スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一

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第115話 同盟

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「どう?これがあたし達の実力よ。という訳で……お二人さん、私達のパーティーに加わらない?」

ルーンリッチ討伐を終えた天魔輪廻が勧誘してくる。
が、もちろん答えは――

「お誘いいただいて光栄だが、レアクラスである私達の実力程度ではたいして役に立たないだろう。遠慮しておくよ」

「謙遜だねぇ。怪盗さん達は十分過ぎるほど高水準だよ。そのうえ……レアドロップ確定なんて能力、もうなんなら世界中から引く手あまたレベルじゃん」

勇気か……
全く、余計な情報与えやがって。
まあ聖達にも知られてるから、今更っちゃ今更ではあるが。

「よし!こうしよう!うちのパーティーに入ってくれるなら、怪盗さん達をヒーロークラスにランクアップする。不肖この天魔輪廻。今ここでそれを約束するわ!どうよ!」

「それはまた随分大きく出たな」

ランクアップポーションは、グーベルバトルの報酬一覧に入っていた。
通常のランキング報酬には無いので、恐らく、大会などの報酬になるのだろうと思われる。

つまり、天魔輪廻はそれを手に入れると言っているのだ。

「なにせうちには最強オブ最強こと、守伯父さんがいるからねぇ」

大会の内容は不明だが、個人戦で竜崎守が優勝する可能性は高い。
なにせ天魔輪廻の言う通り、彼の強さは圧倒的だからな。

「魅力的な条件ではあるが、遠慮しておこう」

ヒーロークラスに上がれる。
レアクラス以下のシーカーにとっては、夢の様な報酬と言って良い。

但し、俺を除けば、だ。

大会以外の入手ルートがあるからな。
俺には。
隠し通路は時間経過で復活するみたいだし。

「ええええぇぇ!この条件でなびかないって、ガード硬すぎだよぉ」

「私達は謎多き怪盗ですからね。でもまあ……パーティーは兎も角として、同盟を組むってんならいいんじゃないですか?」

勇気が話に割って入って来て、同盟はどうかと俺に聞いて来る。

「同盟?」

「そう、同盟です。ボス討伐は苛烈ですからね。天魔さん達のパーティーと組んで、Sランクボスを討伐するってのも悪くないと思うんですよ」

「ふむ……」

Sランクボスは桁違いに強い。
今回討伐したルーンリッチはSランクの中では下位に位置するが、それでも俺と勇気だけでは倒せなかっただろう。
装備を揃えていけば単独でもやれるのかもしれないが、上位のSランクボスにそれが通用するかはかなり怪しい。

そう考えると、確かに天魔輪廻達と組めるのは大きいメリットと言えるだろう。
ボスの湧き待ちとかもしなくていい訳だし。

問題は正体がバレるバレないなんだが……

「まあ確かに悪くはないな」

パーティーを組んで常に一緒に行動するのは、正体ばれのリスクが高くなってしまう。
けど、ボス戦でのみ組むぐらいならたぶん大丈夫だろう。

「でしょ。天魔さんの方はどうですか?」

「個人的には、是非ともパーティーに入って欲しい所なんだけど……まあ、お互いの距離を縮める最初の第一歩としては悪くないかも。お友達からお願いしますって感じで」

欲しいのはレアドロップ確定だと思うんだが……何故パーティーに組み込むことに拘るのか?

まあ、他に取られたくないって事なんかね。
パーティーとして仲良くしておけば、他に靡く心配が薄くなるから。

「はぁ、先に取られてしまいましたね。怪盗Gさん達には、ぜひキャッスルギルドに入って頂きたかったんですけど……」

大城恵も俺達を勧誘するつもりだった様だ。
まあもちろん答えはノーな訳だが。
大手ギルドに所属して活動し続けるとか、絶対正体がバレる気しかしないからな。

「申し訳ないが。ギルドに所属するつもりはないのでね」

「残念です」

「さて、じゃあ脱出しますか。それで……あの人達の死体はどうします?私なら魔法で運ぶ事も出来ますけど?」

「そうですね。裏切ったとはいえ、遺体をこのままにするのは心苦しいですし。それに……彼らの装備はギルドから貸し出している物も少なくありませんので、宜しくお願いします」

「おっけー!じゃあ回収を――」

「待て」

天魔輪廻が死体を回収しようとして、だがその行動は竜崎守によって遮られた。

「どったの伯父さん?」

「死体が一つ消えている」

「え!?消えてるって一体……」

「分からん。が、間違いなく死体が一体減っている」

「確かに減っていますね。私が浄罪したの21人でしたが、倒れているのは20人になっています」

俺も慌てて数えてみる。
確かに、竜崎守や神崎エデンの言う通り、転がってる死体は20体だ。

21人いたよな……

猿渡さるわたりの死体がありませんね」

竜崎に言われて、大城恵が倒れている人間達を確認する。
どうやら、猿渡という人物の死体が消えてしまっている様だ。

確か……細目の男だったよな?

