悪役転生。ゲーム世界の山賊に転生しました~気づいたら主人公の姉を殺した後で……どう考えても軌道修正無理!こうなったらもう逃げるしかない!~

榊与一

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第20話 ドワーブン姉妹

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背丈は姉妹で同じぐらい。
その背には、揃って自らの背丈より大きな戦斧を背負っている。

妹であるメエラは相変わらずオレンジの繋ぎに、赤毛を三つ編みにしたツインテール。
おっとりとした、垂れ目の可愛らしい顔をしている。

たいして姉であるレッカは、目じりが少々吊り上がった勝気そうな顔立ちをしている。
その短めの、妹より更に濃い赤毛は頭頂部で無造作に纏めらており、ぱっと見は角の様だ。

「一つ聞く?どうやって俺を追跡した」

俺は警戒を解かず、そう問う。

別れた場所から離れた街の、深夜の裏路地で出くわす。
それが偶然?
そんな事はありえない。
間違いなく必然であり、そしてそれはメエラ達の意思によって引き起こされたと考えるべきだ。

――つまり、彼女達は俺を追跡してこの場にいる。

その方法は残念ながら分からない。
だがこんな場所で俺を待ち伏せ出来ていた事から、それがただの追跡でない事だけは確かだ。

完全戦闘仕様であるレッカに、そんな芸当は出来ない。
なので、メエラの方のスキルか魔法だろう。

「あ、ごめんなさい。おねぇちゃんの病気が治って、それでヤマダさんにどうしてもお礼が言いたくって。それでスキルで――あ、ドワーフ特有のスキルなんですけど、一度あった人の場所や状況をある程度確認出来るスキルがありまして……」

おっとりとした感じの子ではあるが、流石に此方が警戒している事は口調から察する事ぐらいは出来る様だ。
俺の問いに、メエラが顔の前で両掌をばたつかせ慌てて答えた。

一度会った人間の場所や、状況を確認できるスキルか……なんてやばいスキル持ってやがる。

ゲームには出て来ないスキルだ。
もしそんなスキルを持つ奴に本気で追跡されたら、逃げ切る術はないだろう。
主人公の探索どころではない。

まあレイヤのスキルはカルマ値がマイナスでさえあれば無作為に発見できるので、一度は顔をわせる必要があるメエラのスキルが、完全な上位互換とは言わないが、とにかくやばいスキルだ。

「成程。そのドワーフ特有のスキルで、俺を見張っていた訳か」

タイミング的に考えて、さっき見つけて俺に寄って来たと考えるほど俺もめでたい頭はしていない。
事前に見張っていて、俺が何かをしようとしたタイミングで動いたと考える方が無難だ。

そして、恩人であるはずの俺を見張る理由は一つしかない。

「俺の正体に気付いていたんだろ?」

俺が凶悪指名手配犯。
エヴァン・ゲリュオンだからだ。

そしてそれに気づいたからこそ、彼女達は俺を見張っていたと考えるのが妥当。

「やっぱり……それじゃ……」

俺の言葉に、メエラが表情を曇らせる。
反応を見る限り、どうやらまだ疑惑段階だった様だ。
まあどちらにしろ、遅かれ早かれな気もするので構わないが。

「妹のスキルを使えば、私にも貴方の様子を見る事が出来る。手配書に会った容姿。大蛇をあっさり始末する程の、斧の遣い手。それに街道を避けての移動。そこから推測したのよ」

それまで黙っていたレッカが口を開いた。
容姿相当の高めの声質ではあるが、その口調は落ち着いた物である。

――レッカは、普段と戦闘時のギャップが大きなキャラだ。

戦闘時は、正に狂戦士と言うべき荒々しい戦いぶりと言葉遣いになるが、普段は理知的で優しい女性の顔を見せる。
その色々とギャップだらけの見た目と言動から、彼女は『ジャスティスヒーロー』屈指の人気キャラとなっていた。

「でも、妹はきっと気のせいだからって。そんな訳ないって。貴方にお礼をするって聞かなくて。それで……その事をハッキリさせるため、暫く見張って問題ないなら貴方に会う許可を出すって事になったの」

正しい判断だ。
一応命の恩人――と呼べるかはあれだが――とは言え、何の警戒も無しに極悪人と思しき相手と接触するなど、愚の骨頂だからな。
やられた方は気分が悪いのは確かだが、素行調査自体は責められない。

「それで?容疑ははれたのか?」

間抜けな質問ではある。
さっきのやり取りで、もう俺の正体がバレている訳だからな。
それでも聞いたのは、その結果が何となく気になったからだ。

受験では、合否が最重要だ。
でも合格にせよ。
不合格にせよ。
自分が何点取れていたか気になるだろ?

まあそれに近い感じだ。

「正直……判断は難しかったわ。ゲヘンが接触した時点でどう考えても黒。でも、貴方が子供達に見せる顔を見る限り――」

「ヤマダさん。凄く優しい顔してました。悪い人が、子供達にあんな優しい顔をするわけありません。それに私も助けてくれました。だから、だから私……」

レッカの言葉に、メエラが割って入って感情的に自分の気持ちを吐露する。
彼女は俺が悪人のゲリュオンでないと、きっと思っていたかったのだろう。

ま、その願いはかなわなかった訳だが。

「妹の願望込みで、判断の付かないグレーだったわ。でも――」

「深夜に黒ずくめで行動する俺を見て、黒と結論付けた……か」

ま、そりゃそうだ。
どう考えても、これから人には言えない事をやりに行く格好だからな。

「それで、俺の邪魔をしに来たと?」

「まあこんな夜中に黒尽くめな訳だし、人に胸を張ってできない事をするのは一目瞭然だもの。だから……妹が、もしあなたが悪事に手を染める様なら止めたいって」

「ヤマダさん、一体何をするつもりなんですか?悪い事なら……どうか考え直してください!」

メエラは両拳を握りしめ、悲しそうな顔で俺にそう訴えかけてくる。

悪事……か。

自分の中では、今からする事は正しい事のつもりだ。

けど、果たして人殺しを第三者が正義と認めるかと言われれば……
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