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第12話 挨拶
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「やあ、奇遇だね。彼女達の送り迎えかい?」
「ああ。今レディー達と別れを惜しんでいた所さ」
女生徒共をレディーと来たか。
こいつとは絶対仲良くなれなさそうだ。
まあ他の勇者共と仲良くする気なんざ端からないが。
「しかし、珍しいね。硬派な君が女子寮にやって来るなんて。もしかして、その頭やベヒモス嬢と何か関係があるのかい?」
カイーナが馬鹿にした様な軽薄な表情で、ビートの頭を見る。
見た感じだと、二人の仲は別段良い訳ではなさそうだ。
「ははは、まあ色々あってね」
ビートは適当に笑って誤魔化した。
お人好しではあっても、他人の詮索に素直に答えるほどアホではなかった様だ。
まあ4大家の関わってる話ってのが大きいんだろうが。
「それじゃ、僕達は用があるんで失礼するよ」
カイーナとの会話を早々に打ち切り、集団を避けてビートが門を潜る。
ま、スザーク家の令嬢を待たせてる訳だしな。
チャラ男如きに構ってなど居られないという事だろう。
俺もそれに続こうとしたら――
「Eランクの雑魚勇者如きが、僕に挨拶もないなんてね」
という声が聞こえてきた。
相手が此方に聞こえない様に小声で話して、俺の耳が超良いから拾ったという訳ではない。
明らかに、これ見よがしに聞こえる様に言ったのだ。
俺は振り返り、カイーナにニッコリと笑いかけた。
「あいさつした方が良かったか?」
「おや、聞こえてしまったかい?これは失敬。けどまあ……凡夫が優れた才人に挨拶をするのは、マナーではあるだろうね」
格下なんだから俺様に挨拶しろ。
勇者の癖に、言ってる事はそこらの不良と同じである。
「カイーナ。その発言は墓地君に対して失礼じゃないか」
声はビートにも聞こえていたらしく、慌ててカイーナとの間に割って入って来た。
俺がどういう行動にでるか理解しているのだろうが、残念ながらもう遅い。
スイッチはオンだ。
――寮の入り口前で、女共とイチャイチャしていた時点で。
通行の邪魔をしていた時点でレッドリスト入りしてたからな。
後は何が切っ掛けか、でしかない。
「私は事実を言ったまでだよ。どんな場所にも、序列という物は存在している」
「確かにその通りだな……じゃあどっちが上か、この場でハッキリさせとこうか」
「墓地君!」
俺はビートを強く押しのけ、間抜け面しているカイーナの腹に拳を叩き込んだ。
「お……ぉぉぉ……」
奴は大口を開いて唸り声をあげ、腹部を押さえて数歩後ずさる。
この一発で十分な気もしたが、目を見開いた顔が面白かったのでついでに顔面も蹴り飛ばしてやった。
こいつはオマケだ、取っときな。
「ほげぇ……」
カイーナは放物線を描く様に吹き飛び、後頭部から地面に着地して動かなくなってしまう。
こいつには言っておく事があったんだが、気絶してしまったのならしょうがない。
代わりに、周りにいる女生徒達に奴へのメッセージを伝えておくとしよう。
「目を覚ましたら、カイーナに言っとけ。次からは格下のテメーから挨拶に来いってな。しなけりゃぶち殺す」
あんぐりと口を開き、間抜け面で固まっている女生徒達。
こいつらにちゃんと俺の言葉が聞こえてるのか怪しいが、大事なレディー達が伝えそこなって俺にぶん殴られるのなら、カイーナもまあ本望だろう。
「ああ、それと……俺の通行の邪魔になる様な真似はもうするなよ。今回は見逃してやるけど、次見たらお前らもカイーナと同じ目に合わせるぞ」
ついでに女生徒達にも釘を刺しておく。
これも聞こえてるか怪しいが、聞こえてなくてもまあこの状況だ。
俺の前で同じ様な事をする程馬鹿でもないだろう。
まあもし同じ事をする根性があるなら、その時は拳で対話するだけだ。
「んじゃ、行こうぜ」
「君って奴は本当に……君達、済まないけど勇者カイーナの介抱を頼むよ」
「は……はははははい!!」
「カイーナ様!!」
ビートの言葉でやっと正気に戻ったのか、女生徒達が慌てて倒れているカイーナに駆け付けて介抱を始める。
まあ介抱と言うか、回復魔法をかけてるだけだが。
「やるか?」
門の守衛が鋭い目つきで俺を睨みつけ、腰の剣に手をかけていた。
彼らからすれば暴漢に対して自らの職務を果たそうとしているだけなんだろうが、俺に剣を向ける様なら暴力で制圧するだけだ。
「今のは勇者同士のちょっとした小競り合いです。これ以上の戦闘はありませんから、どうか引いてください」
「……分かりました」
ビートの言葉に、守衛達が渋々と引き下がった。
俺としても、ただ真面目に仕事しているだけの人間を殴るのは本意ではないので助かる。