「うーん。死んでなくて、気づかないうちに逃げちゃったのかねぇ?」

「確実に浄罪しましたので、それはないかと」

神崎エデンは、始末は完ぺきだと主張する。
とは言え、死体が逃走する訳もないので、生きていたと考えるべきだ。

まさかアンデッドになったって事はないだろうし。
映画じゃないんだから。

「何らかのユニークスキルで死を偽装し、逃げた可能性が高いだろう。ないとは思うが……周囲に潜んでいる可能性もある。気を付けろ」

姿を隠して奇襲。
まあ可能性は低いが、0ではないので警戒するに越したことはない。

が、まあ、ダンジョン鑑定で出るマップには、俺達以外の生命体の反応は周囲にないので大丈――いや、何らかの方法でそれすら偽装してる可能性があるから、そうとも限らないか。

「潜んでいる可能性はありませんね。私達には、周囲をサーチする能力がありますのでご安心を」

が、勇気がきっぱりとそう宣言する。

『幸運スキルのダンジョン鑑定を欺ける様なスキルはありませんので、ご安心ください。マスター』

偽装は利かないのか。
勇気が言うのだから、鑑定マップは信頼していい様だ。

「へぇ、そんな便利な能力もあるんだ」

「怪盗は人目を避けてなんぼですからね。周囲の状況を随時把握できないと、話になりません」

鑑定マップは怪盗とは全く関係ない能力なんだが……まあそこは別に突っ込まなくてもいいだろう。

「電波が通ってるのもGっち達の能力だよね?」

「ええ。歩く基地局と呼んでください」

そんな呼ばれ方したくねーよ。
まあゴキブリとか、怪盗ダブルGよりかはましだけども。

「まあなんにせよ……状況は安定したようだし、私達は一足先に失礼させて貰う」

一緒に仲良くダンジョンの外に出るつもりはない。
長々と一緒に行動すると、聖辺りに俺の正体が見抜かれる心配があるからな。
それに出口ではキャッスルギルドがわんさか待機しているだろうし、あんまり一緒に行動したくない。

なので転移を使い、さっさと脱出させて貰う。

「お!ひょっとして転移系のスキルも使える感じ?」

「ふふふ、怪盗ですから」

「おー、怪盗は万能だねぇ」

「ではこれで――」

「あ、待ってください」

神出鬼没を使おうとしたら、大城恵に呼び止められた。

「本日は本当にありがとうございました」

彼女が頭を下げると――

「「「ありがとうございました」」」

聖達も一斉に頭を下げた。

「いずれこの御礼をしたいので、どうか連絡先を教えていただけないでしょうか?」

「美人の頼みは断れませんからねぇ。構いませんよ」

もちろん返事したのは勇気だ。
ほんと、軽い奴である。
まあでも、別途御礼が貰えるなら貰っておいて損はないので良しとしよう。

「それでは」

「ばいばいきーん」

勇気が大城恵と連絡先を交換し終え、俺達は転移でその場を離脱した。
まあ何はともあれ、一件落着だ。

逃げた奴がいる?

ま、些細なことだ。
その辺りはきっとキャッスルギルドがきちんと処理するだろう。


◆◇

―—とある研究施設の一室。

そこには複数のカプセルが並んでおり、その中の一台の扉がゆっくりと上に開いていく。
そしてその中に入っていた人物——糸目の男、猿渡が体を起こした。

「やれやれ……こんな事ならキャッスルギルドにダメージを与える嫌がらせなど考えず、勧誘にだけ集中すればよかったですね」

「何?チン、貴方失敗したの?」

カプセルが開いた事に気づいた、白衣で赤毛の女性が近寄って男に声をかけた。
彼女は猿渡をチンと呼ぶ。
実は猿渡は偽名であり、チン・ワンユーが彼の本名だ。

「ええ。勧誘した人達は全滅しました」

「数年もかけて勧誘失敗……ね。上手く行きそうだなんて報告書を上げておいてこの様じゃ、あんたペナルティ確実ね」

女が人差し指で自分の頭をツンツンと突く。
チンの脳内には特殊なチップが埋められており、上の人間は自由に苦痛を与える事が出来るようになっていた。
そのためミスをすると、彼は苦痛を受ける羽目に。

「頭の痛い話ですね。まそれでも、さっきのあれよりかはましでしょうが」

「何?ひどい目に遭ったの」

「ええ。シャレにならないレベルの拷問でした」

「お気の毒ねぇ」

「それより、他の方達の方はどうなんです?」

チンが周囲にある、自分の入っていた物と同じタイプのカプセルを見渡す。
その中には、彼と同じ任務に就いているシーカー達が眠っていた。

「正直、ぱっとしないわよ。ま、Sランクの引き抜きなんて、そうそう上手く行くもんでもなし」

「そうですか。この調子では、党の計画した不死身の軍団イモータルアーミィの完成はまだまだ先になりそうですね」

不死身の軍団イモータルアーミィ
文字通り不死の軍団である。

もちろん、本当に不死の兵士を生み出す訳では無い。
その実は高ランクシーカーの分身を生み出し、本体の代わりに戦わせるという物だ。

たとえ分身が破壊されても、コントロールしている本体は無傷――痛みなどは感じるが。
なので、いくら殺されようとも、何度でもコピーを作って戦線に投入する事が可能だ。
敵からすれば、正に不死の軍団といった所だろう。

今回、神崎エデンによって殺されたはずのチンが死なずに生きていたのは、あの場にいたのが生み出された分身だったからである。

「さて、では私は報告に行ってきます。竜崎守の化け物っぷりの報告で、ペナルティを回避できればいいんですけどねぇ」

想定外の化け物に制圧されてしまったので、どうしようもなかった。
そんな言い訳が通じる訳もない。
チンは自嘲気味に笑い、報告に向かうのだった。
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