スキル【ズル】は貴族に相応しくないと家を追い出されました~もう貴族じゃないので自重しません。使い放題だ!~

榊与一

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第4話 スキル

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人相の悪い男達が、まっすぐ此方へとやって来た。
その数は予想通り9人だ。
手にこそしていないが、全員剣や斧などの獲物を身に着けている。

――野盗崩れという言葉がピッタリな奴らだ。

「お前達、何者だ?ここは個人所有の畑だぞ。即刻出て行け」

声をかける直前に魔法を発動させておく。
周囲の音を収集し、球体に記録する魔法である。

――証拠を押さえておかないと、後で言い逃れしてくるのは目に見えているからな。

この魔法は、ある程度魔法の扱える奴なら簡単に気付くし妨害も簡単だ。
だが目の前の9人はどう見ても脳筋丸出しなので、その心配は無さそうである。

「ああ、実はペットがこの中に逃げ込んじまってよ。悪いけど、この畑を調べさせて貰ってる」

ペット……まあ獣人の少年の事だろう。

獣人は滅多に外で見かけない種族だ。
恐らく、貴族辺りの珍しい物好きの好事家に高く売りつけようという魂胆で攫ったのだろう。

「なら、所有者に許可を取れ」

俺は正論を口にするが、勿論そんな物は通らないだろう。
人身売買は重罪だ。
それは獣人が相手でも同じ事。

彼らからすれば、自分達を見た俺を生かしておくのはリスクでしかない。

「悪いけど、そう言う訳にもいかねぇんだよ」

男達は笑いながら俺を取り囲み、武器を手にする。
九対一。
並の冒険者なら、まず勝ち目のない構図ではある。

――だが、全く問題ない。

奴等の動きや構えから、その腕前が大した物でない事が直ぐに理解できた。
ジョビジョバ家で本格的な訓練を受けた俺の剣の腕でなら、この程度の相手、九対一でも全く問題ないと言える。

ま、そもそも真面に相手する気はないが。

俺はスキルを発動させる。
家を追い出される事になった原因である、【ズル】を。

「さて。あんたにゃ恨みはないが、ここで死んで貰うぜ」

「そいつは困るな。所で、九対一ってズルいよな?悪いけどタイマンで頼む」

「わかった」

男達が素直に返事を返し、一人を残して他の奴らは後ろに下がって行く。

これが俺のスキル。
【ズル】の効果の一つだ。

相手が有利な状況――ズルい状況の場合、それを全て放棄させる事が出来る。

このスキルがある以上、相手がどれだけ大人数でも俺には関係なかった。
因みにこういう場合、スキルの効果で相手全体にダメージが連動する様になっているので、一人を倒せば他の奴らも同時に戦闘不能に陥る事になる。

まあスキルの効果がこれだけなら、名前に問題こそあれ、俺は家を追い出されはしなかっただろう。

――俺はもう一つの効果を発動させる。

「武器を捨てろ」

「ああ」

俺の言葉に従い、目の前の男が手にした剣を捨てた。

――自分にとって都合のいい条件を一つ、強制的に相手に飲ませる。

これがもう一つの効果だ。

正に卑劣なスキルと言っていいだろう。
今回は武器を捨てさせたが、ユニークスキルや魔法の禁止なんかも通す事が出来る。
まあどれか一つだけではあるが。

因みに、歩くなとか、何もせずに切られろと言った様な、体の基本機能や行動を制限するの事は出来ない様になっている。
もしそれが出来ていたなら、間違いなく俺はは無敵だった事だろう。

「じゃあ行くぞ」

そう宣言してから突っ込む。
武器も持たない格下が俺に敵うはずもなく、相手は成す術もなく剣の腹を受けて吹き飛んだ。
そして連動するダメージがその場にいた全員を襲い、一瞬で昏倒させてしまう。

「……凄い」

荷車の後ろに隠れていた少年が此方へと駆け寄ってきて、俺に向かって感嘆の声を上げる。
遠くからだと、一瞬で9人を倒した様に見えたのだろう。
まあスキルの効果だとは言え、実際全員を一瞬で倒したのは事実ではあるが。

「君を捕まえてたのは、こいつらで間違いないか?」

「うん」

俺は荷車に積んであった紐で、気絶しているゴロツキ共の手足を縛って自由を奪う。
そして積んであったバットラビットの死体を降ろし、代わりにそいつらを乗せる。
一台の荷車に九人は手狭だが、悪人に遠慮はいらないので、思いっきり積み重ねて乗せてやった。

 「こいつらを役所に突き出すから、悪いけど君もついて来てくれ」

「わかった」

一応、バッドラビットは予定の最低数を狩ってある。
仕事は終了って事ででいいだろう。

「しかし……流石におもいな」

荷車を引くと、大人を九人も載せているためかかなり重かった。
まあ辛いって程でもないんだが、悪党どもに苦労を掛けられているのかと思うと単純に腹が立つ。

「ん?」

急に荷車が軽くなる。
横から後ろを覗き込むと、少年が押してくれているのが見えた。
どうやら手伝ってくれる様だ。

「助かるよ」

なりは小さいが、流石獣人だけはある。
大したパワーだ。

俺は少年の手を借り、依頼主の住んでいる村の役場へと向かうのだった。
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