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EP:56 うしろの正面に裏

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『そこは私の特別部屋プライベートルームでな。そっちのいいだろうよ』

 安住とゲイリーを食堂から連れ出した後に、ラバーが言った。
 2人も彼の言葉に、首を捻りながらついて行く。

「っけ、結構。遠いんですね?? ち、地下ですか?」
「ああ」
「秘密基地みたいだねーババさんー」
「ああ。かもな」

 しかも、途中に看板があった。
 【関係者以外、立ち入り禁止。防犯カメラ始動中】
 との、太い字で。
「っこ、ここはーーぁ、あの。ババ、さん?」
「いいんだよ。私は支援者パトロンだからなぁ」
「???? 何、それー」
「貴様は知らなくたっていいんだよ。ゲイリーよォ」
 ラバーの言い返しに、ゲイリーも。
「アズミー意味、分かるー?」
「え、うん。ぇえと、つまりは…金づる? 的な人のことだ」
 安住も、自身的な解釈で言い返した。

「おい。日本人アズミ…貴様、ゲイリーに余計なこと教えんじゃねぇよ!」

「っさ、先に。その話題出したのは。ババさんじゃないか!」
「っち。いい、行くぞォ!」

 さらに行くと白く大きくも。
 壁。
 つまりは――行き止まりだった。

「「ん?? か、壁…」」

「ははは! そうだなァ、壁だ」

 横の四角い枠に手を置くと。
 っぴっぴっぴ。

 ――ラバー=ギイドルバ死刑囚、承認シマシタ。

 電子音が鳴り。

 ガコ――……ッ!

「ここの場所ぁ。ある一定の人間しか許可をしてねぇ」

「っわ! わァあああ~~!」

 ゲイリーが中に入って行くと。
 目の前には大理石の空間があった。
 五つ星ホテルのVIPルームのように光景。
 それが目の前に展開していた。

「テレビとかでよく出るセレブの悪趣味な部屋みたいだ」

「日本人。私の趣向に喧嘩を売っているのかぁ?」
「! っそ、そうじゃなくて! ぁ、あの」
「いいから! 貴様もとっとと入りやがれ!」

 ガチャリ――……。

 安住も見渡すと。
 黒く光る革のソファーにゲイリーが座っていた。
 ギュシュ! と音も鳴る。
「アズミーすごく、このソファー座り心地いいよー!」
 腕を伸ばし、来い来い! と合図するゲイリー。
「ババさん?」
「んー何でぇ? 日本人」
「ここにも風呂あるんですか??」
「へぇーよく分かったなァ?」
 関心しきりにラバーも聞き返した。

「水の匂いがしたから」

 安住もそう言い返した。
「入りたいんだったら。入ってもいいんだぜぇ?」
「! ぃ、いいんですか?!」
 目を輝かせる安住に、
「何だってそんなに風呂が好きなんだよ。貴様の国の皆そぅなのかよ?」
 ラバーが、苦笑交じりに聞く。
「効能とか、病気にも効くって。昔から、日本人は温泉が、風呂自体が好きなんですよ」
 安住が喜々として、
「っふ、風呂って! どんなのですか?!」
「ああ。勿論、天然の湯だ」
 ラバーも親指を立てた。

「ふぁあああ~~♡」

「ぅんーアズミーまた、風呂行くのかよぉー」

 拗ねた口調で言うゲイリーに、安住も満面の笑顔で。
「ぃ、一緒に入ろうぜ!」と言うも。
 ゲイリーはソファーの上に伸びてしまう。
「行かないよォーもぅ! 行けばいいよー」
「ご、ごめん…あの、ババさん。場所はどっちですか?」
「ああ。案内してやる」

 安住とラバーが姿を消した。
 それに、
「もぅーアズミの馬鹿ー~~!」
 ゲイリーがソファーから起き上がった。

 ◆

 奥に行くと。
 湯気が漏れた部屋があった。
「ここだ。私の自慢の浴槽だ」

 ガラ――……。

 黒い大理石が、点いた灯りに鈍く光った。
「っふぉ、ぉおおう!」
「いい顔だなァ。ほら、好きなだけ入りな」
「はいぃいい!」
 安住は囚人服つなぎを脱ぎ始めた。
 それに、
「安心しろ、貴様が寝ちまっても。一時間ぐらいに来てやるからよォ」
 ゆっくりとした口調で、ラバーが言うと。
 そのまま、出て行った。

「っふ…本当に。単純な日本人だぜ」

 そう不敵に漏らす、彼が目指すのは――残った、ゲイリーだった。
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