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#7 何かがあって、愉しみなようですよ?
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ソファー席にいたのは土岐長谷部。勿論のこと、海潮の頼んだ助っ人だった。
「僕もね、海潮さんが困っていたから助っ人に来たんだ」
「…父さんの知り合いなんですか?」
長谷部の「父さん」の言葉に竜司も耳を疑ってしまう。
海潮に、こんな大きな子どもがいるのかとすら驚いたということもある。
しかし、なんとなくだが年齢を聞くのも気が引けた。
「知り合いって言うかぁ~~…まぁ、今日初めて会ったんだけどね」
にこやかに竜司が長谷部と話す中で、
「おじさんも輪に入れてよ。何? 君ってばママの息子さんなの? あぁ~何となくだけど、目元に面影があるなぁ!」
扇が長谷部の目じりを指先でなぞった。
「でも。鼻先と、口許は――お母さんかな?」
「…ですね」と顔を反らす長谷部に扇も苦笑を漏らした。
「あー~~本当に癒されるなぁー~~♡」
「っきょ、今日は何があったんですか? そんなにしょげるなんて、一体?」
首を捻る竜司に扇が、
「この店に来る前に、ちょっと行きつけのキャバ嬢ちゃんがいる店に行った訳よ。結構、可愛い子ちゃんでね? 1年間通って親密になったからプレゼントしたんだよ。そしたら、その可愛い子ちゃんってば、受け取り拒否したんだよねぇ。普通、拒否る?? 一般的なキャバ嬢なら受け取るっでっしょぉう?! そう思うでしょう???? 縁司君だってっ!」
熱く思いを吐き捨てて同意を求めて来た。
そうは言われてもだ。竜司は、そんな場所に行ったことすらの経験がない。
映画や小説の中での絵空事にしか想像もつかない訳で。
「そぉなの?」
「…そうなの! っはぁ~~折角、彼女の為に買ったのになぁ。結構、私も悩みに悩んだんだよ? 贈り物で失敗をすると尾を引くからねっ!」
頭を掻きむしる扇の様子に竜司も狼狽えてしまう。
そんな彼に長谷部が聞く。
「っど、どんなものを買ったんですか?」
興味本位で、見たくなったようだった。
「どんなものって。結構、いい金額したんだよねぇ」
扇は背広のポケットから淡いピンク色の四角い箱を取り出した。
パカ! と開けると、中には。
淡いピンクの小さくも丸いピアスと、ネックレスのチェーンを通す金具のついた丸い石もあり。
一緒にブローチも入っていることを見ても。
扇が言うように高級なものなんだなと、竜司と長谷部は思った。
「この石はね、【玉髄】っていって。癒しや絆、縁にバランス。意味は、近くの間柄の人間との絆を深めるってさ。深めるどころか、…なくなちゃった訳なんだけどねぇ~~あ、ははは…はァー~~…」
乾いた笑いで顔を俯かせる扇に竜司も狼狽えてしまう。
こういうときに、なんて言葉をかけていいのかが分からないからだ。
(ぇ、ええっとぉう~~困ったなぁ~~)
頭を掻く竜司だが。
「じゃあ。それを貴金属店か換金店で売ればいいんじゃないのか?」
長谷部が素っ気なくも扇に言い放つ。
流石に竜司も驚くしかない。
「だって。要らないって言われちゃったんだろう? その可愛い子ちゃんってお姉さんに」
「うん。要らないって、言われちゃったんだよねぇえ~~っはぁー~~…」
さらに頭が手前に項垂れてしまう扇に、
「勿体無いよ! いつ買ったのかは知らないけどさっ、間に合うなら宝石店に返品した方がいいんじゃないのかな????」
上擦った口調で言い返した。
「返すって言ったって、…変な目で見られるのなんかまっぴらだよw」
絞り出すかのような口調の扇に、竜司もかける言葉も見当たらない。
(そんなに、…好きだったんだなぁ。その可愛い子ちゃんってキャバ嬢さんのことが)
「でも。そんな悲しんでるってのに。なんだって、この店になんか来たんだよ? 扇さんは」
さらにここで、長谷部が最もな言葉で扇に追い打ちをかけた。
竜司は胆に汗をかいてしまう。
「あ。それはやっぱり~~今日が【あの日】だからだよw この日があるから、ここの店は来たくなっちゃうんだよなぁ」
「? 【あの日】っていうのは、…何ですか?」と思わず竜司も聞き返してしまう。
何か、どうしょうもなく悪い予感がしたからだ。
しかし、扇は答えずにニヤニヤと笑うことしかしなかった。
それがまた、竜司には堪らなく怖かった。
「意地悪な人だなぁ~~あンたって」
唇を突き出して扇に言う長谷部に、
「そのうちに分かるよ。そのときになれば――《合図》が流れるからねw」
