スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一

文字の大きさ
59 / 152

第58話 クリア

しおりを挟む
「私がタゲを取った奴には攻撃しないで下さいねー」

着地と同時に勇気がそう言い、追いかけて来るラーテルの群れに突っ込んだ。

「分かった」

攻撃をすると、ターゲットが移ってしまう可能性がある。
だから勇気は俺に、受け持つ魔物を攻撃するなと言ってきたのだ。

……カード、それにスカンクバスターは使用禁止だな。

遠距離攻撃は外した時の流れ弾が。
そしてスカンクバスターは広範囲攻撃(?)だからな。
特にオナラからの放火は火力も高めなので、絶対に使うのは駄目だ。

「しかし、どうやってターゲット取るつもりなんだ?」

バーサカー・ラーテルには既に攻撃やデバフを掛けているため、結構な攻撃欲求ヘイトを俺は稼いでしまっている。
それを剥がして自分に向けるだけでも一苦労だろうに。

「いち!に!さん!し!ご!ろく!なな!」

ラーテルのヘイトは現在俺に向いていた。
そのため、勇気を無視してそのまま突っ込んでくる。
そのラーテル達の体を、勇気は通り過ぎる際にカウントしながら手で触れてタッチしていく。

そして――

「縛!」

ラーテルの群れを通り抜けたところで振り返り、両掌で何か形を作って叫んだ。

『『『『『『『キシャアアアアア!!』』』』』』』

その瞬間、ラーテルの体の周りに光る何かが纏わりついた。

「敵を縛るスキルか」

先程、勇気が触れた7体のラーテルが光のエネルギーに拘束され動きを止める。
拘束系のスキルだ。
しかもボスに通用するレベルの、とんでもなく強力な。

どうやって7体のターゲットを奪うのかと思っていたが、なるほど、こんなスキルがあるなら簡単だ。
この手のスキルは、異常に敵のヘイトを稼ぐって言うからな。

ボス相手に長時間の拘束は通用しないだろう。
直ぐに解除されてしまうだろうが、それでもターゲットは全て勇気へと移ったはずである。

「って、感心してる場合じゃないな」

3体のラーテルが俺の眼前に迫る。
そいつらの突進攻撃を横に飛んで躱し、俺は短剣を構えた。

『『『キシャアアアア!!』』』

「動きがハッキリ見えるってのはデカいな」

ラーテルが俺を囲むように動いてから攻撃してくる。
俺はそれを、ある程度余裕を持って躱す。

先程までなら、大きく逃げる事しかできなかっただろう。
だが今は違う。
バフが増えたというのもあるが、魔眼によって相手の動きが容易く予測できるのが大きい。

「これなら!」

ラーテル3体を相手に、その攻撃を無理なく回避しつつ堅実に本体へとダメージを与えていく。
相手の耐久力が飛びぬけているので時間はかかるだろうが、これならきっと勝てるはずだ。

