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0.勇者レータ、死す
死にゆく勇者と死んだ魔王
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勇者レータ=アドミニストの身体能力は全ての生物に勝るとも劣らない。ヤケで放った一撃も受ければそれは致命傷になるのである。
「これが……チート、か……」
魔王はそれ以上言葉を発することなく崩れ落ちた。人間が魔王に勝利した瞬間であった。
しかし、レータは喜ぶことが出来ない。彼の胸にもまた、魔王の手が突き刺さっているのだから。
次第に意識が遠のいていく中、レータは思う。
(ついに勝った……!けどっ!)
全身から血の気が引いていくのを感じる。身体が冷え、動くことも出来そうにない。
動かない身体とは対照的に、レータの思考は目まぐるしく動いていた。
(ずっと修行に明け暮れて、ようやく魔王と互角、共死にか。いや、倒すことが出来ただけ良かったのかな。魔族と人族では戦闘能力に圧倒的な差があるのは知ってた。だから俺は労することのできる努力を全て身体能力に注いだ。俺は勇者。努力すれば人よりも早く、鋭く成長できる。能力を1点に集中させれば魔族との差を埋めることが出来るはずだったんだ。それなのに結果は相打ち……。一体俺のどこが悪かったんだ。装備か、装備が悪いのか!冒険初心者が身に着けるような紙装甲でなければ、結果は違っていたのか。こんなことになるくらいならば、せめてもう少しお金を貯めてから魔王に挑むんだった。魔王を倒して悠々と俺は町へ降りたかった。多くの人から歓声を浴びてパレードを開いてほしかった。そしてあわよくば、勇者という肩書を利用してやりたい放題やるはず……だったのに!!)
些か冷静さに欠ける思考である。死を前にしてレータは完全に取り乱していた。
――――――人生をやり直したいですか?
どこかから突然声が聞こえた。レータ、死んだ魔王の居る場所は激戦の後が色濃く残り、生物の気配はないはずだ。
だが、レータにそんなことを気にする余裕はない。謎の声に訳も分からず必死に答える。
「ああ、やり直したいさ」
――――――別の世界でやり直すことになりますが、よろしいですか?
「構わない。俺はこの人生を後悔しているんだ」
――――――次の世界でこのような活躍を出来る保証はありません
「活躍なんかいらない。俺が欲しいのは……金だ!良い装備を身に着けたい、多くの他人から祝福されたい、豪遊したい。そのためには全て金が必要だったんだ!!」
――――――貴方が望むものを手に入れられる保証もありませんが、貴方の強い想いは確かに届きました。貴方には新たな機会が与えられることでしょう――――――
「おい、機会って…ゴブファッ!」
声を荒げようとするも込み上げる血がそれを邪魔する。謎の声はもう返ってこない。
レータは口から血を吹き出し、そのまま意識を失った。
「これが……チート、か……」
魔王はそれ以上言葉を発することなく崩れ落ちた。人間が魔王に勝利した瞬間であった。
しかし、レータは喜ぶことが出来ない。彼の胸にもまた、魔王の手が突き刺さっているのだから。
次第に意識が遠のいていく中、レータは思う。
(ついに勝った……!けどっ!)
全身から血の気が引いていくのを感じる。身体が冷え、動くことも出来そうにない。
動かない身体とは対照的に、レータの思考は目まぐるしく動いていた。
(ずっと修行に明け暮れて、ようやく魔王と互角、共死にか。いや、倒すことが出来ただけ良かったのかな。魔族と人族では戦闘能力に圧倒的な差があるのは知ってた。だから俺は労することのできる努力を全て身体能力に注いだ。俺は勇者。努力すれば人よりも早く、鋭く成長できる。能力を1点に集中させれば魔族との差を埋めることが出来るはずだったんだ。それなのに結果は相打ち……。一体俺のどこが悪かったんだ。装備か、装備が悪いのか!冒険初心者が身に着けるような紙装甲でなければ、結果は違っていたのか。こんなことになるくらいならば、せめてもう少しお金を貯めてから魔王に挑むんだった。魔王を倒して悠々と俺は町へ降りたかった。多くの人から歓声を浴びてパレードを開いてほしかった。そしてあわよくば、勇者という肩書を利用してやりたい放題やるはず……だったのに!!)
些か冷静さに欠ける思考である。死を前にしてレータは完全に取り乱していた。
――――――人生をやり直したいですか?
どこかから突然声が聞こえた。レータ、死んだ魔王の居る場所は激戦の後が色濃く残り、生物の気配はないはずだ。
だが、レータにそんなことを気にする余裕はない。謎の声に訳も分からず必死に答える。
「ああ、やり直したいさ」
――――――別の世界でやり直すことになりますが、よろしいですか?
「構わない。俺はこの人生を後悔しているんだ」
――――――次の世界でこのような活躍を出来る保証はありません
「活躍なんかいらない。俺が欲しいのは……金だ!良い装備を身に着けたい、多くの他人から祝福されたい、豪遊したい。そのためには全て金が必要だったんだ!!」
――――――貴方が望むものを手に入れられる保証もありませんが、貴方の強い想いは確かに届きました。貴方には新たな機会が与えられることでしょう――――――
「おい、機会って…ゴブファッ!」
声を荒げようとするも込み上げる血がそれを邪魔する。謎の声はもう返ってこない。
レータは口から血を吹き出し、そのまま意識を失った。
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