吾輩は時々、黒猫である。

やまとゆう

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第2章 ロボ子と優子

#9.

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            ✳︎

 私には友達がいない。兄妹もいない。両親は私が幼い頃にいた。ただ、その記憶はとても曖昧でお父さんは私が小学校に入学した年に事故で亡くなり、お母さんは私が小学4年の頃に過労で倒れ、そのまま息を引き取った。その2つの衝撃的な出来事があってから、私はそれまでの記憶をはっきりと思い出す事が出来ない。遺影写真に映るお父さんとお母さんの穏やかに笑う顔を見ても当時の思い出は甦らないし、何よりも辛い気持ちが込み上げてきて私の呼吸が荒くなる。両親を亡くし、1人になった私は母方のおばあちゃんの家でおばあちゃんと2人で暮らしている。もう10年以上もここでお世話になっている。おじいちゃんの顔はそれこそ写真でしか見た事がない。へらっと笑っている遺影写真を見ると、目元なんかがお母さんのそれとそっくりだ。ちなみに私は父親似だと思うので、お母さんとはあまり似ていない。そんな私は、家にいる時以外の時間は大抵1人で過ごしている。

 「じゃあおばあちゃん、今日も行ってきます」
 「はいはい。気をつけてね」

 私はいつもおばあちゃんに罪悪感を抱きながら家を出ていく。大手の出版社に勤めていると言い、昼頃から家を出る私が向かう先はネットカフェだ。そこで少しだけお金になるやり取りをネット上で取引先と行い、日が暮れる頃にそこを出て私のお気に入りの公園で一息ついてから夜に勤めるバーへと向かう。服の胸ポケットに入っているスマホを取り出して時間を確認すると、大体いつも同じぐらいのタイミングで行動している。

 「おはようございます」
 「おはよう優子。今日も早いね」
 「するべき事が全部終わったので早く来ました」
 「さすがデキる子だ。今日もヨロシクね」
 「よろしくお願いします」

ここのバーの店主である師匠(本人にそう呼んでくれと頼まれた)は、こんな私を受け入れてくれる寛大な人だ。師匠とも長い付き合いになりつつある。しししと笑う師匠の顔を見つめていると、私は自分でも驚くほど心がゆったりと落ち着く。師匠は不思議な力を持っている。
 バーでは人と接する仕事をするのだから、愛想は良いに越した事はない。けれど、私は人と接する時は上手く笑う事が出来ない。仕事仲間の風花さんや真希さんみたいに愛想をふりまくのが常識なのだろうけれど、あいにく私にはその常識も無い。それでも師匠はそんな私を必要としてくれている。なので私からすると、師匠は「師匠」というよりも「恩人」と思っている。師匠と出会ったのは……と考え始めると、仕事が手につかなくなりそうなのでそろそろ仕事のスイッチを入れようと心の中で気持ちを切り替えた。
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