撮影禁止! 逃げるキミを追い駆けるラブコメに捧ぐ歌声。

ちさここはる

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卒業3:君たちだって、同じことを願うはずさ

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 放課後、名門秋月高校の校内は、新垣正を探す卒業見込みである生徒たちが探し周り、騒がしくも、活気があった。
 
 その生徒へと、歌姫桃色が歌う――青春を、放送部は流していた。
 

 ***
 

 ほんの些細なことだよ、もうわかってんだよ
 あれこれ悩んだって、解決なんてするわけないじゃない
 どんな困難だってさ、君とならやれそうなんだ
 掴んだ、その手を決して、離したりしないで欲しいんだ

 
 ***
 
 
「やっぱり。いい曲」

 
 探していた有留も立ち止まり、それに聴き入っていた。

 
「てか。ジョージに、アーノルド……っ暗!」

 
 普段から明るいモチベーションが売りの二人だった。今さっきのやりとりに、やっぱり、違和感はあったようだった。

 
「どんな困難だってさ、君とならやれそうなんだ! 掴んだ、その手を決して、離したりしないで欲しいんだ。君となら生きて行きたいんだ!」

 
 力強い口調で、有留も口ずさんだ。
 
 校舎を駆け巡る生徒たちも、桃色の歌を歌っていた。
 

 ***
 

 戦うことが正義だと、君を護ることが勇気だと
 強さは間違いじゃないのさ、案外、その通りなんだ
 一緒に進みことだって、意外といけそうなんだ
 掴んだ、その手を、離して欲しいんだ


 ***

 

「君がいなくても生きていけるようにっ」
 

 ガララ!

 有留は大声で歌いながら、写真部へと、単身乗り込んだ。
 
 写真部は十ニ人中十二人が女生徒だけの異色の部活でもある。
 
 そこの卒業見込みでもあり、元部長の本田伊代は新垣とは蜜時期で、大変仲がよかった。幼馴染でもある分余計に。

「あ。有留先輩、うっさいんだけど」
 
 現部長の高松アヤが険しい顔で、有留を睨んだ。

 
「桃色を歌ってなにが悪い!」
 
「あたし、その歌が大嫌いなの」

 
 クスクス。
 
 部室に残っている部員が、笑いを堪えていた。

 
「桃色が嫌いな奴初めて見た気がする」
「へぇ」
「! そ、そうじゃないっ、新垣を出せ!」
「いないし」
「嘘をつくんじゃない! あいつが最後に来るのは、ここしかないんだぞ!」

 
 有留は扉を強く叩いた。

 
「いないし」

 
 扉を乱暴に叩かれ、高松も不機嫌になっていく。

「いないし」

 にこやかに、ドスの効いた声で高松は有留を威圧する。

 
「! 本田はどこだ! あいつなら知ってそうだっ」
 
「知らないし。元部長のことなんて」

 
 素っ気なく答える高松に、有留は肩を動かし両耳に手を添えて見せた。

 
「お前さんには、通路の騒がしい声が聞こえないかい?」
 
「うっさいよね」

 
 情に訴えようとするも、高松に軽く流されてしまう。
 
 がくりと有留も項垂れてしまう。

 
「わかったんなら、ご退場お願い出来ますぅ~~?」

 
 バイバイと手を振る高松に捨て台詞を吐いた。

 
「三上生徒会長に言いつけてやるぅ! ばぁ~~か、ばぁ~~か‼」
 
「! うせろ、禿っ」

 
 高松の頬は、一瞬で朱に染まる。
 
 それは、明らかな怒りを表していた。
 
「禿ちゃうわ!」の捨て台詞を最後に、ようやく有留は部室を後にする。

 
「文ちゃん部長、お顔、真っ赤かですわよ」

 
 窓際の掃除用具入れに背を置いていた堂本千景が冷やかす。

 
「うっさいな……あの野郎!」

 
 高松は三上生徒会長が大嫌いだった。
 

「あいつ行った?」
 

 堂本の後ろから声がした。掃除用具入れからだ。
 

「……ええ、行きましたよ。新垣先輩」
 

 そう。有留もときの勘は当たっていたのだ。
 
 新垣の頼りは、本田が残した写真部、そして、後輩の高松。

 ガチャ。ギィいいい。

 恐る恐る、辺りを伺うように、子猫のような仕草で彼は、新垣はその姿を現した。
 

「じゃ。先輩。ちゃっちゃっとやっちゃいますか」
 
「あ……うん。お願いします」
 

 これから新垣は、この校舎から抜け出るために、写真部の部員に身を任せるのだ。
 

(これで。これで、いいんだ……うん)
 

 高松、そして新垣の胸中は、こんな言葉に占められ、浮かない顔色をしていた。
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