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神速の槍
第19話 モテ期
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「ねぇねぇ!鏡君って格闘技か何かやってるの?」
「部活は?」
「髪の毛を伸ばす能力って凄く便利だよね」
訓練が終わると同時に、女子達に思いっきり囲まれてしまった。
一体何だってんだ?
まさか千堂先生との組手の影響だろうか?
考えられる原因があるとしたら、それだけだよな?
「彼女とかいるの?」
「なんだったら私が立候補しようかな」
まあ何にせよ――これは間違いなくモテ期だ。
モテ期とは、人生に3度程訪れるという異性から極端に好かれやすくなる時期の事を指す。
まさにその第一波が俺に訪れたと言っていいだろう。
「うちの部に来なよ。鏡君だったらエース間違いなしだよ」
「何言ってんのよ!部だったらうちようち!」
「ハイハイ!ストップストーップ!」
グイグイ距離を詰めて来る女子と俺との間に、空条が強引に割り込んで来た。
「いきなり大勢で詰められても、鏡っちが困るでしょ!ここは私、不肖空条真奈美が取りしきるぜい!」
空条が気を効かして……というよりも、面白そうな事なので首を突っ込んで来た感じだな。
まあ俺は聖徳太子じゃないから、大勢で来られたら対応に困るのは事実だ。
だからまあ、助かるっちゃ助かる。
「因みに部の勧誘は諦めて!鏡っちは孤高の帰宅部を貫くらしいからね!」
「え?」
俺はそんなものを宣言した覚えはないんだが?
まあ確かにこの2週間、さっさと寮に帰って自室でプラーナ増幅用の瞑想ばかりしていたのは確かだが、だからと言って別にクラブ活動に興味がない訳ではない。
面白い所があれば入ってもいいかとは思っている。
「何せ!大親友の誘いを断るぐらいだからね!」
ん?大親友?
誰の事だ?
全く思いつかないのだが?
因みに超次元サッカー部を袖にしたのは、活動内容が余りにもアレだったからだ。
孤高とやらを貫く為ではない。
「じゃあ並んで並んで!」
空条が鼻息巻いて女子達を仕切り、整列させ始める。
その時、突然道場の扉が開いた。
「やだっ……うそ……」
「王子よ!王子だわ!」
「きゃあ!王子!」
中に入って来た人物に気づき、こっちを見ていた女子全員が俺に尻を向けて黄色い声を上げる。
整列が崩れ、並んでいた女子達が波の様にそいつに押し寄せる。
「ありゃりゃー、まさかの王子登場。鏡っちのモテ期、終わっちゃったね」
俺のモテ期、たった5分以下とかいくら何でも短くね?
ポンと肩を叩かれ振り返ると、そこにはいい顔をした泰三と理沙が――
「お帰り。友よ」
「ざまぁ」
取り敢えず無言で泰三のすねを蹴り飛ばす。
まあ理沙は女の子だから見逃してやろう。
「しっかし……」
道場に入って来た男――王子とやらは、何故か真っすぐ俺の方に向かって歩いて来る。
何か用でもあるのだろうか?
女子達が騒ぐだけあって王子の顔立ちはかなり整っており、その動きに合わせ、興奮しきっている女子達の壁も此方へと移動してきた。
何とも言えない光景だが、これだけはハッキリと言える。
何かすっげームカつく、と。
「君が鏡竜也か?」
王子が目の前で止まる。
やはり俺に用件があった様だ。
しかし俺はこいつの事を知らないのだが?
「あんた誰だ?」
「ちょっと鏡!あんた王子になんて口の利き方してんのよ!」
「王子に失礼でしょ!!」
「「そーよそーよ!」」
ちょっと尋ねただけなのに、周りの女子達に思いっきり噛みつかれてしまう。
清々しいまでの掌返しに、女はこえーなと俺は肩を竦めた。
「彼に用事があるんだ。黙っていてくれないか」
「「はいぃ、王子ぃ」」
王子に声を掛けられて嬉しいのか、女子達の顔が惚け、まるで夢見心地の様な表情に変わる。
目をハート型にするというのは、きっとこういう状態の事を言うのだろう。
「俺の事は、金剛劔と言えば分かるだろう」
金剛劔……こいつがグングニルか。
さっき千堂先生が俺に興味を持ってるとは言ってたが、まさかその直後に俺を訪ねて来るとはな。
流石に予想外だ。
「用がある。少し顔を貸して貰おうか」
金剛は顎先で道場の外を指した。
人前じゃ駄目って事は、勝負を挑まれてると考えて良いだろう。
決闘の類は、この学園じゃ基本禁止されているからな。
「いいぜ」
俺の返事を聞いた金剛は、口角を上げてにやりと嬉しそうに笑う。
そして踵を返し、そのまま道場の出口に向かって歩き出した。
「おいおい鏡。金剛って言ったら四天王だぞ。下手について行ったらどんな目に合わされるか……」
「大丈夫だよ」
理沙が心配そうに声を掛けて来るが、俺は笑顔で返した。
さて、神速の槍の実力とやらを見せて貰うとするか。
「部活は?」
「髪の毛を伸ばす能力って凄く便利だよね」
訓練が終わると同時に、女子達に思いっきり囲まれてしまった。
一体何だってんだ?
まさか千堂先生との組手の影響だろうか?
考えられる原因があるとしたら、それだけだよな?
「彼女とかいるの?」
「なんだったら私が立候補しようかな」
まあ何にせよ――これは間違いなくモテ期だ。
モテ期とは、人生に3度程訪れるという異性から極端に好かれやすくなる時期の事を指す。
まさにその第一波が俺に訪れたと言っていいだろう。
「うちの部に来なよ。鏡君だったらエース間違いなしだよ」
「何言ってんのよ!部だったらうちようち!」
「ハイハイ!ストップストーップ!」
グイグイ距離を詰めて来る女子と俺との間に、空条が強引に割り込んで来た。
「いきなり大勢で詰められても、鏡っちが困るでしょ!ここは私、不肖空条真奈美が取りしきるぜい!」
空条が気を効かして……というよりも、面白そうな事なので首を突っ込んで来た感じだな。
まあ俺は聖徳太子じゃないから、大勢で来られたら対応に困るのは事実だ。
だからまあ、助かるっちゃ助かる。
「因みに部の勧誘は諦めて!鏡っちは孤高の帰宅部を貫くらしいからね!」
「え?」
俺はそんなものを宣言した覚えはないんだが?
まあ確かにこの2週間、さっさと寮に帰って自室でプラーナ増幅用の瞑想ばかりしていたのは確かだが、だからと言って別にクラブ活動に興味がない訳ではない。
面白い所があれば入ってもいいかとは思っている。
「何せ!大親友の誘いを断るぐらいだからね!」
ん?大親友?
誰の事だ?
全く思いつかないのだが?
因みに超次元サッカー部を袖にしたのは、活動内容が余りにもアレだったからだ。
孤高とやらを貫く為ではない。
「じゃあ並んで並んで!」
空条が鼻息巻いて女子達を仕切り、整列させ始める。
その時、突然道場の扉が開いた。
「やだっ……うそ……」
「王子よ!王子だわ!」
「きゃあ!王子!」
中に入って来た人物に気づき、こっちを見ていた女子全員が俺に尻を向けて黄色い声を上げる。
整列が崩れ、並んでいた女子達が波の様にそいつに押し寄せる。
「ありゃりゃー、まさかの王子登場。鏡っちのモテ期、終わっちゃったね」
俺のモテ期、たった5分以下とかいくら何でも短くね?
ポンと肩を叩かれ振り返ると、そこにはいい顔をした泰三と理沙が――
「お帰り。友よ」
「ざまぁ」
取り敢えず無言で泰三のすねを蹴り飛ばす。
まあ理沙は女の子だから見逃してやろう。
「しっかし……」
道場に入って来た男――王子とやらは、何故か真っすぐ俺の方に向かって歩いて来る。
何か用でもあるのだろうか?
女子達が騒ぐだけあって王子の顔立ちはかなり整っており、その動きに合わせ、興奮しきっている女子達の壁も此方へと移動してきた。
何とも言えない光景だが、これだけはハッキリと言える。
何かすっげームカつく、と。
「君が鏡竜也か?」
王子が目の前で止まる。
やはり俺に用件があった様だ。
しかし俺はこいつの事を知らないのだが?
「あんた誰だ?」
「ちょっと鏡!あんた王子になんて口の利き方してんのよ!」
「王子に失礼でしょ!!」
「「そーよそーよ!」」
ちょっと尋ねただけなのに、周りの女子達に思いっきり噛みつかれてしまう。
清々しいまでの掌返しに、女はこえーなと俺は肩を竦めた。
「彼に用事があるんだ。黙っていてくれないか」
「「はいぃ、王子ぃ」」
王子に声を掛けられて嬉しいのか、女子達の顔が惚け、まるで夢見心地の様な表情に変わる。
目をハート型にするというのは、きっとこういう状態の事を言うのだろう。
「俺の事は、金剛劔と言えば分かるだろう」
金剛劔……こいつがグングニルか。
さっき千堂先生が俺に興味を持ってるとは言ってたが、まさかその直後に俺を訪ねて来るとはな。
流石に予想外だ。
「用がある。少し顔を貸して貰おうか」
金剛は顎先で道場の外を指した。
人前じゃ駄目って事は、勝負を挑まれてると考えて良いだろう。
決闘の類は、この学園じゃ基本禁止されているからな。
「いいぜ」
俺の返事を聞いた金剛は、口角を上げてにやりと嬉しそうに笑う。
そして踵を返し、そのまま道場の出口に向かって歩き出した。
「おいおい鏡。金剛って言ったら四天王だぞ。下手について行ったらどんな目に合わされるか……」
「大丈夫だよ」
理沙が心配そうに声を掛けて来るが、俺は笑顔で返した。
さて、神速の槍の実力とやらを見せて貰うとするか。
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