勇気の方は……

ワイヤーを使ってラーテル達から間合いを離す様に動きつつ、俺は視線を勇気の方へと向ける。
様子を確認するために。

「すげぇな……」

7体のラーテルの拘束は既に解除されており、それらの相手を勇気は一人で行っていた。
それもいとも容易く。

「ラーテルをまるで子ども扱いしてやがる」

スピードが速い訳ではない。
たぶん俺と同じか、それより遅いぐらいだろう。
にもかかわらず、勇気はラーテル7体を容易く手玉に取っていた。

唯々上手いのだ。
身のこなしや、敵を捌く際の立ち回りが。

流れる様な無駄のない見事な動き。
その姿は美しいと言ってさえいい。

……熟練、いや、もう達人レベルの動きだ。

勇気の戦いぶりなら、10体同時に相手する事も出来そうにすら見える。

「こんな動きが出来るんなら、ボス以外全部相手にしてくれれば楽に――」

その時、勇気と目が合う――お互いマスクをかぶっているが、それが何となく感覚で分かった。
そしてあいつの目が、こう俺に語り掛けてくる。

『たった3匹ごときで手間取ってるんですか?しかも出来たら他の2体も私に任せたいとか……情けないですねぇ』

と。

ただの幻聴ではない。
被害妄想でも。
間違いなく勇気はそう目で語っている。

それが分かるのは、恐らく召喚との繋がりによるものだろう。

「言ってくれるぜ」

ここまで言われて、出来たら追加で相手お願いとは言えない。
たった3体ぐらい、相手してやるさ。

まあボス3体をたった呼ばわりするのもあれな気もするけど……

『『『キシャアアアア!』』』

「テメーが喰らえ!」

追いつき、ラーテル3体が同時に俺に攻撃を仕掛けて来た。
俺はそれをラッキースケベで本体を引き寄せ、残り2体の攻撃への壁とする。

『キシャアアアアアア!』

本体が悲鳴を上げる。

「隙だらけだ!」

ただ引き寄せただけなら、2度目なので直ぐに対応して来ただろう。
だが、今回は引き寄せると同時に、背中に分身からの強烈な攻撃を喰らったのだ。
隙が出来ない訳がない。
他2体も、本体が邪魔になってか動きを止めている――物体越しにもエネルギーが見えるので、背後の2体の動きも手に取る様に分かる。

絶好の攻撃チャンスだ。
一気にダメージを稼がせて貰う。

「オラオラオラ!」

右手の短剣で素早く切りつけつつ、左手でカードを叩きつけてやる。
至近距離からならカード投げも外す心配はない。

『キシャアアアア!!』

「ちっ、もっと殴らせろよ」

残念ながら、攻撃チャンスは長くは続かない。
本体が精神的なショックから立ち直り、反撃して来た。
今の俺なら正面から打ち合う事も可能だが、当然残り2匹も回り込んで攻撃してくるので、それは諦め引いて間合いを開ける。

どうすれば素早く処理できるか?

そんな事を頭の隅で考える。
勇気に馬鹿にされたままだと腹立たしい。
なので素早く本体を処理し、少しでも見返したい気持ちがあったからだ。

「よし!カードをガンガン使っていこう!」

出した結論が、カードを使っていく事だ。
外した場合、流れ弾が敵に当たって4体目を引き寄せるんじゃないか?
その心配はない。
何故なら、カードは投げないからだ。

投げさえしなければ、外れて別の敵に当たる心配はない。

「まずはこれだ!」

それにあたって、俺はあるアイテムをミスティックホールから取り出す。
取り出したのは……スキルブック【マジックブースト】だ。

これは魔法の消費MPを増やす代わりに、増やした%の半分の%分だけ威力が上がるスキルとなっている。
消費増は最大200%なので、威力アップの限界は100%だ。

そんな物使ってどうする?

もちろん、カードの追加効果の威力を上げるのだ。
カードクリエイトが魔法扱いじゃない場合完全に無駄になるが、その時はその時である。

後で高値で売ろうとしてたけど、俺は自らのプライドの為だけにこれを使う。

「カードクリエイト!」

消費200%増で生み出してみたら――

「よし!成功した!」

―—見事に成功。

これで威力100%アップだ。

「はっ!」

カードを更に何枚も作り、それを自らの足元にばら撒く。

『『『キシャアアアアア!』』』

そこに突っ込んでくる、ラーテル達。

「喰らえ!」

俺は後ろに下がりながら、地面に落としたカードを発動させる。

『『『キシャアアアアア!』』』

カードが雷と変わり、ラーテル達を直撃する。

「流石威力2倍!」

強化前とは明らかに違う雷に感心しつつも、俺は間合いを詰め、魔法ダメージで硬直した本体へと攻撃する。

因みに、雷に敵を硬直させる特殊な追加効果などはないぞ。
あくまでも痛みや衝撃で動きが止まってるだけだ。

『キシャアアアア!』

「カウンターブロー!」

本体が怒りに任せて反撃してくる。
俺はそれを躱さず、敢えてカウンターブローで迎え撃つ。

カウンター時にダメージが大幅に上がる攻撃スキルなので、ダメージを取るにはこういう回避したくなるタイミングで反撃を狙うのが、ダメージ効率が一番よくなる。

「ぐ、つぅ……」

カウンターブローは決まったが、俺も奴の爪が掠ってしまった。
とは言え、この程度なら問題ない。
バフのお陰で防御力も上がってるし、何より、多重幸運ガードのお陰でダメージ反射も入るからな。

