スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一

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第68話 気になる

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俺は旅をしていた。
日本全国津々浦々。

自分探しの旅を――な訳はない。
ダンジョン巡りである。

なんのためにそんな事をしてるのか?

もちろん、ダンジョンにマーキングを置くためだ。
ボス討伐の為の。

勇気はいつでも好きな所に飛んで行けるが、俺の場合は事前にダンジョンにマーキングしないと神出鬼没で瞬間移動できないからな。

あー、面倒くさい面倒くさい。
遠出が嫌いな訳ではないけど、単にマーキングするためだけの巡回とか楽しいわけがないのだ。

「勇気の能力で俺も一緒に移動出来たら楽だったのにな」

電車に揺られながら独り言ちる。

『世の中そんなに甘くありませんよ。むしろ、マーキングさえすれば神出鬼没で好きな場所に飛べるマスターは相当恵まれてる方ですから』

「まあ確かにそうだな」

勇気の変身能力は透明な姿にもなれる様で、今はその状態だ。
更に声も俺にだけ聞こえるテレパシー的な物で送られてるんで、周囲からは俺が独り言をぶつぶつ言っているように見える事だろう。

ま、周囲に人がいれば、の話ではあるが。
真昼間の電車だから同乗者は少なく、俺の声の聞こえる範囲に人はいないから安心してくれ。

それでなくともダンジョン内では、怪盗GGとして不審者扱いされてしまっているからな。
外ではそうならないよう、細心の注意を払ってる。
外でまで変な奴扱いされるのは気分的にキツイから。

「そういやさ……隠し通路ってダンジョンにはあるよな?」

『ありますねぇ。それがどうかしましたか?』

「全然ないんだけど、やっぱ数は少ないのか?」

Bランク以上のダンジョンを順次回って行ってる訳だが、隠し通路があるダンジョンはまだ見つかっていない。
今まで見つかった物も2か所しかないので、数は相当少ないんじゃないかと思われる。

『多くはありませんね。手に入る物がスペシャルですんで』

「まあそうだよな。勇気は隠し通路のあるダンジョンの場所とか知らないか?」

勇気が知ってて、場所を教えて貰えるなら探すのが楽でいいのだが。

『禁則事項です』

教えてはくれない様だ。
けち臭い事である。

『マスター……なんでもかんでも楽しようなんてさもしい根性じゃ、立派なシーカーにはなれませんよ。自分の足で立って、歩ける男にならないと』

「むう……」

ぐうの音も出ない。
普段はふざけた感じの言動が多い勇気だが、たまに正論の正拳突きをぶちかましてくるから困る。

『ま、地道に頑張りましょう』

「そうだな」

目的の駅に着いたので俺は電車を降りた。
向かう先はAランクダンジョンで、この駅の地下にゲートがある。
ああ、もちろん構内じゃないぞ。
行くには一旦駅から出て、階段で降りていく必要がある。

「あれ?おにーさんじゃん。お久しぶりー」

改札から出た所で、顔見知りと遭遇して声を掛けられる。
相手は天魔輪廻だ。

「ああ、久しぶり……ひょっとして、Aランクで狩りしてきた感じ?」

あれから1年。
普通に考えれば、低ランクで顔を合わせた相手がもうAランクで狩りをしてる等考えられない事だ。

だが、彼女なら話は変わって来る。
ヒーロークラスに加えて、俺の【幸運】と似た系列と思われる【魔力】なんて強力なユニークスキル持ちな訳だからな。

というかたぶん、いや絶対、【魔力】は【幸運】より強烈だろう。
最大で魔力の効果が25倍とか、『喰らったら敵は死ぬ』状態もいい所だからな。
ランクアップして必要経験値が10倍になっている事を考慮しても、そこまで驚く事ではない。

「うん、ここのボスを狩って来たんだー」

天魔輪廻があっけらかんとそう言う。
狩りどころかもうAランクのボスまで狩ってんのか、この子は。
天才おそるべし。

「凄いな」

「ああでも、ソロじゃないよ。パーティーメンバーと一緒ね」

「ああ、パーティーを組んでるのか」

まあそりゃそうか。
いくら火力がぶっ飛んでいると言っても、防御面には不安が残るだろうし。
まともな神経してたら、流石にAランクレベルではパーティー組むよな。

「そう、頼もしい仲間がいるの!」

「羨ましい事だ」

「ふむ……」

輪廻が、唐突に俺のすぐ横に視線を向ける。

「どうかしたのか?」

「んー、いやなんかそこにいる様な……」

こいつ、まさか透明化してる勇気に気づいたのか?
気配も臭いも消せるので、絶対誰にも見つかりませんとか勇気は豪語していたんだが……

あっさり見つかってるじゃねーか。
口ほどにもない奴である。

まあ輪廻がとんでもなく鋭いだけなのかもしれないが。

「ま、気のせいかな」

輪廻は軽く首を傾げるが、何もないと結論を出した。
少々怪しくはあったが、まあ一応セーフって事にしておいてやろう。

「輪廻。知り合いか?」

「お友達かしら?」

階段を上ってきた背の高い中年男性。
それと、20後半から30代前半ぐらいの女性がこっちにやって来て輪廻に話しかけてきた。

彼女の知り合いかな?

「うーん、友達かどうかは微妙かな。ちょっとした知り合いだね。あ、この二人が私のパーティーメンバーだよ。私の伯父と親戚のおねーさんね」

まあ確かに友人ではない。
しかし彼女、親戚同士でパーティーを組んでるんだな。
まあその方が信頼は出来るから、良いっちゃいいのか。

「初めまして。王道光おうどうひかるです」

「俺は竜崎守りゅうざきまもる

「私は神崎かんざきエデンよ」

竜崎守さんに、神崎エデンさんね。
まあエデンさんはハーフだな。
見るからにハーフ顔の綺麗な顔してるし。

どんな能力してるんだろうな?

彼女が組んでいる人達がどういった能力を持っているのか少し気になったが、まあ我慢しておく。
鑑定は分かる人間には分かるって、目の前の輪廻に思いっきり忠告されてるからな。

「おにーさんも、ひょっとしてここで狩りだったりするの?」

「ははは、まさか。ここには用事で来ただけさ」

自分の状態をペラペラしゃべる気はないので、誤魔化しておいた。
どこから怪盗の正体がばれるか分からないのだから、油断は禁物だしな。

まあでも、嘘は言ってないよな。
今日は、マーキングを付けるという用事の為だけに来ただけだし。

「ふーん、ま、そりゃそうだよね。じゃあ用事があるし、私達行くね。まったねー」

「ああ」

輪廻が、竜崎さん達と改札を潜ってホームへと消える。
慌ただしい子だ。

「さて、じゃあマーキングに行くか…………ん?」

ダンジョンゲートへと歩き出し、だが少し歩いた所で俺は振り返った。
勇気が付いて来ていなかったからだ。
姿は見えないが、そういうのは感覚で分かる。

「どうかしたのか?」

勇気の元まで戻って小声で声をかける。

『へ?え……あ、ああ……なんていうか、懐かしい感じがした物ですから』

「懐かしい?」

『はい。あの輪廻って子が……』

「ひょっとして知り合いか?」

『いえ……全然知らない子です。ただ……』

「ただ?」

『ああいや、何でもありません。気にしないで下さい。それよりも、ダンジョンへ行きましょう』

「そうだな」

どうにも歯切れの悪いやり取りである。
若干気にはなったが、本人に話す気はなさそうなので、無駄な追及はせず俺はダンジョンへと向かう。
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