素行不良で僻地に追いやられた第4王子、自分が転生者だった事を思い出す~神様から貰ったランクアップで楽々領地経営~

榊与一

文字の大きさ
53 / 158

第52話 手紙

しおりを挟む
――スパム邸、客室。

「こちらになります」

どういう訳だか、何故か王宮から使者がやってきた。
俺は使者から、王家からの伝達事項がしたためられた手紙を受け取る。

「ふむ……」

俺は受け取った手紙の封蝋部分に部分に、男爵家の証である指輪を押し付け封印を解いた。

魔法のある世界であるため、貴族や王族間の手紙には、魔法による封印がかけてあるのが常だ。
基本的に指名した相手にしか開く事が出来ず、無理やり開こうとすると消滅してしまう仕組みになっていた。

で、貴族の証である指輪がそのカギとなっているという訳である。

「ん……んん?」

手紙の中身を改め、俺は眉根を顰めた。
内容はまあ、簡潔にまとめると第一王子のケイレスが男爵領の視察に来るという物である。
しかも婚約者であり、隣国バロネッサの第一王女であるペカリーヌ姫を連れて来るとの事。

うん、意味が分からん。

王家はこの領地の惨状を知ったうえで、俺を追放しているのだ。
なのにまだ一か月程しか経ってないのに、ここを視察したいとか言い出す意図が全く読めない。
しかも、ペカリーヌ姫まで連れて来ると来てる。

本当に意味不明である。

因みに、ケイレスが俺の事を心配して視察を申し出たという線はまずない。
あいつは俺の事を毛嫌いしてたからな。
お前は出来損ないの王家の恥だって、何度面と向かって言われた事か。

いや待てよ。
逆転の発想だ。

心配してではなく、俺が苦しむ姿を見てにやにやするためにやって来るのなら……まあ筋は通るか。

それならペカリーヌ姫を連れて来るのも、納得できるという物。
なにせ彼女は、俺の体当たりで大怪我した被害者な訳だから。

……いやいやいや、よく考えたらそれはないわ。

ケイレスだけならその線もありえただろう。
だが俺の知る限り、ペカリーヌ姫は人の苦しむ姿を見て喜ぶ様な人物ではなかった。
彼女は本当に優しい人で、怪我をさせたあの時だって、俺の事を最後まで庇おうとしてくれていたのだから。

そんな優しい人間だからこそ、記憶を取り戻す前の俺も彼女を好きになったのだ。

ケイレスだって彼女のそんな性格はよく知っているはず。
だから『エドワードが苦しむ姿を見に行こうぜ!』的な、性格の悪そうな理由で彼女を連れて来るはずがない。
そんな事をしても、相手に嫌われるだけだから。

となると……うん、やっぱわからん。

「ふむ……」

王宮からの使者は真っすぐ笑顔で此方を見ている。
俺からの返事待ちだ。

ぶっちゃけ、視察を断る事は出来た。
そんな事しても大丈夫なのかと思うかもしれないが、実は問題ない。

国政に関わる正式な物だと確かにまずいが、今回の視察は新領地がうまく回っているかの確認とかいう、果てしなく国にとってどうでもいい物である。
流石にこんなふわっとした理由の物まで強制的に受け入れさせられる程、王家の権力は絶対ではない。

まあもちろん、断ったら王家からの心象は悪くなるだろうが……そもそも既に俺の心象は最悪なので問題なしだ。

けど――

「ケイレス殿下には、了解したとお伝えください」

俺は断らずにオッケーを出す。

「かしこまりました」

何故受け入れたのか?
理由は簡単だ。
ペカリーヌ姫が来るから。

ああ、言っておくけど、別に彼女が今でも好きだからって訳じゃないぞ。
確かに記憶が戻る前までは好きだったが、流石に、今はそんな気持ちは微塵も持ち合わせていない。
ぶっちゃけ、今の俺からみたらタイプじゃないし。

じゃあなぜ?

簡単な事だ。
ペカリーヌ姫には、改めてちゃんと謝りたかった。
俺のせいで怪我をさせてしまってる訳だからな。

怪我させた後、まともに顔も合わせられなかったし。
今回の視察を機に、彼女にはきっちり謝っておこうと思う。

まあ受け入れた所で、何か不都合が生じるとも思えんし……
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

処理中です...