経営勇者アドミニスト

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0.勇者レータ、死す

脳筋勇者と賢者魔王の相討ち

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 勇者レータ=アドミニストと魔王の両雄が激突し始めてからどのくらい時間が経過しただろうか。魔王のいた部屋は床も壁もあちこちが抉れ、見る影もなくなっている。
 魔王は強かった。魔を司る王として、魔法を自在に操るからである。風を纏い高速移動、炎を放ち苛烈な一撃、氷を穿ち相手を束縛、雷を落とし自由を奪う。自然では起こり得ない超常現象が勇者レータを襲った。圧倒的な魔力は確実にレータを追い詰めていった。
 一方、レータも強かった。彼の溢れんばかりの才能はほとんど身体能力に注がれていたからである。地を蹴れば一瞬で距離を詰め、こぶしを振るえば衝撃波が走り、剣を振るえば無数のカマイタチが暴れ出す。理不尽なまでの暴力が魔王を襲った。圧倒的な身体力を以てしてレータもまた、魔王を追い詰めていった。
 部屋が跡形も無く消し飛んだ頃には、2人共既に肩で息をしていた。

 レータを睨みつけながら魔王は語り掛ける。


「お主の強さがこれ程までとは……貧弱な装備は我を油断させる為であったか」

「いや、金が無かっただけ「フッ、流石勇者だ!知力も並外れているようだな!だが我は負けん、負けんぞぉっ!!」

「話聞けよおいこらぁあああああああっ!!」


 両雄は再び地を蹴り出した。一瞬ではあるが、会話を一方的に打ち切った魔王の方が、挙動が早い。魔王の手は禍々しいオーラに包まれ、色は触れたものを全て飲み込まんばかりの漆黒である。


「もらった!」


 魔王は嗤っていた。漆黒の手が、目前にまで迫っている。
 ヤケクソ気味に駆け出したレータにはそれを避けることはできない。勢いを付け過ぎている。レータは更にヤケに走り、ただ剣を前へ突き出した。



ズブリ



「ゴフッ……」


 魔王の口はより歪になる。レータの胸を貫いたのだ。貫手の衝撃にレータは項垂れる。勝ちを確信する魔王。だがしかし、彼の笑みは直ぐに苦痛に歪むこととなった。


「ば、バカな……相打ち、だと……」


 勇者の剣もまた、魔王の胸を貫いていた。
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