転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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第十四章 招かれざる客人

第二十三話 再度の忠告と頼み事

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 友親やカルフィー、ケイオスが、ルティ魔術師に連れられ、部屋に閉じ込められているという報告が、リン王太子妃の元に届いたのは、友親達が王宮に到着して半刻ほど経った時だった。
 何故もっと早く自分に報告が上がらなかったのかと、リン王太子妃は女官達を叱責しながら、靴音を響かせ、ドレスの裾を持って王宮の長い廊下を走っていく。その剣幕にすれ違う者達は驚いていた。
 
 どうもルティ魔術師は、王宮の侍従や女官達の一部を言い含めて協力させていたらしい。ルティ魔術師はアレドリア王国の魔術師ギルドの上級魔術師である。その上、アレドリア国王と魔術師ギルドの権威を笠に着てやったことだ。
 リン王太子妃は下唇を噛み締めた。

 友親達が連れ込まれた部屋は、何故か扉が開かなくなっている。
 何らかの魔法をルティ魔術師が使ったようだ。
 
 紫竜ルーシェをルティ魔術師とは会わせないようにしたことの反動が、こんな形で現れるとは思ってもみなかった。
 早く友親達を部屋から助け出さなければならない。
 
 険しい顔をしたリン王太子妃が扉の前に到着し、ハルヴェラ王国の王宮魔術師達に命じて何としても扉を開けよと命じようとしたその時、その扉が内側から開いた。

 驚くリン王太子妃の前で、カルフィー魔術師、ケイオス、友親、そしてルティ魔術師が現れた。

「友親、大丈夫なの!?」

 中で何かされたのではないかと、リン王太子妃が言うと、友親は「あれ、委員長。来てくれたんだ。大丈夫だよ、中で少し話していただけだ。もう話も終わった」と明るく言った。

 友親の言葉にルティ魔術師も頷く。

「話は終わりました」

「貴方、勝手に王宮の部屋に、私が招いた客人を連れ込んで閉じ込めるとはどういう了見なの!! 厳重に抗議させて頂きますからね」

 リン王太子妃が目を吊り上げ、強い口調で言うのに対し、ルティ魔術師は「……申し訳ありません」としおらしげに頭を下げたものだから、リン王太子妃は呆気に取られた。
 今までのルティ魔術師なら、嫌味すら言い返してきそうなのに。反省の言葉を口にするとは思わなかったのだ。

「こいつ、うまくいかなかったから、もう諦めて国へ帰るってさ」

 友親がそんなことを言うので、確かめるようにリン王太子妃はルティ魔術師に尋ねた。

「…………そうなの?」

「はい。説得はうまくいきませんでした。紫竜にも会えず、トモチカさんにも断られました」

「そう」

 それをリン王太子妃は良かったと思う一方で、あまりにもすんなりと、ルティ魔術師が引き下がることに信じられないような思いがしていた。なにせアレドリア王国から図々しくも、このハルヴェラ王国まで押しかけてきた魔術師である。国王と魔術師ギルドの信書まで手にして現れたのに、何の成果も得ずに、おめおめと引き下がれるのか。

「それと、俺達も来て早々だけど、ちょっと仕事の都合で急遽、国へ戻らなければならなくなった。俺達も帰るよ」

「え?」

 三橋友親達もハルヴェラ王国から出ていくというのだ。それにはリン王太子妃もびっくりである。

「な、なんで。友親に会えることをルーシェ達も楽しみにしていたのに」

「悪いな。また落ち着いたら来るよ。どうしても外せない仕事なんだ」

「…………そう」

 リン王太子妃はため息をつく。

「仕事なら仕方ないわね。でも、国を離れる前にルーシェ達に会っていきなさい。あなたに会うことをとっても楽しみにしていたんだから。一緒に温泉へ行く気満々で」

「温泉だって!!」

 友親が大声を上げる。それにリン王太子妃は頷きながら言った。

「私が開発した温泉があるのよ。そこにルーシェとあなたを招待してあげようと思ったのに」

「…………そうか。ああぁぁ、でも、仕方ないんだ。一度国に帰らないといけないから。でも、温泉か。温泉」

 グラグラと友親の心は揺れるが、だからといって残るわけにはいかない。
 自分の下僕状態にしているルティ魔術師を、カルフィー魔道具店まで連れていって、そこでちゃんと“確保”しておかなければ安心できない。カルフィーに聞いたところ、吸血鬼の“下僕”状態から解放する術もあるらしい。そうされてはマズイからだ。ルティ魔術師を、アレドリア王国の魔術師ギルドを辞めさせ、確実にカルフィー魔道具店へ連れ帰る必要がある。