「全く……君は本当に短気だね」
「それが俺の良い所だ」
ビートの言葉に、俺はそう笑顔で返した。
「ああ。今レディー達と別れを惜しんでいた所さ」
女生徒共をレディーと来たか。
こいつとは絶対仲良くなれなさそうだ。
まあ他の勇者共と仲良くする気なんざ端からないが。
「しかし、珍しいね。硬派な君が女子寮にやって来るなんて。もしかして、その頭やベヒモス嬢と何か関係があるのかい?」
カイーナが馬鹿にした様な軽薄な表情で、ビートの頭を見る。
見た感じだと、二人の仲は別段良い訳ではなさそうだ。
「ははは、まあ色々あってね」
ビートは適当に笑って誤魔化した。
お人好しではあっても、他人の詮索に素直に答えるほどアホではなかった様だ。
まあ4大家の関わってる話ってのが大きいんだろうが。
「それじゃ、僕達は用があるんで失礼するよ」
カイーナとの会話を早々に打ち切り、集団を避けてビートが門を潜る。
ま、スザーク家の令嬢を待たせてる訳だしな。
チャラ男如きに構ってなど居られないという事だろう。
俺もそれに続こうとしたら――
「Eランクの雑魚勇者如きが、僕に挨拶もないなんてね」
という声が聞こえてきた。
相手が此方に聞こえない様に小声で話して、俺の耳が超良いから拾ったという訳ではない。
明らかに、これ見よがしに聞こえる様に言ったのだ。
俺は振り返り、カイーナにニッコリと笑いかけた。
「あいさつした方が良かったか?」
「おや、聞こえてしまったかい?これは失敬。けどまあ……凡夫が優れた才人に挨拶をするのは、マナーではあるだろうね」
格下なんだから俺様に挨拶しろ。
勇者の癖に、言ってる事はそこらの不良と同じである。
「カイーナ。その発言は墓地君に対して失礼じゃないか」
声はビートにも聞こえていたらしく、慌ててカイーナとの間に割って入って来た。
俺がどういう行動にでるか理解しているのだろうが、残念ながらもう遅い。
スイッチはオンだ。
――寮の入り口前で、女共とイチャイチャしていた時点で。
通行の邪魔をしていた時点でレッドリスト入りしてたからな。
後は何が切っ掛けか、でしかない。
「私は事実を言ったまでだよ。どんな場所にも、序列という物は存在している」
「確かにその通りだな……じゃあどっちが上か、この場でハッキリさせとこうか」
「墓地君!」
俺はビートを強く押しのけ、間抜け面しているカイーナの腹に拳を叩き込んだ。
「お……ぉぉぉ……」
奴は大口を開いて唸り声をあげ、腹部を押さえて数歩後ずさる。
この一発で十分な気もしたが、目を見開いた顔が面白かったのでついでに顔面も蹴り飛ばしてやった。
こいつはオマケだ、取っときな。
「ほげぇ……」
カイーナは放物線を描く様に吹き飛び、後頭部から地面に着地して動かなくなってしまう。
こいつには言っておく事があったんだが、気絶してしまったのならしょうがない。
代わりに、周りにいる女生徒達に奴へのメッセージを伝えておくとしよう。
「目を覚ましたら、カイーナに言っとけ。次からは格下のテメーから挨拶に来いってな。しなけりゃぶち殺す」
あんぐりと口を開き、間抜け面で固まっている女生徒達。
こいつらにちゃんと俺の言葉が聞こえてるのか怪しいが、大事なレディー達が伝えそこなって俺にぶん殴られるのなら、カイーナもまあ本望だろう。
「ああ、それと……俺の通行の邪魔になる様な真似はもうするなよ。今回は見逃してやるけど、次見たらお前らもカイーナと同じ目に合わせるぞ」
ついでに女生徒達にも釘を刺しておく。
これも聞こえてるか怪しいが、聞こえてなくてもまあこの状況だ。
俺の前で同じ様な事をする程馬鹿でもないだろう。
まあもし同じ事をする根性があるなら、その時は拳で対話するだけだ。
「んじゃ、行こうぜ」
「君って奴は本当に……君達、済まないけど勇者カイーナの介抱を頼むよ」
「は……はははははい!!」
「カイーナ様!!」
ビートの言葉でやっと正気に戻ったのか、女生徒達が慌てて倒れているカイーナに駆け付けて介抱を始める。
まあ介抱と言うか、回復魔法をかけてるだけだが。
「やるか?」
門の守衛が鋭い目つきで俺を睨みつけ、腰の剣に手をかけていた。
彼らからすれば暴漢に対して自らの職務を果たそうとしているだけなんだろうが、俺に剣を向ける様なら暴力で制圧するだけだ。
「今のは勇者同士のちょっとした小競り合いです。これ以上の戦闘はありませんから、どうか引いてください」
「……分かりました」
ビートの言葉に、守衛達が渋々と引き下がった。
俺としても、ただ真面目に仕事しているだけの人間を殴るのは本意ではないので助かる。
「全く……君は本当に短気だね」
「それが俺の良い所だ」
ビートの言葉に、俺はそう笑顔で返した。
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