死に戻り聖女は魔女の烙印を押され国を追われる~え?魔王の封印が解けた?そんなの自分達で何とかしてください~

榊与一

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第28話 居場所

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「後は魔王を見つけるだけんだけど……残念ながらその居場所はまだ掴めていない」

各国との交渉はすでに終えている。
後は魔王の居場所を突き止めるだけだった。
可能ならば、封印が全て解かれてしまう前に事に当たりたい所だ。

「ガレーン国に居るのは間違いないんですよね?」

「ああ、魔物の増大は我が国で最も顕著に出ているからね。そしてその影響はこの国から離れれば離れる程、小さくなっていっている。まずこの国にいると考えて間違いないだろう」

ガレーン王国は広大な土地を持つ国だ。
しかしその大半は開発されておらず、ほぼ未開の地の様な状態だった。
その為、魔王発見の探索は難航している。

「なんだったら俺も探索に加わろうか?」

ハイネは暇だと言わんばかりに口を開く。
国内の魔物を退治しつつ、各街や村の衛兵や駐在騎士達に強化魔法をかけて周る。
そんな強行軍に近い旅から今日久しぶりに王都に帰って来たばかりだというのに、彼女は元気な事この上なしだ。

まあ移動の大半がアーニュの魔法だったというのもあるが。

「いや、君達――特に聖剣の巨大な力は魔王によって補足されている筈だ。君達が近づけば、警戒して魔王は拠点を移して移動するだろう。徒労に終わると分かっている事に、貴重な君達の力を使うつもりはないさ」

確かにガラハッド王子の言う通りだ。
私達の前に易々と姿を現してくれる傲慢な性格をしているなら、こうまで徹底して姿を隠したりはしない筈。
私の力を察知して退避するのは目に見えている。

「君達が退治して回ってくれたお陰で、魔物の方の動きもだいぶ落ち着いている。君達は何かあるまで暫くゆっくりしていてくれ。英気を養うのも君達の仕事だ」

「ちぇっ、つまんねーなー」

ハイネは机に突っ伏しぶー垂れる。
きっと、恋人のブレックスさんと会えない事の寂しさを体を動かす事で紛らわそうとしているのだろう。

ま、流石にそれは無いか。
ハイネだし。

「それじゃあ仕事があるので失礼させて貰うよ」

そう言うと、王子は会議室から出て行く。
去り際に私の手を取って口付けしようとして来たので、さり気無く避けておいた。
何だか行動が段々露骨になって来ているのは気のせいだろうか?

「あ、王子!少し宜しいですか!」

アーニュは一瞬私をムスっと睨んでから王子の後を追う。
王子に口説かれてるのを見て腹を立ててるのか。
にべもなく躱した事に腹を立てているのか。

まあ、両方か。
女心とはかくも複雑な物だ。
まあ彼女の場合は一瞬腹を立てるだけで後には全く引きずらないので問題ないが、恋が友情を壊すとはよく言った物である。

「アーニュも頑張るねぇ」

ハイネはそんな様子をみて興味なさげに呟く。
番い持ちの余裕という奴だろうか。

因みにアーニュは側室狙いの様だった。
2番目でも好きな人の傍に居たい。
泣かせる乙女心である。

私にはまったく理解できないけど。
自分を一番に見てくれる相手じゃないと、私は嫌だな。

「っ!?」

凄く嫌な気配を東から感じ、背中におかんが走る。
位置的にはたぶん封印の祠の方だ。

私は会議室から飛び出し、通路の窓から東の空へと視線を向ける。
空は黒く澱み。
光を遮る漆黒の雲が渦巻いている。

その中心地点は、間違いなく封印の祠のある場所だ。

「どうやら……どこかに去ったと見せかけて、封印の祠に潜んでいた様だね。灯台下暗しとは正にこの事だ」

王子も異変に気付いたのか、私の元に駆けてきた。
アーニュも一緒だ。

「祠の辺りから、とんでもない数の邪悪な気配が溢れ出して来ているのが分かります」

どうやら魔王の封印はもう、完全に解け切った様だ。
とは言え此方も準備はほぼ整っている。
引き延ばされて消耗戦を掛けられるより余程有難い。

「今すぐに各国への連絡と、周囲の街を避難させる。君達は暫く待機していてくれ」

そう告げると王子は長い通路を駆けて行く。
私としては一刻も早く魔王の元へと言いたかったが、魔王の周囲の邪悪な気配は膨れ上がり続けていた。

少数で向かえば、数で押されて消耗してしまうのは目に見えている。
今は準備が整うまで指を咥えて待つしかないだろう。

「遂に始まるわね」

「うん」

「本当に王子と結婚する気はないの?」

「このタイミングでそれ聞く!?」

彼女からしたら、魔王との戦いより王子との事の方が重要なのかもしれない。

「生きて帰れる保証は無いわ。だから安心したいのよ。他の女は嫌だけど、貴方になら王子を任せられるわ」

「それなら無用な心配よ。私達は全員生きて帰って来る。でしょ?」

「そうそう、勝ちゃいいんだよ勝ちゃ」

ハイネも不穏な気配に気づいたのか、私の横に並んで窓から空を見上げる。
口調は軽い物だったがその表情は真剣そのものだ。
厳しい戦いになる事を、彼女も本能的に理解しているのだろう。

「そうね、だったら話の続きは魔王討伐後にするわ。他の女は我慢できないけど、アリアが相手なら2号でも辛うじて我慢できそうだからね」

そう言うとアーニュは笑ってウィンクする。
どうやら彼女は本気の様だ。

こうなったら、魔王を弱らせてその止めはアーニュに任せてみようか?
止めを刺した彼女を、真の英雄って感じで持ち上げればひょっとしたら……まあ無理か。

魔王はそんな甘い相手では無いだろう。
そんな馬鹿な真似を狙ったら、無駄な死人が出かねない。
今は余計な事は考えず、魔王を倒す事だけに集中するとしよう。

面倒毎は後回しするに限る。
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