 友親は誘惑を振り切るように言った。

「温泉にはすごく行きたいけど。今回は我慢する。ありがとう、委員長」

「しようがないわね。じゃあ、ほら、ルーシェに会っていきなさいね」

 そうリン王太子妃に促され、友親は頷いた。

「分かった」



 そして紫竜ルーシェとアルバート王子のいる部屋へ、三橋友親がやって来ると、王子の膝の上で、友親の来訪に気が付いたルーシェは「ピルルルルルルルルルルルルル!!!!」と大きな声で鳴き、飛ぼうとしたその体を後ろからギュッとアルバート王子に掴まれ、翼が空中でバタバタと揺れていた。小さな竜は怒ったように振り向いて「ピルピルピルルル!!!!」とアルバート王子に何か言っている。

 おそらく、初めて友親に会おうとした時と同じように、友親に飛び付こうとしたのだろう。最初の時はケイオスに剣の鞘で床に叩きつけられて、昏倒していた。なんだかその出来事も随分と昔のことのように思える。

「相変わらず元気そうだな」

「ピルーピルー」

 小さな竜の姿のまま、ルーシェはご機嫌に鳴いて、踊るように左右に体を揺らしていた。なんとも可愛らしい仕草に、友親はルーシェのそばに行き、その頭を優しく撫でていた。

「お前にまた会えて嬉しいよ。でも、残念だけど、仕事の都合でまた国に戻らないといけなくなったんだ」

 そう言った瞬間、ルーシェは黒い目を大きく見開き、尻尾もダランと下にさがり、うなだれる。
 その姿だけで言葉を交わさずとも、ルーシェの心情が伝わってくる。

「ごめんな。本当は、俺もお前と一緒に温泉に行きたかったんだけど。またの機会に行こうな」

「ピルゥピルルゥゥゥ」

 大きな黒い目を潤ませて、切なげに鳴く小さな竜に、友親は「そんな鳴くなよ」と彼もひどく寂しそうだった。
 友親は「少し仲間だけで話したいから」と言って、部屋の中にいた女官達を部屋の外に出させる。
 それで、部屋の中には三橋友親、小さな竜のルーシェ、アルバート王子、カルフィーとケイオスの四人と一頭だけになった。

 友親はルーシェの頭を撫でながら言った。

「お前、“魔素”のことは他人にバラしちゃだめだぞ。そこからお前が異世界から来た人間だってバレちゃうかも知れない。そうなると、大変なことになるって前にも話しただろう」

 それにルーシェは口をパッカリと開けて、友親の顔を見上げた。
 アルバート王子が「何故そのことを?」と問いかけると、友親は「ルティ魔術師がお前のことを怪しんでいたから」と告げた。

 それで、ルーシェは一瞬で小さな子供の姿に変わった。眉根を寄せ、少ししょんぼりした様子で言った。

「ルティ魔術師を竜の姿で背中に乗せて飛んだ時、体内の魔力を探られて、それでバレちゃったみたいなんだ」

「気を付けろと言っただろう」

 友親は小さな子供のルーシェの頭も撫で、それからアルバート王子に言った。

「こいつは昔からウッカリ者だから、王子殿下はよくよく気を付けてあげて下さい」

(昔からウッカリ者!?)

