82 / 96
第82話 慎重
しおりを挟む
「ふむ、例の対象の事で火急の用件か……」
先程まで会議中だった帝真一は、執務室に戻った所で秘書にそう告げられ眉をしかめた。
「はい」
「昨夜安田一家を監視していた衛星からの信号が途絶え、しかもその日の午前中にその対象の件に関する急用で佐藤が会いに来る。点と点を繋ぐ確実な根拠はないが……事が連続して動く以上、何らかの因果関係があると疑うべきか」
安田親子、もしくはどちらかが魔法使いである事を前提に帝真一は考え込む。
「魔法の事が分からない以上、過小評価は避けるべきだ」
彼は魔法に関して深い知識を持ち合わせてはいない。
その最大の要因は、日本という国では魔法が制限されてしまう謎の現象があったためである。
そのため、国内で活動する彼にとってこれまで魔法は脅威たりえなかった。
要は優先順位が低かったのだ。
――そして不明だからこその、強い警戒。
「最大限評価するとした場合……監視されている事に気付き、衛星を何らかの方法で攻撃。その後監視者であった佐藤の元に短時間で辿り着き、何らかの方法で懐柔して彼を手足の様に動かす。そして準備万端の状態で佐藤に同行し、ここに乗り込んで来る。そんな所か……」
今の状況で考えうる最悪を、帝真一は想像する。
もしこの想像が当たっていた場合、佐藤と迂闊に接触する事が危険である事は間違いないだろう。
だが魔法の事を詳しく知る人間がこの場に居たなら、その想定をきっと鼻で笑っていたに違いない。
――そんな事は不可能だと。
行動自体は、衛星への攻撃を除けば優れた魔法使いなら可能ではあるだろう。
問題はスピードだ。
昨日の今日でセキュリティレベルの高い帝真一の元まで辿り着くのは、いくら何でも現実的ではない。
――そう、普通であれば。
だが帝真一は魔法を深く知らず、そして知っている者もこの場にはいない。
それ故、最大限の警戒を以って慎重に行動に当たる。
「セキュリティレベルを最高レベルに引き上げさせろ」
帝真一が秘書にそう命じた。
「名目は私の命を狙う危険な魔法使いの迎撃だ。捕獲は考えなくていい」
「畏まりました」
「私は念のためこの場から退避する。用意しろ」
セキュリティを過信せず、迎撃を突破された場合に備えての退避。
万一に備えるその慎重さは評価に値するといえるだろう。
だが彼は知らない。
下手に身を隠すという行為が、無駄な手間を増やされた勇者の怒りを買う羽目になる事を。
まあもっとも……怒りを買おうが買わなかろうが、彼の悲劇はもうこの時点で決まっている訳だが。
先程まで会議中だった帝真一は、執務室に戻った所で秘書にそう告げられ眉をしかめた。
「はい」
「昨夜安田一家を監視していた衛星からの信号が途絶え、しかもその日の午前中にその対象の件に関する急用で佐藤が会いに来る。点と点を繋ぐ確実な根拠はないが……事が連続して動く以上、何らかの因果関係があると疑うべきか」
安田親子、もしくはどちらかが魔法使いである事を前提に帝真一は考え込む。
「魔法の事が分からない以上、過小評価は避けるべきだ」
彼は魔法に関して深い知識を持ち合わせてはいない。
その最大の要因は、日本という国では魔法が制限されてしまう謎の現象があったためである。
そのため、国内で活動する彼にとってこれまで魔法は脅威たりえなかった。
要は優先順位が低かったのだ。
――そして不明だからこその、強い警戒。
「最大限評価するとした場合……監視されている事に気付き、衛星を何らかの方法で攻撃。その後監視者であった佐藤の元に短時間で辿り着き、何らかの方法で懐柔して彼を手足の様に動かす。そして準備万端の状態で佐藤に同行し、ここに乗り込んで来る。そんな所か……」
今の状況で考えうる最悪を、帝真一は想像する。
もしこの想像が当たっていた場合、佐藤と迂闊に接触する事が危険である事は間違いないだろう。
だが魔法の事を詳しく知る人間がこの場に居たなら、その想定をきっと鼻で笑っていたに違いない。
――そんな事は不可能だと。
行動自体は、衛星への攻撃を除けば優れた魔法使いなら可能ではあるだろう。
問題はスピードだ。
昨日の今日でセキュリティレベルの高い帝真一の元まで辿り着くのは、いくら何でも現実的ではない。
――そう、普通であれば。
だが帝真一は魔法を深く知らず、そして知っている者もこの場にはいない。
それ故、最大限の警戒を以って慎重に行動に当たる。
「セキュリティレベルを最高レベルに引き上げさせろ」
帝真一が秘書にそう命じた。
「名目は私の命を狙う危険な魔法使いの迎撃だ。捕獲は考えなくていい」
「畏まりました」
「私は念のためこの場から退避する。用意しろ」
セキュリティを過信せず、迎撃を突破された場合に備えての退避。
万一に備えるその慎重さは評価に値するといえるだろう。
だが彼は知らない。
下手に身を隠すという行為が、無駄な手間を増やされた勇者の怒りを買う羽目になる事を。
まあもっとも……怒りを買おうが買わなかろうが、彼の悲劇はもうこの時点で決まっている訳だが。
295
あなたにおすすめの小説
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
俺は、こんな力を望んでいなかった‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
俺の名は、グレン。
転移前の名は、紅 蓮(くれない 蓮)という。
年齢は26歳……だった筈なのだが、異世界に来たら若返っていた。
魔物を倒せばレベルが上がるという話だったのだが、どうみてもこれは…オーバーキルの様な気がする。
もう…チートとか、そういうレベルでは無い。
そもそも俺は、こんな力を望んではいなかった。
何処かの田舎で、ひっそりとスローライフを送りたかった。
だけど、俺の考えとは対照的に戦いの日々に駆り出される事に。
………で、俺はこの世界で何をすれば良いんだ?
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達より強いジョブを手に入れて無双する!
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。
ネット小説やファンタジー小説が好きな少年、洲河 慱(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りに雑談をしていると突然魔法陣が現れて光に包まれて…
幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は【勇者】【賢者】【剣聖】【聖女】という素晴らしいジョブを手に入れたけど、僕はそれ以上のジョブと多彩なスキルを手に入れた。
王宮からは、過去の勇者パーティと同じジョブを持つ幼馴染達が世界を救うのが掟と言われた。
なら僕は、夢にまで見たこの異世界で好きに生きる事を選び、幼馴染達とは別に行動する事に決めた。
自分のジョブとスキルを駆使して無双する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?」で、慱が本来の力を手に入れた場合のもう1つのパラレルストーリー。
11月14日にHOT男性向け1位になりました。
応援、ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる