スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一

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第37話 G

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朝起きて食事をとってから、スライム先輩からポーションを頂く。
それから俺は次の狩場、ケトラのいるダンジョンへと向かう。

「はっ!」

ケトラの突進を軽く回避する。
勝手知ったるとまでは言わないが、俺が狩ってきた魔物の中では、こいつが一番多く戦った相手だ。
ましてや身軽と怪盗化で敏捷が大幅に上がっている今、苦戦する理由もない。

既に100%になっているダブルクリティカルを連発して、サクッと仕留めてやる。

「これなら1日で30まで上がりそうだな」

狩り効率は依然と比べて段違いだ。
ダブルクリティカルに加えて、明らかに以前より火力も上がっている。
なのでブーストポーションの効果も合わせて、1日あれば十分と見た。

実際、半日ほどで俺はレベルは30に達する。
想定より早かったのは、索敵速度を上げたお陰だ。

「ゼログラヴィティとミスティックワイヤーのコンボ便利すぎ」

戦闘ではカードスローを一切使わず、SPとMPをワイヤーアクションに費やして高速移動で索敵時間を圧縮しまくった。
ゲームの様にすぐ次の魔物をと行かない現実のダンジョンに於いて、索敵時間の圧縮は想像以上に効率が上がる。
サクッと倒せる敵なら猶更だ。

「レベル30のスキルは一個だけか」

ミスティックホール。
名前だけ見るとなんだか良く分からない物だが、要は収納空間——インベントリである。

収納容量はレベル1で100リットル。
2リットルのボトル50本分なので、レベル1の時点で結構な容量がある。

「今すぐにはいらないけど、まあ後々役に立つ感じだな」

武器とか鎧のレアドロップが出たら、ソロだと持ち帰るのが大変だ。
インベントリがあればその心配がなくなる。
後、水とか食料を持ち歩く必要がなくなるのは便利だ。

……まあ水や食料も、今の所必要ない訳だが。

シーカーに覚醒すると、飢餓や脱水に極端に強くなると言われている。
普通なら3日も水を口にしてないと人間は死んでしまうらしいが、シーカーだとそれ位で死ぬ事はまずない。
まあコンディションは流石に悪くなるだろうが。

なので、余程大きなダンジョンにでも籠らない限り、水や食料をダンジョンに持ち込む必要はないのだ。
シーカーは。

「さて、今日は帰って……明日からはスライム三兄弟のいる所だな」

翌日、俺は目的のダンジョンへと向かう。
今回はスライムダンジョンでポーションを手に入れずに。
毎日手に入れなきゃならない物でもないからな。

今日はアイアンスライムからレアアイテムを頂く予定だ。
結構なお値段するから。
【幸運】のお陰でドロップ率が上がってるとは言え、お金はいくらあっても足りないぐらいだからな。
きっちり稼いでいかんと。

因みに、ブーストポーションの情報は既にネットに書き込んである。
シーカー協会にも報告済みだ。

ま、ネットじゃ完全に嘘つき呼ばわりされたし、協会の受付の人も胡散臭そうにしてたから、真面に調査されない可能性もあるけど……まあ情報として広がらなかったとしても、それは俺の知った事ではない。

実際に盗んで見せて、更にアイテムも鑑定して証明するとか、そんな目立つ真似してまで情報を確定させるつもりはないし。

「他人のレベリングの事なんか、俺が気にする事じゃないからな」

ダンジョンについた俺は、人目が無い事を確認して変身する。

「遅い!」

まずはウッドスライムと遭遇。
その体当たりを軽く躱しつつ、手にした短剣で切り裂いてやる。

以前はその速度に完璧に対応できず、ダメージ無視で戦っていた。
だが、今の俺の速度はあの頃よりずっと上がっていた。

敏捷は1に付き全ての速度が2%上昇で、変身中は15上がるので30%アップ。
そして身軽はレベル5で素早さが30%上昇——レベル1で10%あがり、それ以降はレベル×5%上がる。

変身で30%上昇して、そこから更に30%アップ。
効果は乗算なので、今の俺の速度は以前の69%増しである。
ここまで早くなれば、ウッドスライムの速度にも余裕で対応可能だ。

「ダブルクリティカルが出れば一発だな」

HP(表示はなく概念的な物)がストーンスライムより高かったので、以前はダブルクリティカル一発で倒せなかったが、短剣マスタリーのレベルが上がった事でダメージが上がって今では一発である。

「よし、ガンガン狩っていこう」

ワイヤーアクションを使って高速移動。
道中にいるスライム達を狩りながら、俺は奥のアイアンスライムのゾーンへと向かう。
アイアンが一番経験値がおおいからな。

ああ、言うまでもなくストーンスライムの方も瞬殺だ。
売りの硬さも、俺には全く関係ないからな。

「到着」

アイアンスライムゾーンに到達。
こいつのスピードにも問題なく対応できるし、一発なのでサックサクだ。

狩って狩って狩りまくてやるぜ!

そんな風にテンション上げてアイアンスライム狩りをしてたら――

「何あれ!?」

ワイヤーアクションで移動中、思いっきり他のシーカーと遭遇してしまう。
3人組の女の子だ。
しかもかなり顔面偏差値が高い。

「未発見の魔物!?」

「二人とも気を付けて!」

魔物と間違えられてるっぽいので挨拶して誤解を解こうかとも思ったが……止めておく。
可愛いからナンパだと思われそうで嫌だし。
なので俺は素早くそのルートから撤退し、別のルートへと移動する。

「協会に通報されるかな?ま、大丈夫か」

協会も変なのがいるって通報されても、一件ぐらいじゃ動かんだろ。
そこまで暇じゃないだろうし。
まあ仮に調査が入っても、明日にはもういないしな。
このペースならここも一日で卒業だ。

「いやー、しかし可愛かったなぁ」

高速移動中だったのでしっかりと見れてはいないが、三人がアイドル並みだったのは間違いない。
いつかは俺も、あんな感じの可愛い彼女が欲しい物である。
ま、今は一流シーカーになる事が先だけど。
いつかは、さ。
俺も一応男な訳だし。

◇◆◇

「行っちゃった……何あれ?新手の魔物?」

「違うんじゃない?魔物なら襲って来ただろうし」

「え?じゃあただのコスプレ?」

「うーん、そうなんじゃないかな」

高速で飛び去りった怪しい影を見失い、青髪ショート、金髪ミドル、赤髪ロングの三人組がそれぞれ感想を口にする。

「でもあれ、空飛んでたよ?」

「スキルか魔法じゃない?」

「ああー、そういえばあるって聞くね。飛行魔法とか空飛ぶスキル」

「でもその手のスキルとか魔法って、かなり高レベルじゃないと覚えられないんじゃ?もしくはヒーロークラスか」

「ヒーロークラス!」

「おお、ヒーロークラスかぁ」

「どうする?追いかけてインタビューしてみる?」

赤髪ロングの女性が、自分のカチューシャの横を指でつつく。
そこには撮影用のカメラが取り付けられていた。

ダンジョン内は異空間だ。
そのため電波が通じていないので、リアルタイム配信こそできない。
だが、機械類は普通に動くので映像を撮る事は出来た。

そしてこの3人組は、ダンジョン内での狩り動画を上げる動画投稿者——いわゆるCチューバーである。

「えー、追いつけるかなぁ。スッゴク速かったよ」

「仮に追いつけても、絶対やめといた方がいいよ」

「えー、なんで?インタビュー出来たら取れ高最高じゃん。スライムダンジョンを飛び回る不審者のインタビューとか」

「確かにバズりそう」

「はー……あんたら、この前会った大量殺人の事もう忘れたの?」

青髪ショートカットの女性が、呑気な二人の言動に溜息を吐く。

「え?あの人殺人鬼なの?」

「それはないんじゃない?もしそうなら、通り過ぎずに襲って来たはずだし」

「そうだよねぇ。そもそも犯人、自殺しちゃってるし」

「あんたらねぇ。初回スルーされたからって、追いかけて声をかけても大丈夫なんて保証はないでしょうが。人間なんてちょっとした事で考えが変わったりするもんなんだから」

「ああ、まあ……リスナーにもそういう人いるもんねぇ」

「ダンジョン外の生配信で『コメントスルーされたー!』って狂った様に荒らしてくる人もいるもんねぇ」

「だいたいあんな怪しい格好してる人間が真面な訳ないでしょ」

普通の人間ですら、ちょっとスイッチ踏んだだけで激変する事があるのだ。
あれだけ怪しい人間なら、猶更と考えるのも無理はない。

「しゃーない。じゃあインタビューは諦めるか」

「そうだね。けど……あの人高レベルっぽいし、こんな場所で何してたんだろ?」

「うーん……すっごい速度で飛んで行ってたし、ミスリルスライム狙いとか」

「ああ、ありえるねー」

「ダンジョン全体探索中って感じなわけね」

「でもこの先もみないでUターンしてったよね?」

「あたし達と被るのを避けたか、もしくは奥から返って来てる所と思われたのかも」

「あー、なるほど」

「ま、いいや。今日はもう帰りましょ。さっきの、ちゃんと撮れてるんでしょ」

「うん、バッチリ」

「じゃあ次の動画はそれを上手い事弄る感じで」

「オッケー」

三人組はダンジョンからそのまま出ていき、そして翌日、面白おかしく編集した動画を公開した。

その三人の動画は、それまでの投稿とは別次元の最高のバズりを叩き出す事に。
そして動画に映っていた怪盗化していた~王道光《おうどうひかる》には、とあるあだ名が付けられる。

マントをはためかせ、高速で水平飛行する黒い姿からついたそのあだ名は――

G。
つまりゴキブリだ。

その事を王道光が知って発狂するのは、まだまだ先の話である。


因みに、カラスの顔の様なマスク部分は薄暗かったのと、映像の粗さと角度のせいで視聴者に気づかれていなかった。
もしハッキリ映っていれば、あだ名はカラスだったかもしれない。
そう思うと不憫な事である。
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