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EP:113 瞬間、こころ、重ねて

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「むぅうう! んン゛ん゛‼」
(苦しぃー~~‼)

 口の中にセスナにねじ込まれたものに。
 ゲイリーは咽え、鼻水や、涎も垂れてしまう。

 そんなゲイリーの腹に足を置き、セスナが見下ろしていた。

(何だって、こんなことになっちまったんだ?)

 ゲイリーがああ言い返してきたことに。
 腹が立って。
 思わず拘束してしまった。
「むぅ゛! んンん゛‼」
 涙目で睨んでくるゲイリーに、
「静かにしろっつっただろうが! 馬鹿野郎‼」
 セスナも腹を強く踏み込んだ。

「っむ、ムむム゛ぅ゛~~‼」
(ぃ、痛いぃ゛ー~~‼)

 ただでさえ生理で痛む腹を踏まれたゲイリーも顔を歪ませた。

「ふん!」

 セスナ自身も、ゲイリーをどうしたいのか。
 ゲイリーとどうなりたいのかさえ。
 訳も分からなくなっていた。
 ただ、目の前に転がっているゲイリーを。

(こんな俺様みたいに大柄な男に…何だって、こんなっ!)

 ただ、目の前に転がっているゲイリーに、喉も鳴ってしまう。

 ごっくん! と。

「おら。こっち向けよ」

 うつ伏せになっていたゲイリーを。
 乱暴に仰向けにさせて。
 脇腹に足を置き。

 ジ。

 ジジジ…――と。

 チャックを開けていく。

「‼ む、ぁお゛む゛、ンんンぅー~~‼」
(ゃ、止めてよー~~‼)

 そしてシャツが見えた。
 セスナはそれを捲り上げ。
 胸の突起を露わにさせた。

「‼ んンん゛ッッ‼」
(ゃ、やだァー~~‼)

 空気の冷たさにゲイリーの身体も震えてしまう。
 セスナも舌舐めずりをして。
 手を伸ばした。

「‼ んン゛ん゛‼」

 目を瞑り震えるゲイリーに。

 ◆

『あの囚人は…――女なんだよ』

 ◆

 セスナの脳裏にフロイの言葉が。
 ふと、過った。

「ぉん――…っつ!」

 それに手が止まってしまう。
「??」
 ゲイリーも、それに気がついた。

(触って…こない…の? どぅして??)

 バクバク。

 バクバクバクバク。

(違う…違う。これはボクを油断させるためなんだ)

 目を細めて。
 涙で歪む視界からセスナを見上げた。
 彼の口許がへの字になっていた。
「????」
 それにつられるようにゲイリーの口許も。
 への字になってしまう。

 そして、ゲイリーへとセスナが手を伸ばした。

 来た! とゲイリーが目を瞑ると。

 ジ。

 ジジジ…――と。

 チャックを閉めた。
「おら。口を拡げろよ」
「んぁ゛!」

「もっとだよ。馬鹿野郎!」

「あ゛ー」

 セスナがゲイリーの口腔から。
 それを取り出した。

「っが! ぅえぇ゛! おァ゛!」

 ようやく解放された口腔に。
 勢いよく息を吸って。
 強く噎せ返ってしまう。

「っち」

 徐にセスナはトイレットペーパーを巻き出して、ゲイリーの涙で濡れた目元や涎で汚れた口許を拭った。

「…腕も解いてよーいい加減にー~~‼」

 ぶんぶん! と拘束された腕を動かすゲイリー。
 セスナも眉間にしわを寄せて言う。
「分かったから。動かすんじゃねぇよ‼ 馬鹿野郎‼」
 苛立った口調でだ。
 解かれた拘束に、
「…なんで、シなかったのー君達は、看守の人は嫌がらせをするのが好きじゃないか」
 寝っ転がったままの態勢で聞いた。
 向けられる視線から逃れるかのようにセスナは顔を横に背けて赤い舌を出した。

「んな気分じゃねぇからだよ」

 ゲイリーも、ゆっくりと上半身を持ち上げた。
 そして、ほくそくんだ。

「そっかーぅん。そっかー」

 その表情に苛立ったセスナは、
「来いよ」
 ゲイリーの腕を引っ張って、自身の膝の上に乗せた。

「わ゛! …あの、ぼ、ボク…重い、でしょー?」
「別に。案外、手前は軽いんだぞ?」

「…いいから、下してくれないかなー? あと、帰ってー」

 暗視ゴーグルスコープ越しに。
 向かい合う二人。

 眉間にしわを寄せるゲイリーの眉間に。
 セスナが指先を置いた。
「しわ、寄らすんじゃねぇよ」
「! そ、その原因は君、…なんだけどなー」
 その指先をゲイリーの頬へとやり。
 掌で包み込んだ。

(柔らけぇのな…やっぱ。何か、男とぁ違うのな)

 優しく撫ぜる行為に。
 ゲイリーもどうしていいのか分からなくなっていた。
 拘束はされていない。
 いつだってセスナから逃げ出すことが出来る。
 出来るのに。

「だから、触らないでってばーもー~~」

 目を伏せながら。
 セスナに言うゲイリーに。

「んな処女みてぇなこと言ってんじゃねぇよ。淫乱ビッチのくせによォ」

 セスナが早口で言う思いがけない言葉に。

「…ボクはビッチなんかじゃないし」
「ふん。ラバーとも、同室の囚人と看守フレディともシておいて何を言ってやがんだよ」

「ヤってないもんー全部、未遂だもんー」

 セスナの言葉に頬を膨らませ。
 胸に手をやり身体を離そうともがく。
「未遂つったってよォ。手前はヤル気満々だったんだろぉう??」
 軽く微笑みセスナが吐き捨てた。

「十分、淫乱ってヤツだ。手前は」

 セスナはゲイリーから手を離すと、ゲイリーもセスナの膝の上から下りた。

「何とでも言えばいいよ。君とは話しもしたくないし、顔も見たくもない」

 怒る顔を向けるゲイリーに、
「っふん。ぅんなら、毎日、来てやるよ」
 そう宣言をした。
「他の囚人を喰った後にな」
 セスナの台詞にゲイリーも口を荒げた。

「っふ、ふざんじゃあねぇよ! ボクとの約束を無視をするってのかァ゛‼」

 巻き舌な言い方に、
「勝手に約束したとか言われたかないなぁ。俺様は空腹なのは耐えられねぇからよォ゛」
 セスナも吐き捨てるかのように言い返した。
 その台詞にゲイリーの身体も戦慄いた。

「…7日間後シないよ? いいのかァ゛?」

「んなの手前が決める資格なんざねぇだろォが。囚人の分際でよォ」

 言葉のキャッチボールに終わりはなく。
 平行線を辿る言い合いだ。

「さてと。とっとと寝ろ。んで、消灯したらベッドに戻れ。いいな? 馬鹿野郎が」

 セスナは便座から立ち上がると。
 ゲイリーの肩を強く叩いた。

「…触らないで」
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