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第3話 悪い子

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 私、のなかちゃんが好き。
 だから――……。

『篠崎君。見っけ』

 篠崎君は、私の顔見て驚いた顔をした。
 だって。
 そこの場所に居るなんて。
 誰にも想像が出来なかったんだよ。

 私も偶然知っただけだったの。

 ◆

「の、なかちゃん。二階に来ちゃったね……」
「そうね。でも、まだ、一階には戻れないわ」
「?? なんで、なの?」

 希美が髪をなびかせた。

「何が待ち受けているのか、分からないもの」
「そ、だね。のなかちゃん」
 きゅ。
「少し、心臓が高鳴っているわね、まどか」
「!? ぇ、そ……かな??」
「心配いらないわ。私があなたを護るもの」
 エスカレーターのベンチに座り。
 向き合っていた。

 手はまだ握られていた。
 そこから脈の高鳴りが伝わる。

 ごきゅ。

 桜木は強張った表情で唾を飲み込んだ。
「うん。大丈夫だよ、ありがとう。のなかちゃん」
 そして、顔を横に振る桜木。
「いいのよ。まどか」
  そして――希美が微笑む。
 つられるようして桜木も微笑んだ。

 ◆

『篠崎君は……のなかちゃんのこと、どう思っているのかな?』

 ポカンとする篠崎君。
 でもすぐに、いつもの不敵な顔に戻った。
『お前さん、なんで知りたいのさ?』
 逆に、聞き返されても困るよ。
 聞いているのは私だよ。

 篠崎君。

『篠崎君と会ってから、のなかちゃん……おかしいの』

 篠崎君。

『ずっと、篠崎君のことばかり話してくるの』

 私は聞きたくもないのに。
 どうしちゃったのかな。

 のなかちゃん。

『前はね、私のことだけだったのに、その中に……篠崎君も言うんだよ』
『だから、なんだって言うんだよ。お前さんは』

 ねぇ。
 篠崎君。

 私、身体が震えてる。
 今、どんな顔しているのかな。

 篠崎君のように、上手く笑っているのかな?

『お願い――……』

 っが、ッコーーン!!

 ◆

 ぶる!

「?? どうかしたの、まどか? あなた、震えているわよ?」
「うん、うん――……」

 ガチガチ。

「私――」
「まどか??」
「怖いの、堪らなく」
「――まどか」

「怖いんだよ、のなかちゃん」

「まどか!」

 ぎゅ、ぅううう!
「?! の、なか、ちゃん??」
「これで怖くないでしょう? まどか」

「……――うん。のなかちゃん」
 桜木は希美の腕に手を添えた。
「怖く――ないよ……」

 ぶる。

 ぶるぶる!

「嘘言わないで。まどか、あなた、まだ――」
「お、し、っこぉ、もれちゃ、ぅ……」
「?! 我慢していたの??」
「ぅうん! ち、っが、ぅ……」

 違うの、のなかちゃん。
 私ね。

 興奮しちゃうと……。

「も、れちゃ、ぅ!」

 粗相しちゃう、悪い子なの。

 ちょ、ろ。

「ぁ゛、ひぁ! やだ、やだ!」

 ちょろちょろ――……。

 桜木はしゃがみ込んでしまう。
 その様子に、希美も呆然としていた。
 でも、すぐに。

「トイレを探しましょう。あと――下着も拝借しましょう」

 希美は桜木の頭を撫ぜた。
 優しく。

「ごめ、のなか、ちゃん」
「立てる? 行きましょう、まどか」
「――……うん」

 キュイイイイン。

 そんな二人の後ろ姿を、監視カメラは見ていた。
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