ノゾミノナカと悪霊迷宮の殺人鬼

ちさここはる

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第43話 穴と路

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「たぬちゃん。ポシェットを大きく開けて欲しいのだ」

 日向が、そうたぬ吉に言った。
「分かったでやんす! アニキ!」
 ジジジ――……。
「はい! でやんすよ!」
「まどかちゃん、手を貸して欲しいのだ」
「ううん。お兄さん!」

 日向は桜木の手も借り、希美の身体を浮かせた。
 そして、頭からポシェットへと突っ込んだ。
 少々乱暴ではあったが、ゆっくりと。
 すると、ポシェットも希美の身体を、ゆっくりと飲み込んでいく。
「はい、って、きます、ね……お兄さん」
 それに、桜木も驚きの声を上げた。
 信じられないものを見たかのように。
 実際、信じられない光景だったが。
「さすがは、ササクラなのだ」
 にこやかな日向に、桜木の目が細められる。

 そして、希美の身体はポシェットの中へと収納された。

 ◆

「お兄さん。でも、ここのエスカレーターは吹き抜けもない、よ?」
 桜木は『渡らなければいいのだ』の言葉に、苦言した。
 少し、桜木も困惑した。

「大きな穴を開けるのだ。たぬちゃん、ポシェットを」

 ギュイン!
 呼ばれたたぬ吉は、俊足で日向の元に行く。
「はいでやんす! アニキ!」
 日向はたぬ吉の頭を優しく撫ぜつつ、ポシェットの中を覗き込んだ。
 奥に希美の姿もある。
 そして、手を差し入れ。

「あったのだ!」

 丸いものを二個取り出した。
 それは黒く、中央にはダイヤルと、ボタンがあった。
「それは、何、かな?? お兄さん」
 桜木が日向に聞く。
「それは」

 ポチ、リ――……。

 カチチチ!

「すぐに分かるのだ!」

 日向は、その二個をエスカレーターに放り投げた。
「まどかちゃん! たぬちゃん! 伏せて‼」

「「?!」」

 慌てて、桜木とたぬ吉が地面に伏せた。
 次の瞬間。

 ドン!

 ドゴゴゴゴ――……ンンンッッ‼‼

「……さっきの、って」
 爆風が吹き荒れ、黒煙が巻き上がる。 
「爆弾????」
 靡く紙を桜木は、手で押さえた。
 そして、エスカレーターがあった場所を覗き込んだ。

 小さくも、大きな穴かがぽっかりと開いていた。
 突き抜けになっているのが見える。

「一階、だ!」

 桜木の表情が、安堵に緩んだ。
 そんな桜木の様子に、日向も、はにかみながら。

「一気に、飛び降りるのだ!」

 腕を高く上げた。
 その言葉に、桜木の口端が、つり上がる。
「あの、お兄さん……それ、は無理だと、思うの」
 ぶんぶん! とたぬ吉も、顔を縦に振りかぶった。

「無理ではないのだ♪」
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