 小さなルーシェが、何か言い返そうと友親を見上げる。だが実際、ウッカリでしでかした事実を否定できず「ぐぬぬぬぬ」とルーシェが歯噛みしている。

「わかりました」

 そして王子も王子で、すぐさまルーシェがウッカリ者だということに同意をしている。
 ルーシェは恨みがましい目付きで、友親と王子を交互に見つめていた。

「それでルティ魔術師は、俺の方でなんとかします。だから、そのことは心配しなくも大丈夫です」

 すでにルティ魔術師は友親の“下僕”状態になっている。ルティ魔術師から情報がどこかへ伝わる可能性はない。

「どうやって、なんとかするんだよ」

 ルーシェが尋ねるので、友親は「カルフィー魔道具店は金だけはあるからな。それを使ってやるんだ」と言う。

「金……金の力……」

 ルーシェは驚いてぶつぶつとそんなことを言っている。アルバート王子は少しだけ信じられないような様子だった。

「あの魔術師が金の力で行動を止めるでしょうか」

 そうは見えなかった。魔術師として研究至上主義で、それ故に、“魔素”を扱える異世界人やルーシェに執着していた。金を握らせて、行動が止まるだろうか。

「まぁ、ルティ魔術師のことは俺に任せてくれ。そのことには心配いらない。それよりも、お前達には勇者の使命とかいろいろとあるんだろう? それに集中して頑張れよ」

 なんだか誤魔化されたような気もするが、ルーシェは頷く。
 そしてルーシェは思い出したように叫んだ。

「そうだ!! 友親に頼みたいことがあった」

「なんだ?」

「ラウデシア王国に“転移”して、王国からここに連れてきて欲しい人がいるんだ!!!!」

 その言葉に、同じ部屋の中にいて、黙って佇んでいたカルフィーが片眉を上げた。

「“転移”魔法を使うのは私だぞ」

「カルフィー、“転移”魔法を使ってくれ」

 すかさず友親もそうカルフィーに命令する。ルーシェ→友親→カルフィーの命令系統が成立しているように見える。

「トモチカ、お前はそのちびの言うことをハイハイと聞くな!!」

 非常に不機嫌そうなカルフィー。
 実際、友親は過去、竜騎兵団の“消失”を解消させるためにルーシェから友親に手伝いを求められた時も、友親は即座に「分かった」と一切の迷いも見せずに承諾しているのだ。その友親のルーシェに見せる素直さや信頼が、妬ましいやらくやしいやらの気持ちがカルフィーにはあった。大体、友親の自分への態度とルーシェへの態度が違いすぎる。

「カルフィー、やってくれるよな」

 友親が赤く目を光らせるようにしてカルフィーに言うと、カルフィーはゾクリと背筋が震えるような思いを覚え、慌てて「…………ああぁ」と頷く。自分が親吸血鬼であるはずなのに、友親には逆らえない。友親が吸血鬼になったことを喜ばしく思いながらも、自分よりも遥かに力のある吸血鬼にしてしまったことを内心は失敗したと思っているのだ。


 そして友親とカルフィーの二人はラウデシア王国へ“転移”した。しばらくしてから、ラウデシア王国の竜騎兵団からバンナムとレネ魔術師の二人を連れてきた。バンナムはようやく主のそばで護衛として仕えることが出来ることに嬉しそうである。だがレネ魔術師の方は、竜騎兵団にいる希少な魔術教師であり、このように唐突にハルヴェラ王国へ行くことに対して、ウラノス竜騎兵団長やエイベル副騎兵団長から相当引き留められた(そのせいでこちらに戻って来ることに少し時間がかかったのだ)。見習い竜騎兵達に対する講義を受け持っていたからだ。引継ぎも何も出来ない。余りにも突然すぎる出立だと渋られた。
 バンナムも見習い達に対する剣や武術の講義を受け持っていた。しかしバンナムは、本来、アルバート王子の護衛の騎士である。そしてレネは彼の伴侶であるからして、主から求められれば、主のそばに仕えることこそが本筋であった。

 竜騎兵団へ迷惑をかけてしまっていることは分かるが仕方がない。それがバンナムとレネの結論で、二人はウラノス騎兵団長やエイベル副騎兵団長に頭を下げて、“転移”魔法で渡って来た。ちなみにエイベル副騎兵団長は諦めていない様子で「最大で三か月待ちます。必ず竜騎兵団に帰ってきてくださいね」と特にレネ魔術師に向かってそう言っていた。竜騎兵団にやってくる魔術師のあてはなかなかないのだ。だからこその、言葉と言える。
 しかしそんな経緯いきさつが竜騎兵団であったことなど、アルバート王子達は知らなかった。そしてそのことを全く窺わさせずに、バンナムは笑顔で、レネ魔術師は微笑みながら「殿下のおそばでまたお仕えできることを嬉しく思います」と述べていた。
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