好きだ」
神官長ルーディスは自分のことであるのに、どこか馬鹿にしているような様子で“もう一人のルーディス”は言っていた。
「だから簡単にだまされる。人を疑うことを知らない。ヴェルディ、お前はよく、ルースを見張っておくんだぞ」
「わかっている」
人を疑うことを知らない彼だから、大切に守っていきたかった。
実際、ルースの前世の神官長ルーディスを、この上なく大切に守ってきた自負はある。……最期の時は除くが。
もし、あの“ライシャ事変”が無ければ、ヴェルディとルーディスはずっと平行線のまま、互いの距離を保って生きてきただろう。
清く正しく美しく生きている彼のことを、いつまでも尊びながら。
そして、本日、王とライト公爵が、突然屋敷を訪問したという話をすると、“もう一人のルーディス”は心底おかしそうに笑った。
「ついているな、ルースは」
「お前が計ったことではないのか」
「知っているだろう。自分のことは予知できない。私は王や公爵が来ることなんぞ知らなかった。偶然にも、会うことなくやりすごしたわけだ。とんだ偶然だ」
「そうなのか」
てっきり、ルースが神殿に行くタイミングについても、“もう一人のルーディス”が計って、やり過ごすようにしたのかと思っていた。
「このまま最後まで、あやつらと会わないようにできるといいな」
最後まで?
“もう一人のルーディス”はヴェルディに言った。
「薬の備蓄を勧めろ。金に糸目をつけなくてもいいだろう? ヴェルディ、お前の愛しのルースの願いだ」
「…………本当に、疫病が起きるというのか」
「神罰だと言っただろう」
彼のその光のない黒い瞳が、ヴェルディを見つめた。
「赦しはない。滅びる時まで、起きるぞ」
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