扇はほくそくみながら、ウイスキーを煽り飲んだ。
(ぃ、一体、…何が始まるんだよぉう~~縁司君の馬鹿ぁ~~っっっっ‼)
「僕もね、海潮さんが困っていたから助っ人に来たんだ」
「…父さんの知り合いなんですか?」
長谷部の「父さん」の言葉に竜司も耳を疑ってしまう。
海潮に、こんな大きな子どもがいるのかとすら驚いたということもある。
しかし、なんとなくだが年齢を聞くのも気が引けた。
「知り合いって言うかぁ~~…まぁ、今日初めて会ったんだけどね」
にこやかに竜司が長谷部と話す中で、
「おじさんも輪に入れてよ。何? 君ってばママの息子さんなの? あぁ~何となくだけど、目元に面影があるなぁ!」
扇が長谷部の目じりを指先でなぞった。
「でも。鼻先と、口許は――お母さんかな?」
「…ですね」と顔を反らす長谷部に扇も苦笑を漏らした。
「あー~~本当に癒されるなぁー~~♡」
「っきょ、今日は何があったんですか? そんなにしょげるなんて、一体?」
首を捻る竜司に扇が、
「この店に来る前に、ちょっと行きつけのキャバ嬢ちゃんがいる店に行った訳よ。結構、可愛い子ちゃんでね? 1年間通って親密になったからプレゼントしたんだよ。そしたら、その可愛い子ちゃんってば、受け取り拒否したんだよねぇ。普通、拒否る?? 一般的なキャバ嬢なら受け取るっでっしょぉう?! そう思うでしょう???? 縁司君だってっ!」
熱く思いを吐き捨てて同意を求めて来た。
そうは言われてもだ。竜司は、そんな場所に行ったことすらの経験がない。
映画や小説の中での絵空事にしか想像もつかない訳で。
「そぉなの?」
「…そうなの! っはぁ~~折角、彼女の為に買ったのになぁ。結構、私も悩みに悩んだんだよ? 贈り物で失敗をすると尾を引くからねっ!」
頭を掻きむしる扇の様子に竜司も狼狽えてしまう。
そんな彼に長谷部が聞く。
「っど、どんなものを買ったんですか?」
興味本位で、見たくなったようだった。
「どんなものって。結構、いい金額したんだよねぇ」
扇は背広のポケットから淡いピンク色の四角い箱を取り出した。
パカ! と開けると、中には。
淡いピンクの小さくも丸いピアスと、ネックレスのチェーンを通す金具のついた丸い石もあり。
一緒にブローチも入っていることを見ても。
扇が言うように高級なものなんだなと、竜司と長谷部は思った。
「この石はね、【玉髄】っていって。癒しや絆、縁にバランス。意味は、近くの間柄の人間との絆を深めるってさ。深めるどころか、…なくなちゃった訳なんだけどねぇ~~あ、ははは…はァー~~…」
乾いた笑いで顔を俯かせる扇に竜司も狼狽えてしまう。
こういうときに、なんて言葉をかけていいのかが分からないからだ。
(ぇ、ええっとぉう~~困ったなぁ~~)
頭を掻く竜司だが。
「じゃあ。それを貴金属店か換金店で売ればいいんじゃないのか?」
長谷部が素っ気なくも扇に言い放つ。
流石に竜司も驚くしかない。
「だって。要らないって言われちゃったんだろう? その可愛い子ちゃんってお姉さんに」
「うん。要らないって、言われちゃったんだよねぇえ~~っはぁー~~…」
さらに頭が手前に項垂れてしまう扇に、
「勿体無いよ! いつ買ったのかは知らないけどさっ、間に合うなら宝石店に返品した方がいいんじゃないのかな????」
上擦った口調で言い返した。
「返すって言ったって、…変な目で見られるのなんかまっぴらだよw」
絞り出すかのような口調の扇に、竜司もかける言葉も見当たらない。
(そんなに、…好きだったんだなぁ。その可愛い子ちゃんってキャバ嬢さんのことが)
「でも。そんな悲しんでるってのに。なんだって、この店になんか来たんだよ? 扇さんは」
さらにここで、長谷部が最もな言葉で扇に追い打ちをかけた。
竜司は胆に汗をかいてしまう。
「あ。それはやっぱり~~今日が【あの日】だからだよw この日があるから、ここの店は来たくなっちゃうんだよなぁ」
「? 【あの日】っていうのは、…何ですか?」と思わず竜司も聞き返してしまう。
何か、どうしょうもなく悪い予感がしたからだ。
しかし、扇は答えずにニヤニヤと笑うことしかしなかった。
それがまた、竜司には堪らなく怖かった。
「意地悪な人だなぁ~~あンたって」
唇を突き出して扇に言う長谷部に、
「そのうちに分かるよ。そのときになれば――《合図》が流れるからねw」
扇はほくそくみながら、ウイスキーを煽り飲んだ。
(ぃ、一体、…何が始まるんだよぉう~~縁司君の馬鹿ぁ~~っっっっ‼)
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