なのでむしろ狙い通りだ。

「おっと!囲まれるのは勘弁だぜ!」

残り2体に囲まれそうになったので間合いを取る。
そして再びカードトラップを周囲にまき散らしつつ、ミスティックホールから取り出したポーションで念のためダメージを回復しておく。

因みに、敵がばら撒いたカードを避けた場合は回収――自動回収可能――して再度ばら撒くだけである。

カードばら撒きトラップによる魔法ダメージ。
ラッキースケベを使った、ラーテル本体の肉壁によるフレンドリーファイヤ。
そしてその隙に生じた際の連続攻撃と、カウンター攻撃と反射ダメージ。

それらが積み重なっていき――

『ギシャ……アアァァ……』

「俺の……勝ちだ!」

―—ラーテルの本体が崩れ落ち、その体が消えてなくなる。

そしてコピー品達も消えていく。

「おおー、随分早く終わりましたねぇ。私の予想の半分ぐらいの時間ですよ。さっすが、私のマスターだけはあります」

ラーテル共が消えたので、勇気が俺の所へやって来る。
こいつの予想を超えれたのは純粋に嬉しくはあるが、7体相手に余裕しゃくしゃくだったこいつに言われてもって感じではある。

「お前に言われてもなぁ……全然本気出して無かっただろ?」

「おっと、非難気な眼差しですね。まあ確かに、私がその気になれば10匹全部相手にする事も出来ましたよ。でも、それじゃあマスターの為にならないじゃないですか。強敵と戦ってこそ、シーカーは強くなるもんです。少年漫画なんかの定番ですよ」

「漫画と一緒にすんなよ。いやまあ、確かに良い経験にはなった気もするが……」

良い経験にはなったが、進んでしたくないってのが本音である。

「にしても……なんでドロップがないんだ?」

ボスは討伐時は、アイテムが複数落ちるのが常識だ。
だが消えた分身たちは元より、本体すら何も落としていない。

「って、経験値も入ってねぇじゃねぇか!」

違和感を覚えレベルを確認したら、レベルも上がっていなかった。
経験値が入る範囲内のボスをソロで倒して、レベルが上がらないとは到底思えないので、経験値自体取得できていないのだろうと思われる。

「ああ、それなら大丈夫ですよ」

「何が大丈夫なんだ?」

『特殊条件下でのボス討伐の、評価査定が終了しました』

女性の声が場に流れる。
俺がここに連れて来られた時の声と一緒だ。

『報酬を配布します』

「ほらね」

どうやら、何らかの報酬が貰える様だ。

何もなしではないみたいだけど……この声の主は一体誰だ?
連れてこられた時はパニくっていて考えもしなかったが、謎もいい所である。

ひょっとしたら勇気が何か知ってるかもと、彼の方を見ると――

「禁則事項です」

俺の考えを読んだのか、勇気が顔の前に人差し指を立ててそう言う。
どうやら、教えてくれる気はないみたいである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

狐侍こんこんちき

月芝
歴史・時代
母は出戻り幽霊。居候はしゃべる猫。 父は何の因果か輪廻の輪からはずされて、地獄の官吏についている。 そんな九坂家は由緒正しいおんぼろ道場を営んでいるが、 門弟なんぞはひとりもいやしない。 寄りつくのはもっぱら妙ちきりんな連中ばかり。 かような家を継いでしまった藤士郎は、狐面にていつも背を丸めている青瓢箪。 のんびりした性格にて、覇気に乏しく、およそ武士らしくない。 おかげでせっかくの剣の腕も宝の持ち腐れ。 もっぱら魚をさばいたり、薪を割るのに役立っているが、そんな暮らしも案外悪くない。 けれどもある日のこと。 自宅兼道場の前にて倒れている子どもを拾ったことから、奇妙な縁が動きだす。 脇差しの付喪神を助けたことから、世にも奇妙な仇討ち騒動に関わることになった藤士郎。 こんこんちきちき、こんちきちん。 家内安全、無病息災、心願成就にて妖縁奇縁が来来。 巻き起こる騒動の数々。 これを解決するために奔走する狐侍の奇々怪々なお江戸物語。

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

処理中です...